龍太郎3
「やめろよ、そんなこと」
目の前にいる親父が、信じられなかった。
「親父は物語が好きだったじゃないか」
そうだきっと偽物だ。あんだけ小さい頃に様々な物語を教えてくれた親父が物語を殺すなんてこと言うはずがなかった。
「坊主。お前が俺の何を知ってるのか知らないが、俺は物語が好きだぜ大好きだ愛してると言っても過言ではない。それゆえに物語を改ざんされていることが許せないんだ。俺の息子と同じ名前を持つお前だ見逃してやってもいい。何なら、元の世界に帰してやってもいい。だが邪魔をするなら、容赦はしないぞ」
彼は、魔女たちに狙いを定めた。
「『大罪魔法『暴飲暴』』」
「やめろ!っぷよたろう!」
「オゥ!」
ぷよたろうを足場にして。跳ね上がる。刀に手をかけ、狙いを定める。親父の体から、溢れるもやを吉備津丸で切った。
「…ほぅ。犬の野郎。後継者はてっきり娘にと思っていたが、おまえに託したのか。坊主。邪魔するのか?」
「…あぁ!させない!殺させない!!」
もやを切ったのはよかったが、空中で身動きが取れない。親父はまさかりでおれを叩き切ろうとする。
「天下無双流…」
「「桃割ぃ!!」」
声がハウリングする。桃がすんでのところで、剣技をぶつけ、俺の体が真っ二つになるのを防いだ。だが、桃の持つ刀が砕け散る。
「コウ!!この、バカタレが!考え無しにとびだしたら、やられるに決まってるでしょ!?スライムくん!!」
ぷよが、身体を伸ばし、2人を回収する。
「いまだ!ネズミぃ!」
ぷよたろうの近くに魔女達がいて、ちゅーこに魔力を注いでいた。ぷよたろうから、宝玉を取り出し、魔法を唱えるネズミの魔女。
「は、はい!大罪魔法!!『怠惰・どこにでもいる(ONE FOR ALL)』!!」
視界が歪み、世界を超える。
「あーあ、逃がしちゃいましたねぇ」
「紅葉か」
赤髪の少女がスライムに乗って現れる。
「まさか、わたし以外にもスライム使いがいるとはね。もしまた、あったらアイツ私がやっちゃってもいいですか?」
「構わねーよ。まぁ、アイツらと会うことなんて、2度とないと思うけどな。あのモブの坊主が主人公たるおまえに勝てるはずはねぇがな」
「へへっ。楽しみ!」
「わたしは魔女たちをもらってもいいですか?今の奴らならわたしでも簡単に倒せるでしょう」
高みの見物をしていた仮面の魔女が龍から降りてきて尋ねる。
「いーぜ。だが、なんでだ?」
「詮索はしない約束では?」
「なんなの?なんなの?仮面ちゃん、訳ありなの?」
「…あなたも、しつこいと元の世界におくりかえしますよ?」
仮面の魔女は宝玉を取り出し、赤髪の少女はスライムを纏う。
「…やめろ。お前たち。おっさんが悪かったから、喧嘩するな」
「…はいはい。分かりました。ごめんね。仮面ちゃん」
「…これから、アイツらを追いますか?」
「いや、犬は死んだし、猿も狩った。あとはキジだけだ。桃太郎も刀がなけりゃ、ただの人だ。問題なく勝てるさ。3びきのこぶたの世界で、善行積んで、世界を渡る。次はいよいよ桃太郎の世界だ」