龍太郎2
「断る、だと?」
魔女たちは困惑した。
「当然だろう。もう、お前たちに任せることができねーよ」
魔女たちへの向ける視線は侮蔑に満ちていた。
「おい、おっさん何を言って」
「お前達12人の魔女たちに任せることができないと言ってんだ。物語の世界を守る12人の魔女と3人の太郎。魔女は世界のバランスを支え、太郎は世界の敵を滅ぼすシステムじゃあ、もうこの物語の世界は成り立たないのさ」
魔女たちは当然ながら抗議する。
「今まで私たちは世界の平和を守ってきたんだよ」
「守る?オリジナルのストーリーが今どのぐらい残ってると思っている。桃太郎はもともと桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの子供だ。シンデレラでは、姉達は踵を切り落とす。現代に生き残っている物語で、元の姿のままの話はほとんどねぇ。現に今1つの物語に、苦戦してたじゃないか。」
「それは…」
「俺はお前たちに期待していた。数ある物語の中でも、登場人物が神になれる物語は少ない。お前たちが神と崇めるあの女によって作られた物語。『12人の魔女と三人の騎士』。7大罪と5元素の魔法。破魔の剣士、封印の戦士、時越えの術士。世界を守る要。お前たちの神様は干支の物語をずいぶん都合よく改変してくれたな」
「改変?な、なんのこと?」
「よくもまぁ、おめおめと。お前たちが好き勝手やってくれた世界を俺の手で作り直す。だからお前たちの力を奪い3人の戦士を殺す。まぁ、あとは桃太郎だけだ。初めて、戦った時剣を折る位しかできなかった。やつは相当強い。やつの力を奪わなければ」
男は、手に武器を取り、背後に宝玉を浮かせて、臨戦態勢にうつる。
「まずは、一般人である浦島太郎を倒した。物語の善行が奇跡を呼ぶ力をうばった。本当は時の能力が欲しかったが、ありゃ乙姫の力だ。だが、亀の力は奪えた。異世界に導く力だ。善行をしなければ発動しないと言う面倒なものだったが、この力で、龍のばあさんから宝玉を奪い、魔力を得た。桃太郎のお供達が邪魔だ。犬は3びきのこぶたに、猿は西遊記に、転送し、物語に縛り付けた。猿は大岩に封印されている場面を狙って殺した。犬は娘を作り、物語にとじこめた。まさか、3びきのこぶたどもが、猪八戒と自分たちを結びつけて、西遊記に攻めてくるとは思わなかったがな。とんだ土産を持ってきてくれた。魔女の宝玉だ」
「おれは手に入れた。猪の『暴食』龍の『傲慢』馬の『雷脚』猿の『金剛如意棒』犬の『烈風』、金太郎の封印のまさかり、桃太郎の破魔の大太刀、浦島太郎の空間の老亀は手に入れた。あとは、時の玉手箱だけだ。」
「現神を殺し。世界を手に入れ、運命を正す。おれの名前は浦桃金 龍太郎。桃太郎の首を取りに行く」