スライム太郎⑧
三男は玉座に座って、ウキウキしていた。結婚式は何度やってもいい。おいしい食べ物がいっぱい食べれる。それに、目障りな魔女たちもいよいよおさらばできる。逆らうことのできない抑止力。そう思い込んでいた。だがあの日、あの男のアドバイスで変わることができた。犬つまり、狼の魔女の宝玉を奪うことができて、風の力を奪えた。何度もにいさん達の家を吹き飛ばしてきたあの強力な風の魔法を。今度は僕が使いこなす。魔女を殺してしまうと宝玉の力もなくなってしまうので、殺せなかったが、『3匹のこぶた』は既に、他の物語の力を取り組み始めていた。もはや、この勢いは止まらない。ネズミの魔女の残した魔力を解析して、他の世界へ行くことができるようになりつつある。まだまだたくさんの魔力はいるが、徐々に改善されるだろう。そうなると、魔女たちの魔法に頼らなくても、十分外の世界と渡り合える。
「ぶっひっひ!兄様たち喜んでくれるだろうぶひ!」
他の物語に踏み込む事は12人の魔女たちが禁止している。だが繰り返される物語の結末に1部の者たちは不満を持っていた。
「ぶっひっひ!すべてお前のお陰だぶひ!イノシシの魔女」
そう言うと彼は、部屋の隅の柱に拘束された女の子に声をかけた。
「…っ」
「ぶーひっひっひ!お前の、暴食の魔法は役に立ったぶひ」
女の子の身体にはあちこちにアザがあった。かなり衰弱しているようだった。上げて小柄なその体をかかえ、小さくうずくまっていた。
「『暴食』様々な魔法の力を自分の力として、還元することができるぶひ。いちどでも体の中に取り込んでしまえば、オリジナルには劣るかもしれないが充分使える魔法になる。強力な魔法ほど取り込みに時間がかかるが、12人の魔女の魔法でも取り込めることがわかったぶひ。もうお前たちに用は無いぶひ」
魔女に近づき、その腹をけりあげる。
「ぶーひっひっ!おっとぉ、躓いてしまったぶひ」
三男は至極ご機嫌だった。だがその機嫌もすぐに崩される事になる。場内が騒がしくなってきたのだ。玉座の間が開かれて、1人の兵士が入り込んだ
「ほ、報告します」
「なんだぶひいきなり」
「魔女たちが脱走しました!」
「なんだとぶひ!!!」