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スライム太郎④
「ガッハッハッ!ネズミの魔女よ!ずいぶんと威勢のいいお姉ちゃんを連れてきたなぁ!」
薄暗い牢屋の中で豪快な笑い声が響く。彼女は牛の魔女。12人の魔女の中でも、武闘派と呼ばれる女傑。浅黒い肌にウェーブがかった黒毛の髪。はちきれんばかりの胸部に引き締まった腹筋が見える。
「うしさん!桃ちゃんはかっこいいんだよ。異邦人の悪い人たちをやっつけたんだよ」
「へぇ?」
熱く弁を振るうネズミの魔女優しい眼差しで見る。
「ふっ、相変わらず、仲の良いことで。足を引っ張らなければいいけど」
そう語るのは馬の魔女。牢獄の中で溜息をつき、冷ややかに2人を見る。背が高く、白髪は流れる雪のようだ
「ガッハッハッ!真っ先に豚に捕まったおまえに足を引っ張られるなんて言われたくねーよ」
「あれは!あれよ!…そう!人参がまずかっから」
「パパ…」
そうつぶやくのは犬の魔女。パトの娘である。割れたメガネに、三つ編みで、部屋の隅で体育座りをしてしょげていた。