スライム太郎③
おれとプヨとパトは作戦を練った。
プヨタロウは、水さえあればいくらでも増殖することができる。またそれぞれが意思を持って動くことも可能で、見張り役を頼むことにした。またスライムの特性上、はずんだりくっついたりすることができる。面白いことに、スライムどおしがぶつかると反発し合うことがわかった。つまりスライムにスライムをぶつけるとものすごく飛ぶのだ。
「これで侵入が楽になるな。すごいなプヨタロウ」
「コウタロウノアイデアノオカゲ!」
そうは言っても嬉しそうだった。
城壁を上って、城内に侵入する。その後地下牢に行き、プヨの身体を使って鍵を作って、脱出。
「子豚に一殴りしておきたいな」
「…コウタロウ。それは無謀だ。気持ちはわかるが、奴が近衛兵や兄たちをよんだ時点でこの作戦は失敗になってしまう」
パトは、冷静な意見を述べた。気持ちとしては俺と一緒で、ぶたをどうにかしてやりたい気持ちなんだと思う。言葉こそ冷静であったが、瞳は鋭かった。
パトは、狼の獣人で、鼻がきく。人質を見つけるのに役に立つだろう。それに風の魔法も使える。ブタほどにもないにしろ、魔法の使い手は心強い。
「俺も魔法が使えるかな。」
「娘をとりもどせたら、教えてやろう」
「…ごほっ。しこたま殴りやがって」
「…ねぇ、ちゅーこちゃん大丈夫?」
「へ、へいきだよ。心配しないで」
「あんたも災難だったねぇ。桃。まさか、ネズミの魔法を使って別の世界から連れてこられるなんてな。ますます歯止めが効かなくなってきたな」
「魔女が4人も囚われるなんて前代未聞」
「まぁ、あたしらはあと2時間でお陀仏だがな」
「…」
「…」
「…大丈夫だよ。コウタロウが来てくれる」
「…来ないよ」
「コウタロウはいつだって」
「…来ないよ、桃ちゃん」
「なんでそんなこと言うの!」
「わたしが逃がしたから。オオカミのおじさんに頼んだから。」
「…」
「でも、安心して、桃ちゃん。わたしが命に変えても、あなたを逃がすから。逃げたら、オオカミのおじさんをさがして。そこにいるスライムさんに託してるから」
「…命にかえる必要はないよ。かならず、わたしが隙を作ってみせる。」
「…魔法を奪われたただの美少女4人だけで何が出来るのやら」
「魔法なんかなくたって、やりようはいくらでもあるのよ。力がなければ知恵を使え、知恵がなければ根性だ!ってね」
「今どき、根性論なんてはやらねーぞ」
「…どうせ死ぬなら、あがくのも、わるくない」
「見てなさい!あの豚野郎!だれが、囚われのお姫様になんて、なってやるもんですか!」