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スライム太郎①

「…ムスメ?」


「…そうだ娘だ。世界で1番大事な宝だった。活発で、素直で、賢い娘だった。12の魔女に選ばれてからも、世界のために動いていた。だが、あの男に出会ってから運命は変わってしまった。」


男は力なく言った。


「そんなことはする必要は無いのに、物語を変えようとするあの男に。結果、3匹の子豚は改善され、娘は魔石を奪われてしまった。今は生きてるのかさえもわからない。すでに、娘がさらわれて1ヵ月以上経っている。」


「だったら、尚更!!」


「…だが、いま生きてるはずが無い。 」


「イキテルヨ」


それまで話を聞いていたスライムがしゃべった。


「…なんだと」

男の耳がピクリと動いた。スライムを激しく睨み付ける。


「もしも戯れや哀れみでそんなこと言っているなら、貴様の体を八つ裂きにした上ですりつぶす!!」


スライムはプルプルと震えながら、男に話しかけた。


「マセキ、マジョトウンメイヲトモニスル。マセキ、マジョガシンダラ、クダケル。デモ、ブタのマセキコワレテナカッタ。ダカラ、ブジ」


「…おっさん。あんた、俺たちと大事な人を取り戻しに行かないか?」


「…非力なお前らが何になる。」


「失ってしまったら、遅いんだ。」


親父の顔が脳裏をかすめる。親父を責めるのと同じ位、自分を責め続けていた。なぜもっと親父と話をすることができなかったのか。もっとできたことがあったんじゃないか。後悔と自責の念が心の中にべったりとついていたから。


「非力上等!もう一度、アイツらの笑顔を見るためだったら、何にだってなってやる。ああ!やってやるさ。タロウだ。俺の名前はコウタロウだ!物語?筋書き?運命?常識?クソ喰らえだ。こいつと、このスライムとこの世界の常識を壊す、そんなスライム太郎になってやる!あんただってそうだろ!」


獣人の男に、訴える。


「非力なら知恵を使え!力を合わせろ!ここには、あんたみたいに、自分の力不足を知ってる仲間がいる。そうだ、俺たちだ。あんたはひとりじゃない。今度は俺たちがいる。力を合わすことができる仲間がいるんだ。だから、あんたの力を貸してくれ、おっさん。」


男に手を差し伸べる。


「もう一度笑顔を見るぞ!絶対に!」

「…笑顔、娘の…笑顔…」


男は呟いた。彼は静かに目を閉じた。そして目を開けた時、覚悟が決まっているようだった。


「…おっさんじゃない。パトだ。そう呼べ」


パトはそう言って、俺の手をとった。

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