三匹の子豚⑪
モニターに映し出された桃。首枷と手枷をされている。すると横から桃を吸い込んだ豚が現れた。きらびらかな衣装に身を包み、きちんと全身があった。
「ぶーひっひっひ!僕の1295人目の妻を紹介するぶひぃ!ぉい!1295!まぇにくるぶひぃ」
豚の近衛兵に首の枷を引っ張られた桃は、苦しそうに前に引っ張りだされた。キッっと豚を睨みあげる。
「ぶっひっひ!その反抗的な眼がいいぶひ!最近は、無気力な嫁が多かったぶひぃ!ぶっひっひ!彼女は、異世界人、イレギュラーだぶひ!だが、もはや、僕は神様とも呼べるイレギュラーをも、屈服させる事ができるぶひ!」
奴が大きく口を開けると、口の中で宝石が輝き、風を巻き起こす。
「…っ!」
おれの隣で、モニターを見ていた獣人の男は固く手を握り、血が滲みでていた。
「しっっっっかり可愛がってやるぶひょ!」
豚が、桃に顔を近づけ、べろべろと舌を伸ばす。そんな豚に対して、桃が蹴りあげる。あごにくらった豚はよろけて、左手をあげる。
「…待つぶひ」
桃は近衛兵が向ける刃を幾重にも向けられていた。悔しそうに足を下ろす桃。
「…ご褒…ただの戯れだぶひ。さがるぶひ」
威厳たっぷりに言った。いま、アイツご褒美って言ってたよな。
「そして、こちらが12人の魔女が1人、ネズミの魔女様だぶひぃ」
言葉は恭しくも、表情は小馬鹿にしたようなものだった。ちゅーこの扱いは桃よりも酷かった。裸にされ、茨でグルグル巻にされていたのだ。血がしたたり落ちる。口には布をくわえさせられ、喋れないようにしていた。
「この世界のバランスを守る魔女さまは、この嫁をさらおうとしたぶひ!バランスを守るべき魔女様がバランスをくずそうとしたぶひ!それに全身くまなく探したが、世界を守るための宝玉をなくしたらしいぶひ!こんな堕落しきった魔女に世界は任せられないぶひ!この魔女に鉄槌を!」
彼は足を踏み鳴らす。
「この魔女に鉄槌を!この魔女に鉄槌を!!この魔女に鉄槌を!!!」
足音が伝播していく。彼から近衛兵に、近衛兵から群衆へ!
「ネズミチャン…」
「この魔女に鉄槌を!この魔女に鉄槌を!!この魔女に鉄槌を!!!」
そんな中、ちゅーこは口をもご付かせ、封じられていた布をかみきり、叫ぶ。
「コウタロウさん!逃げてください!桃さんは必ず、わたしがこの身に変えて、必ず返します!だから、ぎゃ!」
豚がちゅーこの顔を蹴る。その目はひたすらに冷たかった。
「黙れ、裏切りの魔女」
「う、うら、ぎり?」
豚は唾を吐き捨て、群衆に訴えかける。
「この悪女を、あえて呼ぼう!この悪魔の女を!兄様達が帰ってこられる3時間後に処刑する!今まで捕らえた魔女どももの悲鳴を賛美歌に加えよう!この魔女どもの血を持って!僕の結婚式は完成する!僕のウェディングケーキに魔女たちの屍を飾りつける。…最高だろぅ?」
ちゅーこの頭を踏みつけにして、不気味に高らかにぶたは笑う。
「ぶーひっひっ!!!ぶひゃああひゃっひゃあ!!」




