三匹の子豚⑩
ぬちょん
振り下ろした石槌は容赦なく床を破壊した。とっさに腕で止めようとしたが、無駄だった。
「コウタロウ、ダイジョウブカ」
自分を呼ぶ聞き覚えのない声。
カタコトの声は少年のような、少女のような、少し高い声。
「おまえ、水まんじゅうか?」
プルプルと震える透明な抜け殻。
男が攻撃を放ったときに、後ろに弾かれたのだ。自分の形になった抜け殻は、叩きつぶされていたが、プルプル震えながら言葉を紡ぐのだった。
「コウタロウ、ブジカ、オレハ、ミズマンジュウジャナイ」
「…スライムか。」
男がうなるように言った。ちゅーこが身に纏わせてくれたスライムが助けてくれたようだった。
「また異邦人か。これ以上ここの物語を壊すな」
男は忌々しく言った。地面にめり込んだ石槌を持ち上げると、潰れたスライムがべっとりと一緒についていた。若干嫌そうな顔をしたが、床に擦り付けても取れないので、男は仕方なく肩にかついだ。
「異邦人?」
「コウタロウヤ、オレハ、コノサンビキノコブタ、トウジョウシナイ」
そういうことか。だが、またと言う事は
「他にもいるんだな!俺みたいに別の世界から来た人間が」
手がかりを見つけることができた。
「…あぁいる」
その男は、若干と沈黙があったのに静かに答えた。
「きっとそこに桃がいる!」
「…無駄だ」
男は玄関の方を指差して言った。その向こうには、ドアはなくそのまま外の景色が見えた。ドアから見たその先には、数キロ先に城壁が端から端まで伸びており、その中に街があるようだった。小さな山のように中心地が高くなっており街の様子が見える。その中央の中心にある大きな城の上に、巨大なモニターがすえられていた。
「桃!!」
「ネズミチャン!!」
モニターに映し出されていたのは、様々な種類の獣人の娘たち、その中に手足を拘束された桃とちゅーこがいた。




