三匹の子豚⑨
「…目が覚めたなら出て行け」
男はそうぶっきらぼうに言った。だが、俺の中では、それ以外のことに気をとられていた。獣人だ!けもみみだ!もふもふだぁ!一流のモフリストである俺はテンションがめちゃくちゃ上がっていた。
「ぐぅえっへっへ!」
「…なにをしている」
わきわきと指を動かして、近づく変態がそこにいた。
「…さわらせろぉ!さわらせろぉ!」
「…!」
「ぬぉ!」
突然自分の体が浮き上がり壁に叩きつけられた。男の方を見ると拳をつき出していた。間合いの外にいたから、決して届く距離ではなかったのに。
「…お前、見殺しにするべきだったな。」
明らかに敵意と警戒心が増してた。くそっ!あと少しで、野良猫たちを腰砕けにした俺のゴッドフィンガーが炸裂したのに。
「これって、もしかして、風の魔法?」
「…」
男は目を開いていた。おそらく自分に見せるつもりはなかったのだろう。男は俺を見据えたまま、腕をのばしドアの前に立て掛けてあった棒を持った。その木の棒の先端には、馬鹿でかい石がついていた。それをやすやすと片手で、持ち上げると肩に担いだ。床がミシミシと音を立てた。
「…きさま、豚の密偵か?」
犬歯が目立つ歯をむき出しにして、男はうなるように言った。
豚…。豚…。豚!
「そうだ!おいあんた、助けてくれた事は感謝する。もう一つ助けてくれないか。俺の友人が豚にさらわれてしまったんだ」
「…諦めろ」
男はそういって、ハンマーを振り下ろした。