表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

12人の魔女

ロウソクの明かりが室内を照らしていた。

窓やドアのないその部屋には、12この魔法陣が円を作るように描かれていた。1つはチョークで、1つは宝石で、1つは動物の死骸で、一つ一つ異なる媒体を使っていた。陣の中央には、仮面を被った長髪の女性がひとり。仮面には模様はなく、ただただ白かった。スーツ姿の彼女はどこからかマイクを出して高らかに宣言する。


魔女会議(サバト)はっじめるよ〜ん!」


その女の声を皮切りに、室内に声が現れ出す。


「なんで、てめぇが仕切ってんだ!部外者のくせによぉ、いっつもいっつもよぉ!」


「とらぁ、ぅるさぃなぁ、あたしは、ぃまねむいんだょお」

あくび混じりの声が横入りしてきた。彼女たちが喋る事に魔法陣が輝く。


「羊!あんたはいつもいっつも眠たいでしょうが!蹴っ飛ばすわよ」


気の強そうな声がツッコミをいれる。


「う、うさぎさん、け、けんかは、だめ、なんだよ」

「ガッハッハッ!けんか止めてぇなら、でかい声出せよ!ネズミ!」

豪快な笑い声に、小さな声はかき消されてしまった。


「うしの、おまえさんの声はかなわんわい。もうちっとどうにかならんかのぅ」

「りゅうさまの言う通りです。もう少しお淑やかに出来ませんか?」

老婆の声と、きっちりとした声がたしなめる。


「お淑やかぁ?駄犬が、お貴族ぶってんじゃねぇよぉ!貧困街の野良犬だろうが、てめぇはよぉ!」

「やんのか、猿?」

先程の声とは違い、低くドスの効いた声に変わる。

「あん?買ってやるわ、その喧嘩!!」


「もう!魔女会議(サバト)開始時刻から、3分20秒もたってしまいました!!早く!始めないと!!」

「鶏ちゃんマジパネェし、せっかち過ぎて、蛇ちゃん的にはまじ萎えなんですけど。ひっひっひぃ!」

音声とともにたくさんの時を刻む音が聞こえてくるとともに、気だるげな声が笑う。

「とりあえず、近況報告からはじめますか」


勇者が死んでからというもの各地で魔物が発生していること。

魔王が居なくなったことにより、共通の敵がいなくなり、人間同士が争いだし、それぞれの地域で国が乱立していること。

おとぎ話にルーツを持つ人間を含めて、魔物や魔獣、亜人が魔力を求めて、魔石や魔力もちを集め、略奪し、力を蓄えていること

異世界からの転生者や転移者たちが、こちらの世界の魔法法則や物理法則を無視して、暴れまわっていること。



「はぁ、溜息が出るわね。いくら私たちが各地で魔力の調律しても、これじゃ、キリがないわ」

「犬っころのへっぽこ魔法じゃしかたねぇわな?」

「あ?」

「あ?」

「やめんか。みっともない。ぬしらはほんとに昔から。いいかげんにしないか。じゃが、この現状はどうにかせんとな。おい、『仮面』の」

「ほい!なんですか?」

「例の計画はどうなった?」


「はいはーい!!今来てない御二方なんですけどぉ?うまさんはいのししさんによってぇ!やられちゃいました!」

仮面の女の突然の報告に静まり返る。


「たくよぉ、『さんびきのこぶた』と組んでからちょっと調子乗りすぎじゃない?いのししのやつぁ」

「う、うまさんは、」

「あん?規定通りなら、いのししのやつに魔力奪われちまってんだろ?」

「魔女の魔力が奪われるなんてまじありえねぇんですけどぉ!けんきゅうしたぁい!」


「気色悪いぜ、蛇の姉貴。でよ、案内人(ナビゲーター)」さんよ。これで、この儀式で『太郎』どもをたおせるんだよな。これはいいことだよな?」


「わたしは古い儀式を紹介しただけで〜す。『生き残りし勇者を迎え、12人の魔女の力を合わせれば、世界に安寧がおとずれるだろう』われわれの世界を古くから、守ってくださってる魔女の皆様方が、ただ、滅ぼされるなんて、つまらなくないですかぁ?」

「だからってぇ。ころしぁぅのはぁ、ぃやだなぁ。ぐぅ」

「寝てんじゃないわよ!ちからを合わせるって普通に協力すればいいじゃない!」

「ですが、現状われわれの魔法はそれぞれ違いますし。組み合わせるにしても、12人の魔法をひとつにするのは」

「だから、『魔女の心臓』ですよ」

再び場が静まり返る。

「意思が存在するから面倒なんですよ。力の源だけでいいんですよ。殺す必要はありません。『心臓』なんて言われてますけど、形は様々ですし。1人に集めてしまえばいいんですよ。なんなら私が皆様の代わりに」


「やだね」「いやですわ」「ガッハッハッやなこった」

「ぃやだぁ」「拒否する」「い、いやです」

「マジめんどい」「いやじゃのぅ」「なめんな!」

「食い殺すぞ、小娘」

「神の使いかなんだか、知らねぇけどよ。俺たちは俺たちで付き合い長いんだ。どーせやるなら、まだこの12人の誰かにやってもらうほうがマシだぜ。そこの犬以外ならな」


全員から殺気が向けられる。

「はっはっは!冗談ですよ!冗談!神に誓いますって。じゃあ、はじめの予定通り、それぞれ勇者を見つけて、互いを探し、生き残った1人が、世界を支配するでいいですか?」


沈黙で、同意


さて、と彼女はスーツからスマホを取り出し、どこかへ電話をかける。


「もしもし神様ァ!首尾はバッチリですよぉ!」

彼女はスピーカーに変え、全員に聴こえるようにした。

「げっげっげ!12人の魔女たちよ。久しいな」

「何年ぶりですかねぇ」

「13年と5ヶ月と23日、11時間…」

「うっとぉしいっていってんだよぉ、ふぁ」

言葉を遮る。

「ね、ねこさんが、つ、追放され、たぶりかな。ほ、ほんとに、神様、わ、わたし、ころしぁぅのは、い、いやだよぉ」


「げっげっげ!何を今更。ここにいるのは、先程のねこも含めて、数多の魔女たちを押しのけて今の座にいるものたちではないか。もはや、世界は乱れきった。再度選ぼう。世界の安定をもたらすものを。我が世界、異世界、人種、種族一切合切問わない。好きに選べ」


魔女たちの魔法陣が消えていく。


「最後の一人が新たな神だ」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ