三匹の子豚①
「バカタレ!」
桃がおれの頭を力強く殴った。目から星が出てしまいそうだ。ゲンコツが硬い!!
「コウの気持ちもわかるけど、一旦落ち着け。ごめんね、ちゅーこちゃん。こいつも苦労してるんだよ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃ」
「まったく」
今度はちゅーこの頭を優しくはたいた。
「泣いて謝ってどうなんの。今はどうしようもないでしょ」
あれ?強さ全然違うくない?だが、おかげで少し冷静になれた。
「そうそう喧嘩はよすんだブー!」
聞き馴染みのない声が混じる。振り向くとそこに豚がいた。首だけの豚がいた。
「ぎゃあああああ!生首ぃ!」
桃が悲鳴をあげる。こいつは相当強いが、お化けの類はてんでダメだから。
「ぶひいいいい!!甲高い声で叫ぶなぶひ!耳が痛いぶひ」
「ど、どうして、こっちの世界に、」
「ネズミの魔女よ。僕達『三匹の子豚』を舐めすぎだぶひっ!3匹よればモンスターの知恵だ!ぶひ!」
あんまりかしこそうじゃねぇな。
「おい、ちゅーこ!話は後だ。こいつ、敵なのか?」
宙に浮かぶ豚の生首は、ヨダレを撒き散らしながらしゃべる。
「て、てき、です!」
「おい異世界人のメス、おとなしく、そこにある杖を渡すぶひ!そうしたら、美しき僕の妻に娶ってやるぶひ」
プルプルと震えている桃に話しかけた。
「お、おばけなの?」
「だれがお化けだぶひ?ネズミの魔女の魔力の残滓を集めて、あの方がゲートを繋いでくれたブヒ!ゲートが小さすぎて、頭だけになったぶひ」
「つまり、お化けじゃないの?」
「違うブヒ」
豚を桃がじっと見つめ、固く握った拳でなぐりつける。
「いった!この女殴ってきたぶひ!いきなり殴るなんて異世界人はやばんだぶひ!やめて、地味に痛い!拳が硬いぶひ!!」