ネズミの魔女⑨
「なんで親父のことを知っているんだ。あんたは別の世界の住人だろ。今親父はどこにいるんだ!家族ほっぽらかして、どこで何してるんだ」
「ちょ、落ち着いて、ちゅーこちゃんがびっくりしてるでしょ」
桃は俺を座らせて、話をさせた。
「ま、まずは、わたしの話から」
彼女の話を要約するとこうだ。
彼女の世界は神様がいて、ある一定の周期ごとにつぎの神様を決めるための儀式が行われる。神様になればどんなルールも書き加えることができる。
神候補の有力者は12人いる。原則他にも魔女の参加は認められているが、勝敗のつけどころが、この12人の魔女の杖に仕込まれている魔石を集めることになっているため、他の候補者が現れる事は滅多にない。なぜなら、魔石には巨大な力が秘められており、1つの魔石を所有するだけでも絶大な力を得ることができるからだ。
12人の魔女はそれぞれ
ネズミの魔女
ウシの魔女
トラの魔女
うさぎの魔女
りゅうの魔女
ヘビの魔女
うまの魔女
ヒツジの魔女
さるの魔女
とりの魔女
いぬの魔女
イノシシの魔女
と十二支の名前を持っている。現在すでに、戦いが開始されてから半年が過ぎており、脱落者が出ているらしい。
「あんたは魔石ってのを持っているんだろ?その力を使って勝てばいいじゃないか」
すると彼女は杖を握りしめて、うつむき、悲しそうに言った。
「わ、わたしは、魔法の才能が、からっきしで、戦いたく、ない。わ、わたしが、できるのは、ネズミの魔女の魔石で受け継がれる力『万物の祖』。じ、自分や仲良くなった生き物を召喚することが、できるよ。こちらの世界には、自分を召喚したの」
「へぇ、すごいじゃん!ねぇ、スライム以外にはどんなのがいるの?」
「…だけ」
「え?」
「スライムさんだけなの」