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『ハーデス』に到着

 一晩中馬車は走り続け、明け方に魔族の国へ到着した。

「よし、着いたぞ。降りろ」

 何も持っていないので、手ぶらで荷車から降りる。


 木々が鬱蒼と生い茂り、なんとか馬車が通れるほどの道幅しかなく、魔物も出現する危険な場所だ。

「じゃあ、俺たちとはここでおさらばだ」

「そんな!?」

「王様からは始末しろって言われてるんだけど、流石に殺すのは嫌だなと思って」

「ロイド。早く帰るぞ」

 御者をしていた『陰影団』のもう1人のメンバーが、急かす。

「分かってるって。お前は先に、荷車で寝てていいぞ」

「そうか? じゃあそうさせてもらうわ」

 そういって、御者をしていた人は先に荷車に乗った。

 それを確認したロイドは、小声でミウに話しかける。

「よし、それじゃあこれ持っていけ。役に立つものが入っている」

「え?」

 ミウは困惑していた。殺すために魔族の国へ来たのに、生きるために必要なものを渡されたからだ。

「あと、これはお守りだ。どんなときでも、それを肌身離さず持っていろ」

「……どうして?」

「深くは聞くな。あいつに聞かれてたらマズイからな。ほら、行け」

「……ありがとうございます」

 ミウは、もらったお守りを強く握りロイドに向けて頭を下げた。

「こんなことしかできなくてごめんな。強く生きろよ」

「……はい」

 ロイドは馬に乗り、馬車は人族の国へ向かって行った。

 

 絶対に生き延びて見せる。


 ミウは、そう決心し森を歩く。

 すでに日は登り始めていた。

読んでいただきありがとうございます!!


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