トレーニング
「それで私のとこに来たというわけですか」
ミウが連れ去られた次の日、3人は朝から魔法理論の先生であるルーク教授の研究室に来ていた。
「お願いします、ルーク教授! 僕たちは強くなりたいんです!」
「私もお願いします!」
「俺にも頼む!」
3人はルーク教授に頭を下げてお願いをした。
「いいでしょう。ですがそのかわり、私の研究にも付き合ってもらいますからね」
「「「もちろんです!」」」
ルーク教授とショウ達3人は、授業という名目でグラウンドを使える事になったのでそこに向かっていた。
「そういえば、他に学生っていないんですか?」
「……いないよ」
ルーク教授が少し寂しそうな顔をしたので、ショウは慌ててフォローする。
「こんな面白そうな授業なのに?」
「やっぱり魔法は座学で学ぶよりも、実際に使いながら学びたいのだろう。だから、ショウくんが初めての学生だよ」
「今までで!?」
「そうだ。よくシオンはこんな私を教授にしたよね」
「もともと知り合いだったんですか?」
「まあね。……ほら、グラウンドに着いたよ」
グラウンドに着き、まずは魔法についての復習から行う。
「強い魔法を使う際に必要なのは、魔力と熟練度だ。魔力は魔法の威力を高め、熟練度は威力の高い魔法を使えるようになる」
「つまり、どちらも鍛える必要があるということですね」
「そういうことだ。だが、最初は魔力から鍛えていこう」
「どうやるんでしょうか」
ルーク教授がバトンのような金属棒の魔道具を取り出した。
「これは、一時的に人の魔力を強制的に高めるものだ。体に負荷はかかるが短時間で強くなれる。……試作品だがな」
「そんなものを使うんですか!?」
「研究に付き合ってもらうって言っただろう! それに私も試したが大した問題はなかった」
「早く強くなるにはやるしかないか」
「使い方は、その魔道具を持って体内の魔力を移動させる。そうすることで高い魔力に身体が慣れ、定着するんだ」
ショウ達は、それぞれ魔道具を持ち体内の魔力を感じ取ろうとした。
「痛いっ!」
「身体に電気が走ったみたいだ」
「高い魔力に身体が慣れていないと、負荷に耐えられないんだよ。強くなりたいなら我慢をするんだ」
「分かりました」
その日は、魔道具トレーニングをして終了した。
「今日はありがとうございました。また、明日もお願いします」
「まあ、いいよ。研究の被験者だからね」
寮に帰り、3人で夜ご飯を食べていた。
「今日のトレーニングで、少し魔力が高まった気がするな」
「そうね。強くなった気がするわ」
「でも、もっと強くならないと。何があるかわからないからね」
「ミウのためにも強くなろう!」
「おう!」
次の日もルーク教授とグラウンドに来ていた。
「今日は熟練度を上げるトレーニングだ」
「魔法を使い続ければ、上がるんじゃないんですか?」
「もちろんそれでも上がる。だが、短時間で力をつけるには新しい方法をやってもらう」
透明な水晶を人数分取り出して、3人に渡した。
「その水晶に、右手と左手交互に魔力を込める。これを早くやることができれば、水晶が強く光り輝くのだ」
「よし!俺が一番輝かせて見せる!」
「負けないわ!」
「やるぞ!」
その日は熟練度トレーニングをひたすらやり続けた。魔力切れになれば、昨日やった魔力トレーニングをやる。これを繰り返した。
ショウ達は毎日このトレーニングを繰り返していた。
何日か経った夜。雲が広がり、真っ黒な空が続いていた。ミウは、『陰影団』のロイドとともに馬車に乗っていた。
屋根のついた荷車に乗っており、ロイドではない『陰影団』のメンバーが御者をしている。
「私はどこに連れて行かれるのですか。」
「魔族の国『ハーデス』だ。人族の国では、獣族の差別はあるが受け入れて入る。しかし、魔族の国では全くいない。どんな扱いをされるんだろうな。」
「なんでこんな事に……。普通に学校生活を送れると思ってたのに……」
「まあ、着くまで一晩はかかるから寝てな」
ロイドは周辺警戒のために屋根の上に登って行った。
「ショウくんにはもう、会えないのかな……」
会えない日が続くにつれ、ショウに対する気持ちが強くなっていた。
「ショウくん……」
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