クラン『星火燎原』
星火燎原
4人は荷解きを終え、ショウの部屋に集まっていた。
机を囲み、ショウはクランについての説明をする。
「じゃあまずクランに属さないと講義も受けられないってことか?」
「そういうこと。」
「じゃあ早くクランを探しに行きましょう。」
「うん。」
4人はまず、演習場に向かった。
演習場の前にはクランを探す新入生と、勧誘する先輩とで溢れかえっていた。
「我ら『超人軍団』に入りたいものはこっちに来てくれー!」
「『ラブハッピー』はどうですか?」
「Cランククラン『疾風迅雷』に興味はありませんか?」
「すごいいっぱいあるな」
「とりあえず、話を聞いてみようか」
ショウは『疾風迅雷』と名乗っていたクランの人に話しかけた。
「すみません。話を聞きたいんですけど」
「お! 3人だな」
「いえ、4人です」
「おいおい。まさかそこの獣族のやつもか?」
その人は鋭い眼差しをミウに向けていた。
「そうですけど、何か問題が?」
「獣族をクランに入れるなんてあり得ないから」
「そんな!」
「全員同じクランに入りたいなら、他を当たってくれ」
そう言うと、その男は違う場所に行ってしまった。
「こんなところで獣族差別があるとは」
「私のせいでごめんなさい」
「いや、謝る必要はないよ」
「そうよ。きっと獣族のクランもあるはずだわ」
獣族にも優しいクランを見つけることが出来たが、ここでも問題があった。
「クラン『獣族組』は、獣族の血族しか受け入れていない。だから4人一緒に加入したいなら他をあたってくれ」
「……分かりました」
気づけば、日はすっかり落ちていた。
4人は寮に戻り、ショウの部屋で話し合いが行われていた。良いクランが見つからず、みんなの表情は暗い。
「いろんなクランを調べてみたけど、人族と獣族が一緒に参加できるものはないらしいわ」
「獣族だけのクランも『獣族組』しかないみたいだしな」
「……やっぱり私だけ『獣族組』に入るので大丈夫ですよ」
ミウはうつむきながらそう呟いたが、それをショウが否定する。
「……いや、その必要はないよ」
「どうしてですか?」
ショウは椅子から立ち上がりみんなの顔を見る。そして、視線を集めてから宣言する。
「僕たちでクランを設立しよう」
「!?」
「やっぱり差別はいけないことだと思う。だから、僕たちで人族と獣族の架け橋になれるようなクランを作るんだ!」
カイトは目を輝かせ、レナは目を見開き、ミウは涙を滲ませていた。
「できることは小さいかもしれない。でも、やらなきゃこれからも同じような差別は続いていくんだ。勝手なお願いかもしれないけど、みんなにも協力してほしい」
ショウはみんなに向けて頭を下げた。わがままなお願いだと思いつつも、差別を許すことが出来なかったのだ。
「俺は良いぞ! 差別なんか無くしてやろう!」
「私も賛成よ! もっとミウと仲良くなりたいし!」
「ショウくんありがとう。こんな提案をしてくれて。
とっても嬉しい! もちろん私も賛成だよ!」
「よかった。みんなありがとう!! これから大変だと思うけど、一緒に頑張ろう!」
「「「おー!」」」
クランをどうするか悩んでいた暗い顔から、みんな明るい笑顔になっていた。
「じゃあ早速俺たちのクラン名を考えようぜ!」
「なにがいいかしらね」
それぞれが真剣に考えていたが、しばらくしてミウが1つ提案をする。
「『星火燎原』ってどうですか?」
「どう言う意味なの?」
「最初は小さな力でも、放って置くと後で手がつけられないって意味です。私たちはまだ、小さな力しかありません。でもいつかこれが、大きな力になってほしいと思って考えました」
「いいな!」
「私も賛成よ」
「じゃあ僕たちのクラン名は、『星火燎原』だ!」
クランが設立された記念として4人でパーティーをすることになった。コンビニしか利用できないので、豪華さはない。
それでも、とても盛り上がった。
人族だろうと獣族だろうとこんなに仲良くなれるんだ。だから、少しでも差別がなくなるように頑張ろう。
夜の10時になったためパーティーはお開きとなった。
「じゃあ明日からもよろしくな!」
「頑張りましょう」
「ショウくん、また明日ね」
「ああ、また明日!」
1人になり、眠る支度をする。
これから大変な学校生活を送ることになると思うけど、とてもワクワクしている。ミウ、カイト、レナと一緒に頑張って行こう。
明日から忙しくなるぞ!
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