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一千一瞬物語

ショートショート『古(いにしえ)の賢者』

近々、世界大戦が起きるという噂を聞いた私はシェルターをつくりコールドスリープマシンで眠りについた。

ところが、マシンの故障で私は数十年の眠りのつもりが二千年後の世界に目覚めてしまった。

どうも世界大戦の影響で世界人口は激減、文明もかなり後退しているようだ。

私はこの世界の見聞を広めるため、旅に出た。


巨大な廃墟のある村に来たときである。

その村の巫女だという美しい女性に呼び止められた。

「もしや、あなたは古の賢者ですか」

「とんでもない、そのような者ではありません」

「いいえ、神のおつげにより今日、この時間に賢者が村を通りかかると分かっておりました。とにかく一緒にきてください!」

私は面倒ごとは大嫌いな性格なので必死にことわったのだが、そのままひきずられ、公民館のような施設に連れて行かれた。

そして、村長をはじめ村民一同に土下座をされ、無理やり彼らの話を聞く事になってしまった。


話によると……

なんでも村はずれの廃墟に古のタイムカプセルがあり、文明復活のヒントになる貴重な遺産が入っているのだが、開ける事ができないのだそうだ。

開けるには99問の不思議な『問い』に答えなくてはならないのだが、巫女が言うには、

「その問いには伝承によれば『日本人』しか答えられないそうです。……あなたは日本人ですね」

「い、いやワタシ中国人デス、これにて失礼~」

「うそつけ、こんにゃろう!!」「逃がすな、取り囲め!!」

「や、やめてアル~!!」

巫女と村長たちにボコボコにされた私は、快く彼らの頼みを聞く事になった。


村長、俺、巫女、全村人の順で廃墟の中を一列で進む。

スキを見て逃げ出そうとしたが、これでは逃げられない。

廃墟の中は見かけと違い、よく整備されているようだった。

奥に進むと巨大な門が……これがタイムカプセルの入り口らしい。

要は文化財を守る為のシェルターといったところなのだろう。

扉の横にはボタンがひとつ。

これを押すと音声による謎の問いかけが始まり、99問答えれば扉が開くしくみらしい。

でも、扉の前に十数人の人が倒れているが……

「この人達は?」

巫女はにっこりと笑う。

「世界中からの挑戦者ですわ。問いに答えられないと、死なない程度の電気ショックを受けるのです」

「……」


タイムカプセルはかって地球に存在した国『日本』製で、大戦の際に外国の略奪から守る為、日本人しかわからない質問が設定されたようだ。

その問いの答えは世界中の英知を結集してもわからないらしい。

巫女はうるんだ瞳で言う。


「何百年も挑戦しているのですが一問も突破できず、もうあきらめていたところにあなた様があらわれたのです。これこそ天の助け……さあ、質問に答えて扉を開けてください。早くあけて。さあ、早く! 

……ええい、さっさとあけんかいっ!!」

「ひええええぇ、お、お助け~」

最後の方、巫女の目は血走っている。

美人が怒ると般若のようでとても恐ろしい。

もう、やぶれかぶれだ。質問とやらに答えてやろうじゃないの!


巫女がボタンを押すと厳かな声が聞こえた。

『第一問。挑戦者よ。汝に問う!!』

ごくり。

『明日も来てくれるかな?』

「……いいとも」

ぴんぽーん!と軽快な音がして

『正解』

おおっ~と、観衆からどよめきが起こる。

『第二問。ドドスコスコスコ』

「……ラブ注入」

ぴんぽーん

うおおっ~

『第三問。このようなところに上様がおられる筈はない』

「……余の顔を見忘れたか」

ぴんぽーん

わおおっ~

『週末ヒロイン』「ももいろクローバーZ」 ぴんぽーん

『死して屍』「拾う者なし」 ぴんぽーん


……

ハンドパワーです

いい夢見ろよ!

てじなーにゃ!

おまんら許さんぜよ!

クルリンパ

キレてないですよ

間違いない!

なんて日だ!

はぁ~びばのんのん!

コマネチ

気合だあ!

こりん星

じっちゃんの名にかけて!

火付盗賊改め 長谷川平蔵!

このバカチンがあ

……


『第九十九問。エリー My love……』

「♪so sweet~!!」


ぴんぽーん、という音とともに巨大な扉が開き始めた。

と、同時に村人、挑戦者達が一斉にカプセル内になだれ込んで行った。

私もちょっと入り口から中をのぞいたが、自動車、飛行機、工作機械、コンピューターや書籍類、まだ稼動している冷凍庫もあって食料なども保存されているようだ。

21世紀の文明を代表する物を詰め込んだのだろう。

確かに文明復活の糸口になる物はあるかもしれない……よい事をしたのかも、と思って廃墟の外に出た。


村を出ようとすると、巫女が追いかけてきた。

「本当にありがとうございました!! これはお礼です!」

と言いながら小さな袋を差し出す。

タイムカプセル内にあった貴重な品だという。

私は礼を言って受け取り、村を出た。


しばらく歩いて、小腹がすいたので先ほどの袋をあけた。

そして中身をかじりながら思った。

「カ○ビーポテトチップスか……コイ○ヤも好きなんだけどな」


(了)

こちらにも書いています

https://note.com/applesamurai/n/n3e1f72dc13d1

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