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異世界で再就職する羽目になったけど、潜水艦乗りは潰しが効かなくて困ってます。  作者: はんちょう
第1章 せっかく公務員に成れたのに、何だかブラックの匂いがする。
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第7話 まだまだ油断ならない…。

 水上艦艇で勤務していた頃、仕事に追われて深夜(丑三つ時くらい)に仕事をしていたら、副長(3等海佐)が虚ろな顔で現れて、パソコンを取り出し始めた。


『あれ?こんな時間に副長が仕事?』


とか思いながらも、何も言わずに仕事を続けていたら、副長がキーボードをカタカタ叩きながら、


「働けど働けど我が暮らし楽にならざる也。」


ってポツンと口にしていた。


『これは俺に話しかけてんのか?』

『文学は苦手なんだけどなぁ…。』


とか思いながら、


「石川啄木でしたっけ?」


って話しかけたら、


「3佐になれば少しは仕事が楽になるかなって思ったけど、寧ろキツくなったよ。ははっ…、いつになったら人並の生活が送れるんだろうな…。」


とか言ってる。

えっ?マジで?ヤバ過ぎだろ。修羅の道だったわ、幹部自衛官。


 水上艦勤務が終わり、潜水艦教育訓練隊での教育期間を経て潜水艦に乗艦したんですが、潜水艦はスペースが限られているため、乗組員が水上艦に比べて少ない。当然の事ながら幹部も少ない。具体的には半分くらい。

 でも、あら不思議、全体の仕事量はあまり変わらない。つまりは、


『水上艦より一人あたりの仕事が多い』


という事。もう絶望的な気分だな!


 代休なんてあっても取れないし、有給休暇なんて貯めに貯めて期限切れになるだけのモノで、まともな連休なんて年末年始くらい。加えて言えば、代休やら有給は『許可制』で、


「あのぉ〜、ちょっとお休み頂きたいんですけどぉ〜、良いですかぁ?」


って超猫なで声で言っても、


「駄目。」


って言われれば終了。

上官に恵まれるとイイね!(絶望)

 朝は6時には艦に着いて、艦を出るのは日付が変わってるなんてザラ、当然ながら公共の交通機関なんて動いていない。いくら同じ市内に住んでるとはいえ、通勤時間を考慮すると家に4時間も居れないんだが…。一応土日は休みって事になってるけど、仕事が処理出来なければ自主出勤。当直士官の日は丸1日当直の仕事で潰れるから、その間に個人の仕事が溜まる。

 更に出港すれば、その間の仕事が溜まっている。母港に戻った時に、大量の文書が詰められている数箱のダンボールを渡されるときの絶望的な気分は筆舌し難い。

そして、出港中に期限切れとなった仕事を、


「期限過ぎてんぞ!」


って怒られながら処理していくあの何とも言えない納得いかない感じ。仕方無いじゃん、陸地に居なかったんだから…。

 勝手に留守の間に仕事を依頼しておいて、帰って来たら、


『提出期限切れてますよ、直ぐに提出してくださいね(怒)』


ってお前ら鬼か!出港してたんだから大目に見てくれよ!

 で、次の出港までに全ての仕事を終わらせて、出航準備も終わらせてとなると、まともに休んでいる暇がない。

土日祝日は、


「今日は休日だから、19時くらいで仕事止めとくか!晩御飯食べに行って、スーパーでお菓子でも買お!」


と、ささやかな幸せを噛み締めるわけです。

酒?疲れてるときに酒なんかのんだら寝坊するじゃん。俺は飲まないよ。飲む人はスゲー飲むけど。

だから、せめて晩御飯くらいはお店に食べに行く。普段は日付変わってるからコンビニくらいしか開いてないんだよ。オニギリも惣菜パンも弁当も食べ飽きたわ!


『能力低くて仕事が遅いからそんな事になるんじゃね?』


って思った人は是非とも入隊して幹部になって、その能力を如何なく発揮して欲しいと思う。国防能力の向上のため是非とも。いや、割と切実に。


まぁ、こんな感じで


『休日って何だっけ?』


という答えの無い問いを繰り返す状態になるわけだけれども、そのうちに慣れる。慣れてしまう。

 いきなりキツくなるのではなく、徐々にキツくなっていくから何だかんだ我慢出来ちゃうのが凄い。偶に我慢出来ない人はメンタルが崩壊しちゃうけれども…。


と、言うわけで、


「水上艦は楽でよかったなぁ…。」


って愚痴りながら仕事するようになる。なんかどっかで聞いたようなセリフだな。

ハイテンションで仕事してる人もいるけど、大体は死んだ魚の眼をしながら仕事を続ける。

更に忙しくなってくると、


「転職しようかなぁ…。」


って愚痴が出てきだすが、先輩から、


「馬鹿野郎っ!民間企業はもっとキツいんだぞ!この程度で弱音を吐いて申し訳無いと思わんのかっ!俺達は公務員で恵まれてるんだぞ!」


と励まし?のお言葉を頂戴する。


『マジかよ!?ヤバ過ぎだろ民間企業!どんだけメンタル強いんだよ!企業戦士とかいう言い回しも納得だわ。』


とか、


『そりゃあ過労死も問題になるはずだわ…。』


と、民間企業で働く人達を気の毒に思いながら、また、民間企業に戦慄を覚えながらも、


『公務員で良かった…。』


と思いながら仕事を続ける。

しかし、ある時にふと気付く。


『あれっ?あの先輩って民間で働いた経験あったっけ?』


と。

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