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第23話 大規模魔法

『そうじゃ、コウスケ。外でお茶するのも良いが、折角じゃしワシの家に行かんか?』

「ここから遠いですか?」

『いんや、ホレ、あそこに壁があるじゃろ?』


確かに壁がある、しかし屋根はない。まぁ、それはそうだろう。ジャックさんの入れる家となると屋根の高さが尋常ではなくなってしまう。ってか、


『これって外でお茶するのとどう違うの?』


と思うが、言わぬが花だろう…。

ジャックさんの言う『壁』の内側に入ったが、マジで何もない。


「ジャックさん…、此処って…」


何の意味があるんですか?って聞こうとした時、足元で巨大な魔法陣が発動した。


『ん?なんじゃ?』

「なんじゃ?ってこっちのセリフ…」


急に視界が切り替わった。巨大な遺跡の様な建物内に居るようだ。


「ジャックさん、さっきの魔法って…。」

『うん?転移魔法じゃよ?』

「いきなり発動されるとビックリするじゃないですか!!」

『うおぅっ!何をそんなに怒ってるんじゃ?転移魔法なんて珍しい物でも無かろうに…。』

「人族の間では存在してるかどうかすら怪しい魔法ですよ!」

『そうなんか?遅れとるのぅ…。』

「それにしても巨大な魔法陣でしたね。」

『これはワシ専用じゃからちょっと大き目じゃが、大規模魔法は大体あんなもんじゃよ。ただ転移魔法は他の大規模魔法と違って、距離が遠くなるに比例して魔力消費が増えていくけどの。』

「どのくらいの消費量なんですか?転移魔法陣は。」

『普通の大きさじゃったら発動自体に10万くらいで、移動距離1Kmあたり1万くらいの上乗せかの。固定した位置にしか移動できんが、魔力消費も少なくてお手軽じゃろ?』


そりゃジャックさんにとってはな。普通の人族は発動すらできないよ。


「取り敢えず転移魔法陣を写して良いですか?」

『ええよ、他にも大規模魔法が有るんじゃがどうする?』

「それも是非!」


様々な大規模魔法陣を教えて貰ったが、ジャックさんから注意事項があった。


『ウチの近くじゃあ試し撃ちせんといての。復旧が大変じゃし。』

「えっ!?ジャックさんが大変とか、どのくらいの威力があるんですか?」

『昔に試しで獄炎の大規模魔法を撃ってみたらの、山が吹き飛んで見渡す限り焼け野原になったわ。懐かしいワイ。』

「じゃあ他の大規模魔法も…。」

『似たりよったりじゃ無いかの?』

「なんて魔法を教えるんですか…。」

『発動魔力が30万くらいのお手軽魔法じゃから使い易いかと思ったんじゃが…。ちなみにまだ上もあるんじゃけどの、コウスケの魔力量じゃと発動できんしの。』


そういえば図書館に謎の大爆発で山が消し飛んで辺り一帯が焼け野原になったって記録が合ったような。原因不明ってなってたけど、犯人が目の前にいる!

 すでに転移魔法の他に獄炎、凍てつく世界、真空衝撃波、天地創造、重力操作などを教わってしまった。このレベルの魔法でも死蔵確定であるのにまだ上があるのかよ…。


「もうちょっと使い易いのが良いんですが…。」

『空間収納とかショートムーブとかかの?』

「そうそう!そういうのです!」

『でも空間収納は中身が入ってる間は常に魔力を消費するし、ショートムーブは移動先が岩とかじゃと岩に潜り込んでしまうぞ?』

「び、微妙に使い難い…。」

『まぁ、空間収納の維持魔力は中身の両親に比例するからの。あまり沢山収納しなければ自然回復量と釣り合うじゃろうし、魔力回復スキルのレベルを上げればなんとかなるじゃろ。』


ジャックさんの『何とかなる』はどうにもならない事があるからなぁ…。


「他に使い勝手の良い魔法とか無いですかね?」

『むぅ、他には中規模魔法か聖属性魔法か付与魔法くらいしか無いからの…。』

「なんか大規模魔法よりよっぽど使えそうな単語が並んでいるんですが。」

『そうかの?中規模魔法は大規模魔法に比べれば威力が中途半端じゃし、聖属性魔法なんぞレイス系への攻撃か、防御力の向上くらいにしか使えんし、付与魔法に至っては武器や防具に魔法の効果を上乗せするだけじゃから普通に魔法使った方がコスパが良いぞ?』

「いや、それ十分有用なんですが…。」

『まぁ、人族は紙防御に定評があるからのぉ。聖属性魔法は便利かもしれんの。』


紙防御に定評があるって、何処の界隈の話ですか?

 中規模魔法も死蔵確定しそうな感じだったけど、使えそうな魔法もいくつかあった。主に風属性と土属性に。火と水は名前を聞くからにヤバそうだったが、教えて貰った風属性と土属性の中規模魔法は魔力練度を上げれば規模をコントロール出来るようになるらしい。特に土属性の魔法は家を建てるのに便利なんだと。もうチョイ早く知りたかったよ…。


 ジャックさんが鑑定ではお茶と出ていた飲み物を持ってきてくれた、ただし樽入りで。これ以上小さいと扱いきれないそうだ。


「ところでジャックさん、ジャックさんってお茶飲むんですか?」

『ん?それはどういう意味の質問なんじゃ?』

「ジャックさんもピノも魔法植物じゃないですか?ピノは魔力以外の物を口にすることが無いので、ジャックさんもそうなのかなって。」

『ワシはグルメじゃからな、勿論飲むぞ。』


そう言うと『ごっくんごっくん』喉?を鳴らしながら樽からお茶を飲んだ。ただし根っこから。張り付いた様な顔があるのに、根っこからゴクゴク音がする光景はかなりの違和感がある。慣れるかな?コレ。


『そういえば、良い香りのする実が有るんじゃが、お茶に入れてフレーバーティーにするか?』

「オシャレですね!いただきます。」

『そうかそうか、そこの棚に纏めて放り込んどるから自由に使うと良いの。』


棚の上に置いてあるでっかい木箱を覗くと、金色に輝くスイカくらいの大きさの実が大量に入っていた。確かに何とも言えない良い香りがする。


「コレなんていう実なんですか?」

『うーん、ワシもよくわからんのじゃ。』

「えっ?ジャックさんでも分からないんですか?」

『うむ、100年周期くらいでワシの頭になるんじゃ。ホント不思議。』

「ええっ!?コレジャックさんの実なんですか!?」

『トレントは普通実をつけないはずなんじゃがな。ホント謎の実。』

「ジャックさんは自分で食べた事あるんですか?」

『コウスケは自分の頭になった実を食べたいと思うかの?』

「いえ、思いませんね。」

『それが答えじゃよ。』

「それを俺に食わせようとしたと…。」

『人族は果物大好きなんじゃろ?』

「まぁ、そういう傾向はありますが…。」

『気になるなら鑑定してみれば良いじゃろ。』


『"鑑定"』


【UNKNOWN】

鑑定のレベルが足りません。



「ジャックさん…、コレ鑑定できません…。」

『そうなんか?まぁ、食べても大丈夫じゃろ!』

「ならジャックさんが食べてみて下さいよ…。」

『えぇ……、嫌じゃのう…。』

「嫌ってそんな。」

『じゃって自分の髪の毛むしって食べる感覚じゃぞ?』


うん、確かにそれは嫌だ。


「……ちょっとだけ食べてみます。」


皮がかなり固かったが、かなりの魔力を注ぎ込んだら何とか切れた。うわ、めっちゃいい匂い!

 一口掬って口に入れると何とも言えない甘さが口いっぱいに広がる。前の世界でもこんな美味しい物は食べたことが無い。風味はライチの香りを更に上品にした感じだが、味は例えられる果物が思いつかない。もう何というか言葉が無い。


「ジャックさん、コレ出鱈目に美味しいですよ!」

『そうかそうか、そりゃあ良かったの。』

「ジャックさんも食べてみれば良いのに。」

『どんなに美味しくてもワシにとっては100年に1回生えてくる髪の毛じゃからの…。なんか良く分からんけどいい香りがするから取っておいただけじゃし。』

「そういえばコレいつ採れた実なんですか?」

『ここにあるのは1番新しい実じゃから、10年ほど前かの?いつから取っておいたかは700年より前は忘れてしもうた。』

「そんな前からよく腐りませんね。ホントに謎の実ですよ。」

『ここにあるのは1番新しい実じゃけどの。他の実は邪魔じゃから奥にしまってあるんじゃ。』

「昔の実も食べてみて良いですか?」

『ええぞ、寧ろ沢山持って帰って欲しいのじゃ。そろそろ置き場所に困ってきての…。』


仮に分けて入れている部屋が1シーズンの実なら1000年近く前から実がなっていたと思われる。一部屋一部屋に大量の実がうず高く積まれていて、足の踏み場もない。

 1番古い実を放り込んでいるという部屋から1つ取り出して食べてみたが、さっき食べた1番新しい物と全く変わりがない。


「ジャックさん、俺アイテムボックスのスキル持ってるので収納に制限多分ありませんけど、どのくらい引き取りましょうか?」

『そりゃあ助かるの。今年のヤツだけ残して全部引き取って欲しいのじゃ。』

「分かりました、良いですよ。」


片っ端からアイテムボックスに詰め込むと、半分くらい入れたところでカウンターストップしたが、気にせずドンドン詰め込んでいく。スイカくらいの大きさの実が2万近く入ってるのか…、凄い量だな。


『おおっ!スッキリしたの!ありがとう、コウスケ。』

「いえいえ、こちらも美味しい実を沢山頂けたので。ではそろそろお暇します。」

『前の場所まで送ろうかの。あ、そうそう。コウスケよ、キチンと魔法陣の中に入るのじゃぞ。この転移魔法陣はワシ用に大きく描いておるが、魔法陣にしっかり収まっていないと魔法陣の境界線で身体が泣き別れするからの。』

「……それ初耳なんですが…。」

『うむ、コウスケに言うのを忘れておった!』


もうヤダ、このジジイ。所々に死亡フラグをブッ込んできやがる……。


 ジャックさんに、はじめに合流した地点まで送って貰った。ジャックさん用の転移魔法陣なんて使用どころか起動すら出来ない可能性があるからな…。

 次に来る時、また魔釖術全開の鬼ごっこするのが面倒なので、ジャックさんに俺用の転移魔法陣を設置してもらい、さらに転移魔法陣の設定方法も教えてもらった。これで簡単に行き来できるようになるはず。……俺の魔力量が保てばという前提の下でだが。


「ありがとうございました、ジャックさん。次に来るのは早くて数ヶ月後だと思います。」

『おお、随分早く来てくれるんじゃな!コウスケ、お主ワシのこと好き過ぎるじゃろ?』


何か微妙な評価を下されている。しばらく来るの止めようかな…。しばらく遅らせてるって言ってもジャックさんには誤差の範囲なんだろうけど、何もしないのも何か悔しいな…。

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