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第17話 ポーションの水割り比率

 夕食時にコリーナからセーフハウスの寝室の壁は厚めに作った方が良いとのリコメンドを受けた。何で?と聞いたら、『安全の為の家だから、無防備になる寝室は強化したほうが良い。』との事。なんか納得できるような出来ないような…。まぁ、家の作りは嫁の意見を採用するのが夫婦円満のコツともいうし、セーフハウスを作る時は忘れないように強化しておこう。

 キャロが『セーフハウスって何?』と聞くので、別荘みたいな物だよと答えておいた。まぁ、ネグラ的な意味合いが強いが大筋では間違いでは無いので、別に詳しく説明する必要は無いだろう。



 翌日は朝からニコラスさんのお店に向かう。毒草は錬金しないように上手く誘導しなければ…。


「おはようございます。」

「おお、おはよう、コウスケくん。」

「おはようございます、コウスケさん。」


この人達、貴族なのに平民に当たりが柔らかいな。まぁ、それだけでは信用は出来ないが…。


「材料採ってきました。薬草束とアシタバの束です。薬草束は400あるので研究し放題ですね!」

「おお!凄いじゃないか!」

「ニコラスさん、先ずはポーションの配合割合を調べませんか?」

「配合割合?」

「はい。以前ポーションの錬成を見せて頂いたときに、ザックリ半分に薄めていましたよね?それを正確に半分に薄めたり、3分の1に薄めたらどうなるのか…、興味ありませんか?」

「ふむ…。今まではレシピ通りに作っていたが、違うやり方も試してみようという事だね?」

「はい、錬金術自体は変更出来ないので。材料や分量であれば簡単に変更出来ますし。」

「面白いね!早速やってみよう!」

「薬草束はまた採ってくれば良いので豪快に使いましょう。」

「キミが採ってきたのか!?」

「はい、ユニオンに纏まった数の薬草束を卸しているのは私だけですね。」

「コウスケさんが『ムストのFG』だったのですね…。」


ムストの鉄?何だそれ?そしてかなりダサい。


「あの…、それは一体?」

「ご存知無いのですか?コウスケさんの二つ名ですよ。『ムストのファーマシーゴブリン』と評判です。」


FGってファーマシーゴブリンかよっ!!しかもやっぱりダサい!


「そうだったのか、コウスケくんは有名人だったんだね。それならありがたく薬草を使わせてもらおうかな。」

「共同研究なので、私かできる事はやるつもりですよ。」

「ありがとう!」


薬草50束のポーション原液を2つと、100束のポーション原液を3つ作った。ニコラスさんとプリメラさんは『量を変えても出来た…。』と驚いていたが、良く見ると若干だが色見が違う。


「どうやら100束の方は50束の物と違う様ですね。若干色見が濃いです。」

「ふむ、とりあえず50束の原液から試してみようか。」

「コウスケさん、私なんだかワクワクしてきました!」


そういえばプリメラさんも錬金術の勉強中だったな。


「ではキッチリ半分と4分の1で試してみましょうか。」

「コウスケくん、何故3分の1では無いのかい?」

「4分の1であればキッチリ半分にしたポーションを更にキッチリ半分にすれば簡単に作れますから。」

「ところでどうやって半分に薄める水を用意するのですか?」

「これです。」


事前に作ったおいた天秤を取り出す。これなら簡単に作れるからな。


「この吊るされた皿の片方にポーションの原液を乗せます。」

「そうかっ!反対側に水を乗せれば釣り合った所で同じ分量になる!」

「まぁ、体積ベースではなく重量ベースの話ですけどね。」

「体積?重量?」

「まぁ、それは良いとして、これを使えば量をキッチリ計って薄めることができます。先ずは原液を等分する所から始めましょう。」


本当はメスシリンダーとか欲しかったけど、ムストみたいな辺境にはガラス職人居ないらしいんだよなぁ。


ポーションの2倍希釈、4倍希釈、ついでに8倍希釈を作った。俺は鑑定で確認できるが、ニコラスさんはどうやって効果を調べるのだろう?とか思っていたら、ニコラスさんとプリメラさんは徐ろにナイフを取り出して腕を切りつけ始めた。


「ええっ!?何をしているんですか!?」

「ん?ポーションの効能を調べているんだよ。」

「5cm程の傷がどの位で塞がるかで効果を確認するのですよ。」

「いやいや、そうかもしれませんが、せめてプリメラさんは私と代わって下さい!女性なんですから傷なんて付けない方が良いに決まってます!」

「でも私は貴族女性としては終わったも同然ですので…。」

「そんなの関係無いですから!」

「仕事に生きると決めてお祖父様に弟子入りしましたので、錬金術の効果位は確認しませんと…。」


この世界の女性って色々とアグレッシブ過ぎじゃね?


「ニコラスさん、錬金術って作成物にムラがあったりしますか?」

「いや、そういうことは無いよ。」

「プリメラさん、1度確認出来れば良いようなので、今回の効能試験は私に任せて下さい。」

「いえ、でも…。」

「い・い・で・す・ね?」

「はぃ…。」


プリメラさんが持っていたナイフを借りて、腕に傷をつける。


「ニコラスさんはキッチリ半分に薄めたポーションを使って頂けませんか?私では元の傷が塞がる速度を知りませんので。」

「わかったよ。コウスケくんはどうする?」

「私は8倍希釈から始めて見ようと思います。」


しれっと鑑定をかけてみると、


【ポーション(低品質)】

通常のポーションよりも効果が低いが擦り傷程度には効果アリ。


擦り傷程度か…。これ傷口塞がるのかな?


 ナイフでつけた傷口にかけてみると、若干傷が小さくなった。もう一本かけてようやく傷が塞がった。


「ニコラスさん、8倍希釈は駄目ですね。傷が塞がるまでに2本使ったので、多分効果は落ちてると思います。」

「「………。」」

「ニコラスさん?プリメラさん?どうかしましたか?」


2人がニコラスさんの腕をガン見している。傷は塞がったようだけど、どうしたのだろうか? 余程驚いているのか返事がない。仕方がないので改めて問いかけてみる。


「ニコラスさん?どうしました?」

「効果が格段に上がっている…。」

「コウスケさん、お祖父様の傷が一瞬で塞がりました…。」

「ええっと…。普通のポーションだとどの位の時間かかるものなんですか?」

「5〜6秒でしょうか…。少なくとも一瞬で塞がる様なことはありません。」

「これは大発見だな…。」

「ええ、お祖父様。それに治療に必要な量も少なくて済みそうです。」


残っている2倍希釈に鑑定をかけてみると、


【ポーション(高品質)】

傷を素早く塞ぐ。服用することで内臓の損傷にも少し効果があるが、凄く不味い。


不味いのか…。ジュースで希釈したら美味しくなるかな?


 2人が驚いている間に新しい傷を付けて4倍希釈も試してみると5秒位で傷が塞がった。これって普段作っているポーションの性能と同レベルじゃね?ついでに鑑定もやっとく。


【ポーション(上品質)】

普通のポーション。そこそこの回復力。傷にしか効果はない。


「ニコラスさん、4倍希釈で普通のポーション位の効果があるみたいです。」

「なんだって!?」

「5秒位で傷が塞がったので、ほぼ同程度かと。」

「なんたることだ、今まで相当量の薬草を無駄にしていたのか…。」

「お祖父様…。」

「ニコラスさん、そこは考えようですよ。むしろ今わかって良かったじゃないですか。」

「コウスケくん…。」

「ニコラスさんが薬草を無駄にしていたなんて考える人は居ないと思いますよ。むしろ新たな製作法を考案して効率が上がったと考えるのが普通でしょうね。それよりも本家の方々とこの情報を共有すべきだと思います。」

「そうだね、そうしよう。ちょっと手紙を書いてくる。」


ニコラスさんは手紙を書くため部屋を出ていった。

 しかし、効果の確認が自分で試してみるとは…。毒草から始めていたらとんでもない事になってたな…。アシタバはどうするか…。多分効果無しって事になるだろうな。栄養補助食品なんて直ぐに結果の出るものでも無し。まぁ、100束のポーション原液を試してから考えれば良いや。そういえば青汁はザックリ半分にしたら上品質だったな…。キッチリ半分に希釈したら高品質になるかもしれない。


「コウスケさん、ありがとうございます。」

「えっ?いきなりどうしました?」

「実はポーションは薬草の消費が激しく、価格も高いのでどうにかしろと言われ続けていたもので…。」

「それはこの街でですか?」

「いえ、王都でです。王都周辺には薬草採集できる平原が少ないので、薬草自体が辺境よりも更に割高になるのです。」

「それはまた…。」


此処ですら50束の買取価格25000ギルだからなぁ…。ユニオンの取り分は分からないが、ポーション1つあたり15000ギル位は取らないと稼業としては成り立たないだろう。それが7500ギルで販売出来るようになるのであれば、そこから利益を上乗せして販売する事ができる。売り手良し、買い手良し、世間良しの三方良しだな。


「でもこれで半額で販売できるようになります!」

「えっ!?今までは幾らで販売していたのですか?」

「基本的には1本あたりの利益が300ギルになるように値段設定していました。」

「それって安すぎません?」

「数を売れば大丈夫ですよ?」

「そもそも数作れるモノでもないでしょうに…。折角安く作れるようになったのですから、1本あたり1000ギル位利益が出るように設定した方が良いですよ。むしろもっと取っても良いくらいです。」

「それはちょっと高すぎるような…。」

「いえ、今までが安すぎただけです。原価が高かったから値段も高く感じていただけで、労力に対する報酬が十分ではありません。」

「コウスケさん…。」

「稼ぎ過ぎるのが気になるのであれば社会に還元すれば良いんですよ。その方が効率的です。」

「社会に還元ですか?」

「孤児院みたいな所があれば、そこに寄付するとかですね。お金を持っている人が買って、それで得た余分なお金を無くて困っている人に配る。社会格差の是正とまでは言いませんが、ただ購入価格を下げるよりも効率的だと思いませんか?」

「なるほど、確かに…。お祖父様に上乗せ価格を統一するよう理由を添えて本家に提案してもらいます。このままだと本家もただ安くしそうなので…。」

「そうですね、それが良いと思います。」

「ちょっと失礼しますね。」


そう言うとプリメラさんは奥に入っていった。ニコラスさんの手紙にさっき言った事を付け加えてもらうのだろう。ニコラスさんとプリメラさんが手紙を書いていて居ない内に、100束のポーション原液作って薄めておくか…。

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