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第11話 レベリング(2)

 ピノに食事の魔力を与えた後、魔力液と魔紙を作る。材料はトレントの樹皮以外は揃っている。本来ならば錬金術の『合成』が必要なところだが、劣化版であれば錬金術は必要ない。だって皆、材料混ぜただけの不完全な魔力液と魔紙で作ったスクロールを皆問題なく使ってるしな。むしろ俺の方が材料は良いから余裕でしょ。

 まぁ、魔導書を作る時には正規品で作ろう。なんてったって正規品だと600年近く経っても健在なんだし。


 材料を合わせて乳鉢に入れ、ゴリゴリと乳棒ですり潰していく。研究準備の為に雑貨屋で購入したが、最近は書斎というより実験室の様相を呈している。


「で、出来た…。」


【魔力液(中品質)】

魔力を宿した液体。魔法陣を描くために使用する。高品質以上は描く対象を限定しない。

『材料』

・完熟したル厶ルの実

・グリードホーネットの灰


【魔紙(高品質)】

魔力を通す繊維が絡み合った紙。高品質以上の魔紙は上品質以上の魔力液以外の汚れを全て弾く。

『材料』

・薬草

・ディバイントレントの樹皮



 魔紙って材料すり潰して広げて乾燥させると紙になるんだな…。正直いって俺は納得いかないんだが、作ってる人間は疑問に思わないんだろうか?水に溶かして紙漉きするなら解るけど…。ご都合主義か?有り難い話ではあるけどな。

 それにしても魔力液が中品質って…、汚れと認識されたら魔法陣描けないんじゃ無いの?

はい、描けませんでした!スライムの核を入れてやり直しだ!


【魔力液(上品質)】

魔力を宿した液体。魔法陣を描くために使用する。高品質以上は描く対象を限定しない。

『材料』

・完熟したル厶ルの実

・グリードホーネットの灰

・スライムの核


出来た!これで前に研究していた生活魔法の"アイスフィールド"を使いやすく且つ強力にした魔法陣を描くだけだな!長期保存が効くように、品質の劣化を抑える−80℃の急速冷凍機をイメージして魔法陣を創ったからな。


「ふむ、鍵言は"アイスコフィン"にするか。」


中々良いんじゃないの?と悦に入っているとコリーナが書斎に入ってきた。


「あなた、もう寝ませんと…。」

「ん?もうそんな時間かい?」

「はい、もう20時を過ぎていますよ。」


例え2時起きだったとしても、前に比べればなんてこと無い。なんせ全て睡眠に充てれば6時間も確保できるのだから!まぁ、今はホワイトな環境なので、早く寝るに越したことは無いのだが…。


「ごめんな、コリーナ。もう少しする事があるんだ。先に休んでいてくれるかな?」

「でも……、わかりました。ベッドでお待ちしてますからなるべく早く来て下さいね。」

「分かった、急ぐよ。そういえばピノは?」

「キャロと一緒に寝てますよ。可愛らしい寝顔ですね。」


そう、ピノはトレントにあるまじきアニメ顔なのだ。おまけに表情も豊かである。ユニークだからかな?口が全く動かない親のジャックさんとは似ても似つかない。


「明日はピノも連れて行くからね。」

「はい、ピノちゃんだけお留守番は可愛そうですからね。」


そういう意味ではなかったんだが…。まぁ、良いか。


完成した『アイスコフィン』の魔法陣を持って裏手の井戸に向かう。


『"アイスコフィン"』


バキバキバキバキッ!!


……うん、朝までには絶対に溶けないだろうな。ごめんコリーナ、明日はウォーターで水くみするから許して欲しい。


 コリーナから怒られて水くみをする約束をした後、リックさんの店の前に集合した。面子だけ見れば、家族でピクニックみたいだな。


「おはようございます、リックさん。」

「おはようございます、コウスケさん。リズの事、よろしくお願いします。」

「はい、お任せ下さい。リズちゃん、用意は良いかな?」

「はい、大丈夫ですわ!」


リズちゃんはスモールシールドを持ち、革装備で全身を覆っている。うん、準備万端って感じだな。


「ところでコウスケさん…。」

「どうしました?リックさん。」

「私の目がおかしくなってなければ、トレントが…。」

「はい、新しく家族になったトレントのピノです。ピノ、ご挨拶して。」

『ピュフォーピュイ。』

「『よろしくお願いします』だそうです。」

「は、はぁ…。こちらこそよろしくお願いします。」

「この事は秘密にしておいて下さいね。」

「言いふらす様な内容ではありませんが…、話しても誰も信じないと思いますよ?」

「まぁ、念のためですね。」


リズちゃんとキャロに案内してもらい、北地区の空き地に着いた。


「ここだよ、パパ!」

「わかった。」


 各種スキルを併用して索敵をすると、地中にグリードホーネットが大量にいた。これは300匹以上いるんじゃないか?


「かなりデカい巣だな。よく今まで見つからなかったもんだ。リズちゃん、キャロ、これは本当にお手柄だぞ。これから駆除するから、少し離れた所で固まっていて。キャロはグリードホーネットの気配を警戒することに意識をおいてね。ピノ、皆の事を頼むぞ。」

「はい、パパ!」

『ビュイ!』


気合い十分らしい。


キャロに案内して貰った穴からスキルで覗くと、グリードホーネットが寿司詰め状態になって寝ている。更に奥には大量に蜜蜂の巣がある。これは運がいいな。


『"アイスコフィン"』


穴の中へ冷気がどんどん落ちていく。巣がでかいので、1発では冷気が行き渡らないだろうから、5発ほど連発して様子を見ている。


「おじ様、終わりましたの?」

「かなりの数は駆除したとは思うけど、全部駆除できたかどうかはこれから確認するよ。」


 範囲化とアイテムボックスを発動させて、巣の中のグリードホーネットや蜂蜜を収納していく。アイテムボックスには物しか入らないので、生きているグリードホーネットがいれば巣の中に残るだろう。


 どうやらグリードホーネットの生き残りは居ないようだ。蜂蜜も全部回収した。蜂蜜の分離方法は分かるけど、蜜蝋の作り方はどうだったかな?1度動画サイトで見た事はあるが、なんか火にかけていたって程度の記憶しかない。

ちなみに収穫は以下の通りである。


グリードホーネット×388

クイーンホーネット×1

蜜蜂の巣×21


 やっぱり女王蜂が居たんだな。このまま増えていって、蜂蜜が足りなくなっていたらと思うとゾッとする。

 それにしても、確かにあんなデカい蜂を養うには大量に蜂蜜がいるだろうが、よくもまぁこれ程大量の蜜蜂を街まで連行してきたものだ。街の中でこれなら森のコロニーはどんな規模なんだ?


「リズちゃん、レベルはいくつまで上がってる?」


 解析でも見るつもりであるが、ステータスは本来本人にしか分からないモノなので、アリバイ作りの為に聞いておく。


「はい、おじ様。レベル26になりましたわ。わっ!魔力練度以外が凄く上昇していますわ!」

「おお、いきなりレベル26かい。リズちゃんは才能あるね。」

「ありがとうございます!おじ様!」


才能限界がレベル20未満の人も珍しくないらしいからなぁ…。


『"解析"』


リズ・アルビッツ

種族   人族

位階   26(31)

生命力  2210(C)

魔力量  592(C)

力    991(C)

素早さ  1105(B)

魔力練度 69(B)

【アクティブスキル】

・剣術Lv.1

・魔釖術Lv.1

【パッシブスキル】

・なし

【称号】

・なし

【加護】

・なし

【成長タイプ】

・剣士


うん、前のステータスを知らないから何とも言えないが、レベルが大幅に上がっているので、魔力量も劇的に上がったのだろう。


「リズちゃんはこれ以後は魔釖術と剣術を中心に訓練すれば良いよ。俺が剣術を教えてあげれれば良かったんだが、実は俺剣術はサッパリなんだ。」

「そんなにお強いのにですの?」

「俺は技術ではなく魔力量でゴリ押ししているだけだからね。リズちゃんには剣士としての才能があると思う。だから、魔釖術だけでなく剣術も磨けば、対処出来ない危険なんてそうそう無いと思うよ。」

「わかりましたわ!」

「パパ、私は?」

「キャロは弓術士に適正があるよ。他については家に帰ってからね。」

「うーん、分かった…。」



 リックさんのお店に戻ると、リックさんとレリアさんが店の前で帰りを待っていた。


「リズっ!怪我は無かったかい!?」

「大丈夫ですわ、お父様!おじ様のお陰で、安全かつ貴重な体験ができましたわ!」

「コウスケさん、なんとお礼を言えば良いのか…。」

「頭を上げてください、リックさん。私としてはリックさんに恩返しできる機会を頂いて、有り難いくらいなんですから。それよりも例の物が手に入りました。瓶詰めしたら持ってきますね。」

「えっ!そうなんですか!?」

「街中に作ったとは思えない程大きな巣だったので、大量に抱え込んでいました。リズちゃんが見つけて無ければ、いずれ大惨事になっていたかもしれません。後で褒めてあげて下さいね。」

「はい、わかりました。」

「巣の外に出ていたグリードホーネットが戻って来るかもしれないので、暫く定期的に様子を見る必要があるとは思いますが、そのうち基礎魔法で埋め立てた方が良いかもしれませんね。それについても私が受け持ちますよ。アフターフォローは重要ですからね。」

「コウスケさん…、重ね重ねすみません。」

「それと、リズちゃん。」

「はい!何でしょうか、おじ様?」

「急激にレベルアップしているから、力加減に気をつけてね。普通に生活する分には大丈夫だけど、力を込めた場合は以前とは段違いの出力になるからね。」

「そうなんですの?あまり実感が沸かないのですが…。」

「うん、だから無自覚に物を破壊してしまうかもしれない。物なら壊れても直せば良いけど、対象が人や生き物だと、それはとても危険なことだよ。」

「……申し訳ございません、考えが至りませんでしたわ。」

「いや、分かってくれて、ありがとう。慣れるまでは少し大変かもしれないけど、その内無意識に力を制御出来るようになるから心配しなくていいよ。」

「はい、気をつけますわ!」



リックさん一家と別れ、サカイ一家で帰路につく。キャロがとても眠そうに目を擦っている。まぁ、小さい子が2時起きだったんだ、無理もない。


「キャロ、パパの背中に乗りなさい。」

「でも帰ったら私のステータス教えてくれるんでしょ?」

「眠い時にやっても仕方ないから、寝て起きたらね。」

「う〜。わかった…。」


腰を下げてキャロに背中を向けると、モゾモゾと乗っかってきた。あ、もう寝息が聞こえてきている。相当我慢していたんだな。

 ピノはグリードホーネットを討伐し終えた時点で異空間に入って貰っているので、今はコリーナと2人きりみたいなものだ。


「お疲れ様、コリーナ。」

「いいえ、私はついて来ただけなので全く。それよりもあなたの方がお疲れでは?」

「いや、体力には多少自信があるからね。」

「実は私もレベルアップで体力には少々自信ができまして…、ふふふ、お試しになりませんか?」


ネコミミサキュバス様の目が妖しく光る。でも残念ながら家に帰ったらやる事があるんだよなぁ…。


「ごめんな、コリーナ。帰ったらやる事があるんだよ。」


コリーナは『私ショックです!』という顔をしている。


「私ショックですっ!」

「あ、本当に言った。」

「う〜、今日はまだシテません…。」

「俺も残念なんだけどね、キャロが起きるまでにキャロとリズちゃんの訓練用の武器を作っておこうかなって。多分、今日もリズちゃんと遊びという名の訓練をするんだろうし…。」


 不満そうなコリーナをスキンシップで宥めながら帰宅した。モフモフ。

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