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第4話 解析スキル(1)

 いつもの早朝パターンであるクリーンとフレッシュのコンボをかまして寝室に戻り、何食わぬ顔で朝食を食べる。前までは偶に寝坊したりしたが、今は必ず起きるようにしている。なぜなら先日キャロがベッドに居ない俺達を探して、


『パパ〜、お母さ〜ん。どこにいるの〜。』


と泣きながら居間を彷徨っていたのを見てしまったからだ。本気で血の気が引いた。もう、死にたくなったよ、マジで…。

 それからは早朝は絶対に寝過さないように注意していたが、不安になったキャロが夜中に起きて、2階まで探しに来ていた事に気が付かなかった。


『パパとお母さんはホントは仲良いんだよね?パパはお母さんを虐めてないよね?』


と、半泣きで言われた時はアレなところを見られてしまったのかと思考が完全にフリーズした。解凍後、どう言い訳しようか等と考えていたが、コリーナが上手く説明してくれて事なきを得た。


『パパとお母さんは夜に特訓しているのよ。』


 この言い訳は上手いのか?プロレスごっこと同レベルなんだが…。しかし、俺にしても良い言い訳が思いつかないし、キャロが納得したのならそれが全てである。ついでに言うと、朝に寝室に居ない時は、夜の特訓が長引いてそのまま寝てしまったという設定にしたらしい。まぁ、間違ってはいないが…。


 書斎と化した宿の1室で解析の考察をする。鑑定から派生したので、上位スキルなのは間違いないだろう。問題は使い方だ。その辺の家具やら何やらに解析をかけても、凄い勢いで魔力を消費するだけで、内容は鑑定と変らない。異常な魔力消費量なので、何らかの違いはあるのだろうが、それが何なのかサッパリ分からない…。


「あ"あ"あ"、わからんっ!!」

「パパ、どうしたの?」


魂の雄叫びを上げていると、キャロが部屋に入ってきた。


「あれ?今日はリズちゃんと遊ぶ約束をしているんじゃなかったのかい?」

「もうお昼ごはんの時間だから1度戻って来たの!お昼ごはんの後でまたリズちゃんと遊ぶんだ!」

「そっか、それで呼びに来てくれたんだね。ありがとう、キャロ。ところでリズちゃんとは何をして遊んでるの?」

「冒険者ごっこ!」


 ガーン、ユニオンごっこじゃ無いのか…。パパと一緒にお仕事行けるようになりたいって言ってたのに…。まぁ、ごっこ遊びにユニオンの依頼は合わないだろうから、仕方ないよなぁ。


「大丈夫だよ、パパ!わたし将来はパパと一緒にお仕事するんだから、冒険者は一時的な腰掛けなのっ!」


 顔に出ていたのか、それともニオイがしたのか…。そんなに分かり易いのかね?

 ところでホント何処でそんな言葉を覚えてくるんだろうか…。これに関してはリックさんに全面同意である。まぁ、1つ言えることは、


「冒険者ギルドとユニオンは掛け持ち出来ないから気を付けるんだよ?」

「うん、分かった!」


 あんまり危ない事して欲しくないんだけど、魔物や魔族がウロチョロしている世界だからなぁ…。ある程度の武力は身を守るために必要だ。

 別に将来はなりたいものに成れば良いと思う。別にユニオンに所属しなくて宿屋の女将を継いでも一緒に仕事はできるんだし。



『そういえば昨日はキャロのステータスをチェックしてなかったな。』


 キャロのステータスをチェックしてみようかと思い、鑑定を発動しようかと思ったが、上位スキルである解析にしてみようかと思い立った。特に理由は無いが、解析の考察に行き詰まっていたし、キャロのステータスは細かくチェックしないと適切な指導が出来ないかもしれないからな!


『"解析"』


キャロ・サカイ

種族   猫獣人族

位階   7(38)

生命力  377(B+1)

魔力量  38(F+1)

力    41(D+1)

素早さ  214(S+1)

魔力練度 62(C+1)

【アクティブスキル】

・忍び足Lv.2

・遠視Lv.2

【パッシブスキル】

・超反応Lv.1

・暗視Lv.5

【称号】

・異世界転移者の娘

【加護】

・なし

【成長タイプ】

・弓術士

・盗賊


えっ、何これ?ステータスの横に初めて見る記号が…。それに成長タイプだって?これも鑑定では出なかった項目だ。


「パパー、早くご飯にしようよ。お母さん待ってるよ?」

「ちょっ、ちょっとだけ待ってくれるかい、キャロ。」

「むぅ…、お腹空いてるからちょっとだけだよ。」


 位階の隣に書いてある数字はまさか成長限界か?ステータスの隣に出ている記号は何となく分かる、恐らくは成長の伸び率とかだろう。しかし、隣のプラスと数値は何を表しているんだ?それに成長タイプだが、何に影響を与えるものなのか…。ステータス?それともスキル?


『駄目だ、わからん…。』


と思ったが、いつもの癖で"分からん時の鑑定先生"を発動してしまった。


【成長タイプ】

職種に関係するスキルを習得しやすくなる。


「うぇっ!?」

「パパ?」

「い、いや、何でもないよ。待たせたね、ご飯に行こうか。」

「うん!」


まさかステータスを更に鑑定できるとは…。


 昼食後、研究したい欲を抑えながら、先ずはユニオンに顔を出す。出来る男というものは大黒柱として収入を堅持しなければならない。


「こんにちは〜。」

「いらっしゃいませ、コウスケ様。」


 何かが後ろから抱きついてきた。というか脚も絡めて巻き付いて来た。声からしてファラだろう。


「ファラ!お前背後から気配消して近づくなよ!」


コイツ絶対に気配消すスキル持ってるだろ!


「お断りいたします。これは既に私のライフワークですので。」

「嫌なライフワークだな、オイ。」

「私はとても楽しんでおりますが?」

「俺にとってだよ!!」

「そうですか。」

「それだけ!?ねぇ、それだけなの!?」

「ふふふ、コウスケ様だって分かっていらっしゃる癖に…。」

「何を……。」


なんか抱きついた状態でクネクネするファラ。色々当たってるから止めて欲しいんだが。


「あ・て・て・ん・の・よっ!」

「分かっとるわっ!!こんなあからさまにやられて気付かない方がどうかしとるわっ!!」

「まぁ…、という事は遂に私を受け入れてくださるのですね!」

「何故そうなる…。」

「ほら、口ではイロイロ言いながらも身体は素直ですよ、ふふふ…。」

「もうお前キャラがブレブレじゃねーか…。しかも人の話聞いてないし。」


おい、ヨダレ拭けや。背中に付くだろうが!


「で、いい加減離して欲しいんだが…。」

「もうチョット!もうチョットだけでいいですから!絶対に入れませんから!先っぽだけですからっ!」

「先っぽ入ってんじゃねーかよ!…お前さぁ、女がやったからといって、セクハラにならない訳じゃないんだぞ…。」

「でも女から襲えば◯姦罪は適用されません!」

「それ以上はマジでヤメロ!それと強制わいせつ罪は成立するからな!」


 この国の法律、奴隷制度や貴族制関連以外はいらんとこまで日本に似てるんだよなぁ…。


「で、私に会いに来て頂いた以外の要件は何でしょうか?」

「いや、そもそもお前に会いに来た訳じゃないからな。薬草束の納品だからな。」

「ええ、ええ、良く存じ上げておりますとも。皆まで言う必要はありませんよ!」

「話が進まないから、とりあえず薬草束を受け取ってくれ…。」

「あら、今日はいつもより覇気が足りませんね。」

「ちょっと魔力を使いすぎてな。」

「確かにそのような感じがいたしますね。」

「そんなに顔に出てるか?」

「いえ、魔力が何時もより大分減っているなという程度しかわかりません。」

「いや、そっちの方が凄くないか?」

「そうでしょうか?あまり役に立った記憶は無いのですか…。」


 こりゃ何らかのスキルを持ってるな。魔力探知系のスキルなら、鑑定を使ったらバレる可能性がある。


「ジッと見つめられると流石の私でも少々照れてしまうのですが…。」

「ああ悪い、考え事をしてた。」

「私の事ですか!?」

「間違ってはいないけど、誤解を招く表現を止めろ。」

「これはもう…、ふふふふふふふふふ…。」

「駄目だ、聞いてない…。」

「奥様にご挨拶に行かなければ!『新しい愛妾のファラでございます。』と!」

「新しい愛妾って何だ!俺は浮気なんかしたこと無いぞ!!」

「私の脳内では8人目ですっ!」

「お前の脳内かよ!そんでもって愛妾多いな!?」

「いえ、養えるなら問題ありません。」

「問題しかないわ!そして急に冷静になるなよ、ビックリするから…。」


 10万ギルを受け取って家に帰る。コリーナ拗ねてるだろうなぁ…。もし今は拗ねていなくても、俺が帰った時点で拗ねるのは間違いないだろう。なんせ油断したとはいえ全体にファラのニオイをつけられたのだから…。


「はぁ、何て説明すれば良いのやら…。」

「そのままを、ありのままを、事実だけお話し頂ければ良いのですよ?あなた…。」

「うっ!?」


 背後からコリーナの声が聞こえてきた。今日は頻繁に後ろを取られるな…。


「コ、コリーナ!聞いてくれ!」

「いえ。」

「…えっ!?」

「言い訳など些末な事です。」

「あ、えっ、コリーナ…さん?」


 コリーナが俺の手を引っ張りながら2階の書斎に入る。


「そんな事はどうでも良いのです!!それよりマーキングを!!今すぐにマーキングをせねばなりません!!あの雌豚のニオイを私のニオイで上書きするのです!!」

「今から!?コリーナ、宿の受付はどうするの!?」

「ウチは素泊りなのでどうにでもなります!!」

「キャロも出掛けてるからどうにもならないよっ!?」

「ならば宿なんてどうでも良いです!!今すぐあなたにマーキングする方が遥かに重要です!!」

「ちょっ、コリー…。」



 数時間後、コリーナは非常に良い笑顔で書斎を出ていった。ああ、そういえばもうすぐ夕食の時間だな…。

 解析スキルの考察は明日で良いか…。

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