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異世界で再就職する羽目になったけど、潜水艦乗りは潰しが効かなくて困ってます。  作者: はんちょう
第3章 日雇労働者としての再出発
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第22話 仲間の捜索

 夜はコリーナさん、キャロちゃんと一緒に3人川の字で寝た。コリーナさんは、


『帰るまでおあずけです。』


と言った手前、襲いかかってくる事は無かったが、俺からなし崩しにして欲しかったのだろう、身体を押し付けて全身を弄られた。それでも手を出さないでいると拗ねて寝てしまったが…。帰ってからの楽しみだしな。スンゴイ事するって言ったし。

 この幸せな生活を続けるために、必ず無事に帰らなければならない。


 朝、コリーナさんが作ってくれた大量の食事をアイテムボックスに仕舞う。コリーナさんは凄く驚いていたが、特殊な魔法なので秘密にしてもらうように言っておいた。キャロちゃんはまだ小さいので、ちょっとした事から情報が漏れるかもしれない。俺が貴族に目を付けられていることを説明し、2人の安全のため、キャロちゃんにも秘密にしておいてもらった。


「あっ、忘れてた!」

「何をですか?イチャイチャですか?」


違うぞ、それは帰ってから存分にする予定だ。


「昨日の報酬だよ、はい。」


10万ギルを全て渡す。雑貨屋で買物した残りの500ギルも渡して良いのだが、日本での癖なのか、全くお金を持たずに外出する事に不安を覚える。行先は魔境なので、使う所は無いのだが…。


「…あなた、自分のお金は持っているのですか?」

「行先が魔境だからね、あまり必要ないから。でもお小遣い程度なら持ってるよ。」

「せめて1万ギルは持っていって下さい。あまり人族には知られていませんし、私も詳しい位置は知りませんが、森の中には獣人の集落が存在しますので。」

「えっ!?そうなの?」

「はい。昔、人族と共には住めないという獣人が集まって作った集落です。今はそれ程排他的では無いと聞いた事があります。」

「そっか、じゃあ1万ギルだけ受け取っておくね。」

「宿は無いと思いますが、通貨は使用出来るはずなので、謝礼を払えば家に泊めてくれる人もいると思います。」

「わかった。ありがとう、コリーナ。なるべく早く帰るからね。」

「はい、お待ちしてますね。」


コリーナを抱き締める。


「パパ!私も!」

「もちろんだよ、キャロ。」


本当に幸せだ。救助を待っているであろう仲間に申し訳ない気持ちになる。なるべく急ぐから赦して欲しい。


「行ってきます!」

「行ってらっしゃい、あなた。」

「行ってらっしゃい、パパ!」



 ユニオンには昨日報告してあるので直接衛門に向かう。


「おう、コウスケ、指名依頼大変だったな!」

「本当ですよ…。何か怒らせるような真似をした覚えは無いんですが…。」

「…ここだけの話、貴族なんてあんなもんさ。」

「そうなんですか?」

「ああ、貴族の専属になって収入が減った奴の話を聞くからな。」

「はぁ…。」


本当に禄なことしないな、貴族って。ノブレスオブリージュって知ってるか?


「ラルバさん、ちょっと遠くまで遠征するので何日か空けますね。」

「ん?何処に行くんだ?」

「色々な場所をふらつく予定なので。ただし2週間を超えそうなら1度帰って来ようとおもいます。」

「隣街にでも行くのか?」

「いえ、森の周辺の調査ですね。個人的な理由ですが、調べたい事があるので…。」

「わかった、詳しくは聞かない方が良さそうだな。」

「はい、すみません…。」

「いいさ、だが無事に帰ってこいよ。」

「はい、ありがとうございます。」


行先を誤魔化す為に一旦南に下り、街から見えなくなった所で街道を逸れ森に入った。

 方位磁石が雑貨屋に置いてあったので買ったが、糸で磁石を吊るすタイプなので、正確な方位は期待できない。参考にする程度だろうが、有るのと無いのとでは大違いである。

 魔釖術の移動速度から考えると、ハイオークと遭遇した地点まで北東に数時間といったところだろう。


 数時間移動した所で休憩を入れる。体感的にはこの位の距離だったと思うが、何せ必死に逃げたので自信がない。加えて逃げた方向もざっくりなので、少し方位がずれた段階でかなり距離がずれている可能性が高い。

 ただ、ハイオークに追い立てられるまでは南西に向かって進んでいたのは間違いないので、ハイオークとの遭遇地点さえ割出せば潜水艦を見つけれる可能性は低くないはずだ。


 魔釖術は使用せずに、範囲化スキルと鑑定を併せて広範囲を捜索する。何人かのアイテムボックスの中味がぶち撒かれているので、日本から持ってきたアイテムが大量にあれば、そこがハイオークとの遭遇地点である可能性は高い。

 一定方向に数時間捜索してベースキャンプに戻る事を繰り返して行けばかなりの範囲を調べる事が出来るだろう。

 捜索エリアを16方位に分け、記録を取りながら捜索する。1方向の捜索時間を4時間に設定し捜索を開始した。最初の捜索エリアである『北』は何も見つける事が出来なかったが、日が傾いてきたので魔釖術でベースキャンプまで戻った。


『明日はどの方向から捜索すべきか…。』


 魔釖術で斜面に掘った洞窟内でコリーナさんに大量に作ってもらった料理をつつきながら明日以降の予定を立てる。


『南西方向は最後に捜索するとして、問題は何れの方向にも見つけられなかった場合だな。』


中継地点を設定できなければ潜水艦を見つける可能性は極めて低いだろう。だが良いアイデアが浮かばない。


『捜索に進展が見られなければその時に考えよう。』



 成果のないまま更に5日が過ぎた。現在探索した方位は11方位である。


『残りは5方向…。各捜索方位に距離を延長しても未捜索エリアが拡大するだけだ…。』


捜索が終わった方位にベースキャンプを移動して、そこを中心に同様の捜索をするのが現実的ではあるが、どの方向に捜索の手を伸ばすのか…。分担できれば話が早いのだが、1人での捜索は時間がかかり過ぎる。


『"鑑定"』


コウスケ・サカイ

種族   人族

位階   27

生命力  2845

魔力量  187000

力    1020

素早さ  812

魔力練度 42000

【アクティブスキル】

・魔釖術Lv.MAX

・鑑定Lv.MAX

・解析

・アイテムボックス

・警戒Lv.7

・遠視Lv.5

・高速思考Lv.6

・誘導Lv.3

・範囲化Lv.7

【パッシブスキル】

・超反応Lv.6

・並列思考Lv.3

・睡眠耐性Lv.4

・病気耐性Lv.2

・精神耐性Lv.2

・疲労耐性Lv.2

・暗視Lv.5

【称号】

・異世界転移者

・コリーナは俺の嫁(ほぼ確定)

【加護】

・なし


 この5日間は捜索にスキルをずっと使っていたため、魔力量と魔力練度が完全に化物と化した。さらに関係したスキルレベルが軒並み上がり、魔釖術と鑑定に至っては上限まで達した。そして新しいスキルも生えていた。並列思考は鑑定を乱用したことで脳内の情報を処理するために発生したスキルと思われる。解析は鑑定のレベルがMAXになった後、いつの間にか生えていた。恐らく鑑定の上位スキルだろうが、今は分析している余裕はない。

 明日は捜索を開始して7日目…、そろそろ次の方針を決定しておかなければ…。


 午前中、西南西方向に進みながら慣れた調子で鑑定を範囲拡大しながら捜索していたところ、無意識に処理している情報の中に違和感があった。立ち止まり再度鑑定をかけると【破れた布地】という項目があった。こんな森の中まで人が来るとも考え難い…。布地を見つけた地点まで行き、鑑定をかけると武器弾薬や艦から持ち出した物品が大量に見付かった。


「ここだ!」


 排薬莢が大量に落ちていたので、ここで組織的な戦闘があったのは間違いない。

 遺体や遺品になりそうな物は見つからなかった。かなりの人数が撤退に成功したのだろう。


『ここを基点にして北東に向かえば潜水艦を見つける事ができるに違いない!』


ベースキャンプには荷物を置かず、場所を間違えない様に目印をしている程度である。放置しても問題無いだろう。

 ハイオークに遭遇した地点を新しい基点に設定し、次来た時に見つけ易い様に広範囲に排薬莢を巻き、中心に銃剣を立て隠す。これで方位さえ合っていれば、基点が分からなくなる事は無いだろう。

 ここからは北東を目指して進むだけだ。中継地点を捜索する必要が無いため、魔釖術を使用してただ進む。潜水艦までの距離は魔釖術で約半日といったところだろう。


 北東に進むに連れてグレイウルフやゴブリンがやたら増えてきた。そのうちオークも混ざりだした。潜水艦を脱出した時はハイオークに遭遇するまで精々スライムに遭遇する程度だったのに、明らかに様態が変化している。魔物の密度も異常だ。

 すれ違いざまに魔物を殲滅しながら進むと、スキルで強化した視界の遠くに潜水艦が見えてきた。その周りに魔物が群がっていのが見える。

 近づくに連れて、魔物が【ナニ】に群がっているのかを認識できた。


「やめろぉっ!!!」


 魔力を伸ばした魔釖術で大半の魔物達を横凪にし、姿勢が低くて当たらなかった小型の魔物を順次殲滅していく。周辺の魔物を殺しきった頃には誰も動く者は居なかった。喰われてバラバラにされた乗員の姿も多い。


「…だれ、か、いきて、るか?」


弱々しい声が聞こえたので、声がした方向を振り向くと、一緒に脱出したはずの機関長が倒れていた。


「機関長!!機関士です!!」

「き、かんし?」

「はい、街を見つけましたので救助に来ました!」

「そうか、オ、レはもう、ダメ、だ。たすか、りそうな、ヤツをた、すけてくれ…。」


機関長は左腕がなく、内臓がはみ出ている。間違いなく助からない。


「すみません、自分がもっと早く…。」

「き、かんし、オレ、に、かいしゃく、を…。イタ、イんだ…。」

「了解しました、後のことはお任せください。」

「あり、がとう…。」


魔釖術で機関長の首を落した。下手に拳銃を使って失敗するより、確実に楽にしてあげられると思ったからだ。

 周りを改めて見回す。生きている者は誰も居ない。せめて1日早ければここに居る大半の人間が生きていただろうと思うと、罪悪感に押し潰されそうになる。


「誰か1人でも生きている者はいないのか…。」


艦内の捜索をしたが、重傷を負ったと思われる乗員数人が息絶えているのみだった。艦長室を覗くと、両手と片足の無い艦長がベッドで息絶えていた。艦長室の机には部隊解散後から3日前までの記録が日記形式で記されていた。

 艦長の記録によると、今から5日前、魔物が増え始めた。調べてみると近くの洞穴から魔物が湧き出していたとのこと。3日前の『俺も調査に向かう』という記録を最後に白紙となっている。恐らく調査で重傷を負い、そのまま亡くなったのだろう。


 乗員の遺体を集めて土葬にする。本当は火葬にしたかったが、燃やす薪や燃料も無いし、森の中で火を使うのも不味い。

 遺体を埋葬していると、共に脱出したはずの乗員も多く見られた。恐らくは機関長の指揮で戻ってきたのだろう。


 誰も助けられなかった。激しい無力感に襲われるが、1つやっておかないとならない事がある。魔物が湧いたという洞穴をぶっ潰してやらないと気がすまない。


『明日洞穴を潰しにいこう。』


乗員の敵討ちを胸に、第3士官寝室の自分のベッドで寝た。

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