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異世界で再就職する羽目になったけど、潜水艦乗りは潰しが効かなくて困ってます。  作者: はんちょう
第3章 日雇労働者としての再出発
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第18話 避けてる相手には絡まれる

『どうしてこうなった…。』


 抱えそうになる頭を気合で支える。なので苦々しい表情を隠せないのは勘弁して欲しい。


「本当についてくるんですか?」

「当たり前です!貴方がお嬢様に虚偽の報告をするかもしれないじゃないですか!」

「……だったら何で俺を雇うんですか?それにステイン隊長も居るじゃないですか。」

「ステイン隊長はお嬢様の護衛に忙しいのです!貴方みたいな日雇いの暇人と同列に語らないで下さい!」


このクソアマを森に放置して帰って良いかな?


「何かいやらしい事を考えましたね!?」


クマのエサにしてやろうかとは考えました。


「お嬢様はお美しいのでつい惚れてしまう気持ちは分からないでもありませんが、私にまで色目を使うとは…。節操なしの色欲魔ですね!」

「………ホントなんでこんな事に…。」

「何か言いましたか!?」

「いや、何も…。」


それはユニオンで副マスターと話をしていた時まで遡る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で、スカウトの話は断るとして、代官様から別の依頼が来てるんだよ。」

「聞きたくないですが、何でしょう?」

「……、コウスケは一言多いんだよ。苛つくのは分かるけど、態度に出すんじゃないよ。アンタ1人なら何とかなるかもしれないけど、コリーナ達にも影響するかもしれないだろ。」

「そうでした…、すみません…。」

「ちゃんと我慢するんだよ。それで話を戻すけど、マーダーベアの討伐に行ってくれとの事なのさ。ハイオーク複数を単独で殲滅できるのならマーダーベアも倒せるだろうってね。」

「そんな無茶な…。マーダーベアは軍を派遣する様な魔物なんですよね?」

「単独だとハイオークとあまり変わらないけどね。マーダーベアは番でいる場合が多いんだよ。アンタが見たマーダーベアは何色だったんだい?」

「黒でしたけど何かあるんですか?」

「それはオスだね。マーダーベアのメスは茶色をしてるんだよ。ちなみにオスより一回り大きくて強いよ。」

「はぁ…、どうせ断れないんですよね。」

「まぁ、そうだね。騎士は派遣できないけど、後方支援要員は出すって言ってたよ。」

「どういった後方支援ですか?」

「倒した魔物の運搬と食事の提供、あと深夜帯の見張りだそうだよ。」

「えっ!?泊りがけですか!?」

「要するに『探し出して駆除するまで帰って来るな』って事だろうね。」

「………、それぞれ何人派出されるんですか?」

「…1人だそうだよ。行きは物資の運搬、そのまま見張りに使って、帰りは駆除した魔物の持ち帰りをさせるそうだ。」

「はあぁぁっ!?」


ふざけるのも大概にしろ!予算の圧縮によるしわ寄せをこちらに押し付けただけじゃないか!こんな事をしてれば早晩行き詰まるぞ。何処に優秀な要素があるんだよ!貴族ってのは優秀と評判でこの程度なのか?

 俺の怒りが伝わったのか、副マスターも少し申し訳無さそうにしている。


「せめて捜索要員を派遣するべきだと言ったんだがね、誰かの入れ知恵があったんだろう、アンタの能力があれば問題無いだろうって聞いてくれなくてね…。」


確かに昨日のお嬢様の態度と今日の理不尽な依頼には若干の乖離を感じる。だが違和感もある。お嬢様は何故このような内容で依頼を許可したのかだ。以前の資料を見ればどれ程の兵力が必要になるのか一目瞭然だと思うんだが…。


「…報酬は?」

「………怒るんじゃないよ?」

「そんな怒りそうな内容なんですか?」

「正直あり得ない内容だけど、ほぼ強制依頼だからね…。1日5000ギル、支払い日数は最大1週間。1週間を過ぎると日当は無しで食事の提供のみだよ。」

「バカにしてるんですか?」

「バカにしてるんだろうね。いったい誰の入れ知恵なんだか…。」


入れ知恵をされたにしてもこれは無い。辺境伯家の関係者の評価は下方修正だな。


「1つだけ条件を付けさせて下さい。」

「どんな内容だい?」

「辺境伯家から誰が派遣されて来るとしても、最上位者が俺で、命令権は俺にあるという確約です。それが確約されないと依頼は請けかねると伝えて下さい。」

「そんな事言っても良いのかい?」

「同行者の安全のためと言えば向こうも断れないでしょう。」

「わかった、…済まないね。」

「副マスターにはお世話になってますからね。精々貴族様には貸しを高く売りつけてやりましょう。」

「そこは任せときな。」

「ハハッ、それについては信頼してますよ!」

「口が減らないねぇ…。」

「ところで、いつから出発なんですか?」

「今日の10時に門の外に集合だそうだよ。」

「わかりました。」


コリーナさんとキャロちゃんに知らせてから出発しないと心配するだろうな…。下手したら何日か帰れない可能性があるし…。

一旦戻るとコリーナさんとキャロちゃんが奥から出てきた。

「あなた、どうされました?」

「ちょっと緊急の指名依頼を命じられてね…。もしかしたら数日間帰れなくなるかもしれないんだ。」

「えーっ、嫌だよパパー!」

「ごめんな、キャロ。なるべく早く戻って来るからな。」


キャロちゃんを抱き締めてなだめる。キャロちゃんがグズグズと泣いている。キャロちゃんを泣かすとかマジであいつら1度シメる!


「あなた…、大丈夫なのですか?」

「ああ、貴族からの指名依頼だから断れないってだけで、難易度に関しては大したことないよ。ただ、時間がかかるかもしれないってだけで。」

「気を付けて下さいね…。」

「パパ、早く帰ってきてね…。」

「ああ、直ぐに帰ってくるからね。」


2人を抱きしめる。コリーナ分とキャロ分を補給して置かないと発狂するかもしれないし。


 鼻をスンスン言わせてるキャロちゃんをまだまだナデナデし足りないが、時間も迫ってきたので断腸の思いで街の外に向かう。すると門の外で2人の男女が待っていた。2人?うち1人は例の狂犬侍女だった。


「遅いですよ!何をグズグズしていたのですか!」

「集合時間にはまだ余裕が有ったと認識していますが…。もっと早く来れなかったのは、先程依頼について聞いたばかりでしてね。急いで準備をしたのですが、この時間になってしまいました。」


『まだ集合時間になってないだろーが。そもそもお前らが変な時間に依頼出したのが原因だろうが。』


嫌味を込めて返事をする。


「だったら前日に確認しておきなさい!依頼を出したのは昨日の夜ですよ!十分な時間があったはずです!」


そんな時間に依頼出されても知るか、そんなモン。バカじゃねーの?だったら本人に伝えに来いよ。


「ところで同行者は1人と聞いていたのですが…。」

「辺境伯家兵士のドルフといいます。私が物資輸送、食事の準備及び深夜の見張りを担当させていただきます。とうぞよろしくお願いします。」

「ドルフさんですか、こちらこそよろしくお願いします。ところでファラさんは何故ここに?」


面倒くさいからサッサと帰れよ。


「貴方を監視する為に決まってるじゃないですか!」

「はぁ!?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


で冒頭の遣り取りに戻る。


「ファラさんは戦えるのですか?そうでないにしても自分の身は自分で守れますか?」

「バカにしないで下さい!護身術程度は見に付けています!」


いや、バカだろコイツ。魔物相手に護身術とか正気か?


「今すぐ帰れ。」


イライラが限界に近づいている。キレそうだ。


「依頼を受けるにあたって条件を提示していたはずだ。俺が最上位者で命令権を持つと。」

「監視の為に来ているのに帰るわけが無いでしょう!そもそも私は貴方の下に付く者ではありません!貴方は馬鹿なのですか?」

「馬鹿はお前だ。役立たずの足手まといだから帰れと言われないと分からないのか?」

「それは辺境伯家に対する冒涜ですか!?」

「いや、辺境伯家に関しては敬っている。俺が馬鹿にしているのはお前個人だ。そもそもお前を馬鹿にしたら辺境伯家を馬鹿にしてる事になるとは、随分な冗長だな。貴族様なら兎も角、お前も平民だろ。辺境伯家の威を借りて喚き散らすとは…、お前の方が不敬だぞ。」

「わ、私はお嬢様の為に…。」

「逆にお前の態度がお嬢様の評価を下げているのが分からないのか。専属侍女が聞いて呆れるな。」

「そ、そんな……。」

「ではドルフさん、行きましょうか。」

「…良いんですか、アレ。」

「知りませんよ、子守りをするつもりは無いので。」

「まぁ、そうですよね。」


ドルフさんはコイツのバカさ加減を理解してくれているのだろう。この人となら上手くやって行けそうだ。



「この付近の森の中でマーダーベアを見かけました。」

「意外に街に近いですね。」

「ドルフさん、森の手前にベースキャンプを設置しましょう。私は森の中でマーダーベアを捜索します。」

「しかしそれではコウスケさんの負担が…」

「いえ、森の中にはデビルスパイダーやグレイウルフが居るので、多少捜索距離が伸びてもベースキャンプの安全を優先しましょう。」

「ありがとうございます、助かります。」

「ドルフさん、これから直ぐに捜索に向かいますので、後のことよろしくお願いします。」

「わかりました、こちらの事はお任せ下さい。どうかお気をつけて。」


 魔釖術を使って森の中を駆け回る。せめて訓練をしないと全く割に合わない。合宿していると思うことにしよう。

 魔釖術を使用しての移動は、超反応と高速思考を併用しないと木にぶつかって大怪我しそうなので、アクティブスキルを2つ同時に使用する必要がある。遠視や警戒も同時に使用できれば捜索効率が格段に上がると思われるが、他のスキルを使用する余裕が全くない。

 半日近く魔釖術を使っていたため、魔釖術の移動にかなり慣れてきたし少し余裕が出てきたが、日が傾いてきたので時間的にベースキャンプへ戻るべきだろう。

 森から出るとドルフさんが食事の準備をしていた。テントも建てられているし、見張りに邪魔な草木も刈ってくれた様だ。優秀だわ、この人。


……………食事をして思い出した。そういえばこの世界の人族は味覚音痴に認定した事を。

 表情に出さない様に無理矢理かき込むと、


『後半見張りをします』


と告げてテントに入った。コリーナさんやキャロちゃんと会えないし、コリーナさんの美味しいご飯も食べれないし…、ホント最悪の依頼だな。俺に何か恨みでもあるのか?


 翌朝は早い時間から捜索を開始した。かなり早い時間から捜索を開始したので朝食は遠慮しておいた。ドルフさんは恐縮していたが、正直朝食を食べたくないという理由が半分以上なので、逆に申し訳ない。


 携帯食があるので、夕方まで捜索する事を伝えて森に入る。2日目にしてホームシックが凄い。日本にいた時は半年間出航してもならなかったのに…。


『これは一刻も早くマーダーベアの野郎を仕留めなければならない!』


でないと精神的に保たない。自分から選んだ依頼なら兎も角、こんなモチベーションの上がらない依頼なんぞにダラダラと時間はかけられない。


『多少無理してでも警戒スキルと遠視スキルを併用するか…。』


更に2つのスキルを使った瞬間、高速思考スキルが弱まったのを感じ、対応が遅れて木にぶつかった。咄嗟に魔力防御をしたので怪我などはなかったが、魔力防御が間に合わないと大怪我をしていただろう。しかし、それで引くわけにはいかない。家で美人な嫁と可愛い子供が待っているんだ!

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