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異世界で再就職する羽目になったけど、潜水艦乗りは潰しが効かなくて困ってます。  作者: はんちょう
第3章 日雇労働者としての再出発
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第5話 薬草採集

 副マスターオススメのユニオンにある薬草関係の本を手に取ってみた。


"副業に最適!ゴブリンでも出来る薬草採集"


『………、大丈夫かこの本?』


と、思った事もありました。いや、凄いわこの本。イラスト付で分かりやすく解説してあるし、各種薬草について何故この方法で採取する必要があるのか理由まで詳しく解説している。薬学で使う材料か錬金術で使う材料かで採集後の保管方法が異なるため、それぞれに応じた最適な保管方法の解説まで載っている。確かにこれを覚えれば薬草採集はお手の物だろう。


「まぁ、それでもゴブリンに出来るとは思えないがな…。」


と、独り言を零していると、副マスターが、


「何言ってんだい?出来るに決まってるだろ?」

「えっ?冗談ですよね?」

「冗談なもんかい!アンタ知らないのかい?上位種のファーマシーゴブリンなんかは製薬ができるから、下っ端のゴブリンを指導して薬草を集めさせるんだよ。」


ホントにゴブリンでも出来るのかよ…。異世界ナメてたつもりはなかったんだが、これは気を引き締める必要があるな。


「だから余り森深くに入ると薬草採集中のゴブリンに遭遇する確率が高くなるから気を付けるんだね。ゴブリンは仕事が丁寧だから、倒して背負カゴを奪えば中々実入りが良いんだけどね。」


……ゴブリンのイメージがガラガラと音をたてて崩れていく。あの見た目で仕事が丁寧なのかよ…。


「まぁ、読み終わったなら日が高い内に行ってくる事だね。装備も整えておきな。薬草採集するならせめて防具一式とナイフ位は持っていかないと危ないよ。」

「防具一式とナイフですね、分かりました。ちなみにお店は」

「さっき教えた宿の隣だよ。必要な店が集まるのは自然なことさね。」


灯……もう良いや。



 ユニオンを出て、先ずは宿を確保しよう。1週間が5日だそうだから、取り敢えず1週間で良いか。


「いらっしゃい!」


教えてもらった宿に入ると、トテトテと奥から出てきた10歳くらいの女の子が元気よく挨拶してくれたんだが、顔をみた瞬間思考が完全にフリーズしてしまった。


「お客さん?どうかしたの?」

「え、あ、いや、…何でも無いよ。お手伝いかい?偉いね。この宿は1泊いくらかな?」

「ご飯とお湯はついてないけど、1泊1000ギルですっ!」

「そうか、1週間お願い出来るかな?」

「うん!大丈夫だよ!えーっと、1週間が5日だから…。」

「5000ギルかい?」

「うん!きっとそう!おじさん頭良いね!」

「そうかい?ありがとうね。」

「ちょっと待ってね、もうすぐでお母さんが来るから。お金の受け取りはまだしちゃダメって言われてるの…。」


ショボーンと気落ちして色々と垂れている。気になる、すっごく気になる!


「あらあら、お待たせしましたお客様。」


先程言っていた、この子のお母さんだろうが、最初ほどの衝撃は無い。無いのだが、メチャクチャ美人なのには驚いた。


「5日の連泊をお願いします。」


銀貨5枚を渡しながら宿泊の予約をする。


「10日以上の連泊毎に500ギル割引させて頂いてますので、そちらもよろしくお願いします。キャロ、お客様にお食事等の説明をしてくれた?」

「うん!バッチリだよ!」

「本当に?」

「本当だよ!ちゃんと説明したもん!」

「ええ、分かりやすくしっかりした説明でしたよ。キャロちゃんって言うんだ、ありがとうね、キャロちゃん。」


頭を撫でると気持ち良さそうに目を細める。


「うん、お安い御用だよ!」

「じゃあキャロ、お客様を部屋にご案内してね。」

「はーい!おじさん、こっちだよ!」

「コラ!キャロ!お客様に失礼な事を言わないの!」

「いやいや、良いんですよ。じゃあ、キャロちゃん、お願いできるかな?」

「まかせて!おじさんの部屋は22号室だから階段上がって直ぐだよ!」


キャロちゃんに手を引かれながら階段を上っていき、部屋まで案内してもらった。


「この部屋だよ!はい、鍵!」

「ありがとね、キャロちゃん。」


お礼と称して頭を撫でると、やはり目を細めて気持ち良さそうにしている。

 一通り頭を撫でたあとキャロちゃんと別れて部屋に入る。


……はぁ、

……ふぅ、

……はぁ、

………………………


『キャロちゃんとキャロちゃんのお母さん…、猫耳ついてるーーーーー!!!流石は異世界、尋常じゃ無い!!!(?)なんか猫耳フッワフワだし!!やべー!犬派だと思ってたけど猫派なのかもしれん!』


落ち着くまでしばらく心の中で叫びまくった。



「ちょっと出てきますね、鍵の預かりをお願いします。宿に戻るのは夕食後の予定です。私はコウスケといいます、えーっと…。」

「申し遅れました、女将のコリーナと言います。ご丁寧にありがとうございます。」

「よろしくお願いします。では、行ってきます。」

「はい、お気をつけて。」



〜〜〜〜〜〜コリーナ視点〜〜〜〜〜〜


 私は素泊り専門の宿を営んでいます。主人とは死に別れたので、親一人子一人です。ユニオンの側にあるので、関係者が宿泊される事が多いです。それもあって、やや荒いお客様が多い傾向にあります。娘のキャロは最近お店を手伝ってくれる事が多く、成長している娘を見るのは嬉しいのですが、やはり気性の荒いお客様に絡まれないか心配の方が強いです。


 そんなある日、部屋の準備をしていると、キャロが接客している声が聞こえてきました。ちょっと心配ですが、先に部屋を整えて終えてから受付に行きますと、キャロが笑顔で接客しています。あの娘は少し人見知りなところがあるので、接客ではたどたどしい所があるのですが、凄くイキイキと接客しています。

 お客様の受付を済ませ、宿の説明をしたのかキャロに確認します。お客様に確認しますと、キャロはしっかりやってくれていた様です。


「ありがとうね、キャロちゃん。」


と、お客様がキャロの頭を撫でます。


『あら?』


キャロは知らない人に触られる事を酷く嫌がるのに、このお客様に撫でられると嬉しそうにしています。

 そういえば、このお客様は主人と雰囲気が似ている気がします。あの人も穏やかな人でしたから…。そう考えるとちょっと意識してしまいそうになりますね。いけない、いけない。


 少ししてキャロが戻ってきました。


「キャロ、あのお客様と何かあったの?」


やけに懐いているように見えるので、本人に聞いてみます。


「あのね、お母さん、あのおじさん、とっても良いニオイがするの!」


これは獣人独特の感性です。獣人は自分にとって良い人か悪い人かを先ずはニオイで判別します。確かにあのお客様は良い人そうなニオイがしていましたね…。


その後、『夕食を食べてから帰ります。』と、今後の予定を態々伝えて出掛けて行かれました。本当ならそんな事伝える必要は無いのでしょうけど、本当に丁寧な方です。あの方なら安心でしょう。滞在中だけでもキャロと仲良くして頂けないかしら?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 外に出るとキャロちゃんが宿の前を掃き掃除していた。


「お手伝い偉いね、キャロちゃん。」

「おじさん!どこ行くの?」

「お店で買物した後、お仕事で薬草を採ってくるんだよ。」

「そっか!気を付けてね!」

「ありがとう。行ってくるね。」

「行ってらっしゃい!」


ヤバい、ドチャクソ癒されるわ。



 雑貨屋でナイフと1番安いがそこそこ防御力がありそうな革製の防具一式を購入したら、8万ギルが吹っ飛んだ。マジか、何もしてないのに、2万くらいしか残ってないんだが…。外食すると1日の食費が600ギル前後になるから、稼げないと3週間ちょいしか保たない。ハチミツ売却金があったから何とかなってるけど、街に着の身着のまま流れ着いたらホームレス一直線で即日詰んでたぞ…。取り敢えず薬草採集で稼ぐしかない。


 門を通過しようと思ったらラルバさんを見かけた。そのまま通り過ぎるのも何なので話しかけた。


「ラルバさん、お疲れ様です。」

「おお、コウスケか。装備を購入したんだな。外に出るのか?」

「はい、薬草採集の依頼を受けましたので。」

「そうか、ゴブリンには気を付けろよ。」

「はい、ありがとうございます。行ってきます。」


ゴブリンの薬草採集って結構メジャーな知識なんだな…。


門から道沿いに30分ほど歩いた所に森があり、その辺りに薬草が良く生えているらしい。今回は薬師が作る薬の材料用なので、根を残して茎と葉だけ持ち帰れば良いらしく、根が残っているため、また直ぐに生えてくるそうだ。ただし形や色の似ている毒草も生えているため、中々難しく、常時依頼にしておかないと中々依頼を受ける人間がいないそうだ。


「まぁ、俺には関係ないけど。」


鑑定を駆使して薬草をガンガン集めていく。確か10本1束で500ギルだったか?毒草との区別さえつけばその辺にいっぱい生えてるのでかなり稼げれそうだ。

 昼に休憩を挟んで魔力が少なくなるまで薬草を集めたら11束採集する事ができた。今日はこれで止めとくか。

 それにしても早く終わってしまった。まだ14時になっていない。集合は17時に食堂だから、今から帰るとすると、依頼報告してもまだまだ時間が余ってしまう。

どうしようか考えていると、夜の見張り中に高須賀3層が、


『もうすぐ物に魔力を這わせる事が出来そうな感じがします!』


と言ってたのを思い出した。確かその時の魔力練度は62って言ってたな…。今の俺の魔力練度は41だ。薬草採集の合間に訓練すればそのうち出来るようになるかもしれないな…。よし、そうしよう!

 薬草の束をズタ袋に入れ、空き時間を魔力練度の訓練に充てた。

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