第15話 惨劇
「ひっっっ………!」
思わず悲鳴が溢れそうになったが、慌てて口を抑えて耐える。
駄目だ!絶対に勝てない!見付からない様に距離を取らなければ!
徐々に距離をとって離れたいが、現状気付かれている様子はないことと、音を立てて見つかってしまったら、間違いなく殺されてしまう恐怖が身体を強張らせて身を隠す事しか出来ない。
幸いな事に、ハイオーク達は俺に気が付かずに目の前を横切って進んでいった。
ハイオーク達の背中が見えるようになってから、視界から外さない様に機関長の元まで戻った。
「どうだった、機関士?」
「………駄目です、絶対に勝てません!直ぐにこの場を離れるべきです!」
「落ち着け!相手は何だ?」
「ハイオークとオークです!ハイオークのレベルは21、オークでもレベル12です!」
「なっ!?機関長、今すぐ離れましょう!」
「先ずは落ち着け!それから自分の分隊に戻って指揮を取れ!」
その時、急にオークの1体が此方を向いて騒ぎ出した。
見つかった!?しかし距離は最初よりも離れているぞ!?
混乱していると水雷長が、
「しまった!風向きかっ!」
「あっ!」
そうだ、オークといえばイノシシだ!匂いに敏感であっても不思議じゃない!
「各分隊散開して逃げろ!」
機関長が号令をかけるが、分隊員まで情報共有する時間が無かったためか、動きが鈍い。
「逃げるぞ!付いて来い!」
「機関士!どうしたんですか!?」
「良いから走れ!逃げ切ったら説明してやる!」
有無を言わさない俺の様子に状況が分からないなりに事の重大さを悟ったのか分隊員が付いてくる。
「他の分隊はどうするんですか!?」
「各分隊長の指示で撤退する!」
「合流は!?」
「今は無理だ!逃げ切る事だけ考えろ!」
離れた場所から銃声が聞こえてくる!
駄目だ!反撃する時間があるなら逃げろ!
間をおかずして悲鳴も聞こえてきた!
くそっっ、誰かやられた!
俺たちのレベルは1番高くても8だ。オーク1体相手でも分が悪い。戦闘にでもなろうものなら他のオークに追いつかれて蹂躙される。今は兎に角逃げるしか方法がない。
必死に逃げるが後ろから追いかけて来る気配がある。振り返るとハイオークだった。鑑定出来る距離ではないが、1度見たので覚えている。他のオーク達とは明らかに雰囲気が違った。
「くそっっ!最悪だっ!」
「機関士っ!?」
「何があっても絶対に止まるなよ!」
レベルだけで見れば直ぐに追いつかれる様な差だが、どうやらオーク自体はそれ程速く動けるモンスターではないらしい。しかし、レベル差は10以上あり、追いつかれてしまえばどうにもならない。
「ぎゃっ!」
振り返ると分隊員が1人捕まっていた。
「機関士!たすけ…」
バリッ
不愉快な音をたててそいつの顔が半分見えなくなった。
「あ…、あ…。」
「うゲェェェ…!」
さっきまで人だったモノを咀嚼音を鳴らしながら貪っている。
一瞬頭が白くなった。
『死んだらアイテムボックスの中身はぶちまけられるんだな…。』
とまるで他人事の様にその光景を見てしまった。
「岩本を放せー!!」
「やめろ!!北野!!」
ハッとして制止するが、止まらない。
北野士長は64式をフルオートで撃ち込むがハイオークは怯む様子がない。
ボォグゥ
北野士長が吹っ飛ばされる。
ああぁ…、ひと目で解る。あれは即死だ。
「反撃をするな、逃げろ!この間に距離を稼げ!」
「機関士!?アイツらを置いていくんですか!?」
「置いていく!!」
「機関士!!」
「うるさい!!!分かってる!その上での判断だ!!黙って従え!!」
「っ……………。」
「今は走れ!!文句は後にしろ!!」
ナニカを貪る様な音が聞こえてくるが、全てを無視して走り続ける。遠くの銃声も悲鳴もまだ聞こえてくる。
最悪だ!最悪だ!最悪だ!最悪だ!!脱出は間違いだったのか?しかしあの場に留まっていても未来はなかった!!
様子見してレベルアップをすれば良かったのか?しかしあのハイオーク相手だと多少のレベルアップなんて誤差だ!だが、このタイミングで艦を出発しなければアイツらは死ななかったかもしれないという考えを止めることが出来ない。
どうすれば良かった!?
どうすれば最善の結果を得ることができた!?
足りない酸素を必死に取り込みながら、今は兎にも角にも逃げる事しか出来なかった。




