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異世界で再就職する羽目になったけど、潜水艦乗りは潰しが効かなくて困ってます。  作者: はんちょう
第2章 後悔先に立たずとは言うけれど、予想外にも程がある。
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第9話 船務士ぶっ壊れ

 前回の探索メンバーに船務士と岩木3曹を加えて探索の続きを行うことになった。岩木3曹は同期だから誘い易いんだよね。勿論鑑定でチェック済み。


マコト・イワキ

種族   人族

位階   0

生命力  12

魔力量  7

力    4

素早さ  1

魔力練度 0

【アクティブスキル】

・槍術Lv.1

・アイテムボックス

【パッシブスキル】

・なし

【称号】

・異世界転移者

【加護】

・なし


岩木3曹は同期である他に、


『そういや銃剣道やってたなー』


と思ってメンバーに入れたけど、槍術を持っていた。槍か格闘か、まさかの剣術か?と悩ましいところではあったけど、槍扱いで良いみたいだな。

 1分隊の面子はレベル1になっているものの、パッシブスキルは全員無しだった。幹部には睡眠耐性が必ず付いてるのに…。あれ?可笑しいな…目から…汗が…。


「取り敢えず、前回と同様に山の尾根を目指す。途中でスライムを見つけた場合は、鑑定をするので直ぐに報告するように。スライムのステータスを確認後は、船務士及び岩木3曹の戦闘参加を判断するので勝手に攻撃を加えないこと。また、スライム以外の生物に遭遇した場合も同様とする。水雷長、他にありますか?」

「もう俺留守番で良くね?機関士が指揮官で良くね?」

「何も無しという事で。」

「うぉぉい!シカトかよ!」

「水雷長もレベルアップしてるんですから。貴重な戦力なんですから逃しませんよ。」

「だよなぁ、それはもう諦めた。仕方無い、行くか。」


 軽くブリーフィングをした後、探索時の隊形を決める。今回は水雷長及びレベル0の2人を中心に配置して探索をする。モンスターの存在が判明したため、水雷長は戦闘指揮に集中、レベル0の2人は念の為護衛する形にした。


「機関士!いました!スライムです!」


暫く探索すると探索メンバーの1人が凹みに収まっているスライムを発見した。事前に鑑定の射程距離は10m程度であることは調べてある。

スライムに意識を向けて鑑定をしてみると、


スライム

位階 :4

生命力:31

魔力量:2


あれっ…、情報量少ないぞ?

位階が4?生命力31?

ウチらより強くね?

スライムにも魔力あるの?

なんか想像してたスライムよりかなり強そうなんだが…。


「船務士、スライムの方がレベルもHPも俺達より高いんだけどさ。昔ゲームとかよくやってたから知識が偏っているかもしれないけど、俺にとってスライムは最初に出てくるザコ魔物という認識なんだよね。船務士にとってスライムはどういう認識?」

「確かスライムが強敵という設定も稀にあったと思いますが、基本はザコ魔物という認識です。機関士、スライムと我々のHPに何倍も差がありますか?」

「1.5倍程度だな。」

「ならザコ魔物という認識であっていると思います。」

「そうか、これでもザコなのか…。まぁ、俺たちのレベルが1なのも原因なんだろうけど…。取り敢えず凹みから出て来ないみたいだから、銃剣で攻撃してみるか。」

「大丈夫ですか?」

「ああ、鑑定かけながら攻撃してみるから周囲の警戒頼むわ。」

「了解しました。」


 なぜ鑑定をかけながら攻撃するのかといえば、どの位のダメージが入るのか確認するためだ。これが判れば安全マージンの取り方を考えることができるようになるかもしれない。

64式小銃を腰だめに構えて「はっ!」と気合を入れてスライムに突刺す。

攻撃後に鑑定をすると、


スライム

位階 :4

生命力:29

魔力量:2


 おいおい、スライム一匹倒すのに16回も全力攻撃しないと駄目なのか?小説なんかだと火に弱かったりするが、今ここで試す手立ては無い。

 俺がひたすらザックザック突き刺しているのを見て船務士も異常に気が付いたようだが何も言わない。

 結局倒し切る迄に合計18回も攻撃する必要があった。どうやら常に同じダメージを与えられる訳ではないようだ。

 攻撃する度に鑑定してみたが、鑑定は魔力を1消費するようで、全てのダメージを調べることはできなかったが、鑑定したダメージは全て1か2だった。2ダメージの方が割合としては多かったが、何の慰めにもならない。スライムは物理耐性とか持ってないのかな?持ってれば少しは慰めにもなるんだが。はぁぁ〜、ため息しか出んわ。

 一縷の望みをかけてステータスをチェックするとレベルは1のまま。だよな、知ってたよ。序盤中の序盤の更にザコだし。ド◯クエでも何匹か倒さないといけなかった気がする。

 船務士と岩木3曹のレベルが上がっていない。位階0であればスライム一匹でレベルアップすると思ったんだが…。戦闘に参加していなかったからか?それとも人数の問題?


 空気が重い。

 鑑定でスライムと表記された、RPGなどではお馴染みの最低レベルのザコ魔物が出現した事による、


『ここは比較的安全なエリアなのでは?』


という安堵がある一方、最低レベルのザコ魔物でさえ倒すのに結構苦労したという事実が否が応でもでも雰囲気を暗くする。

 普段、能天気だとか〇び太くんだとか言われている俺でも、かなり拙い事態になっている事が理解できた。しかし絶対に表に出す事はできない。例え初級幹部であっても指揮官であり、部下はどんな歴戦の猛者であっても、緊急事態においては必ず指揮官の顔色をうかがう。命令を受ける立場ではそれが自然な事であり、だからこそ指揮官は常に考え、判断し、その結果の責任を取らなければならない。怯えなどを表に出すと部下にも動揺が広がる。なんとか落ち着かなければパニックに陥る可能性もある。そうなれば生存は致命的だ。

こういう時は軽口をたたくに限る。せめて雰囲気位は軽くしないとメンタルが保たない。


「マジで異世界キツイわ、ゆとり世代なら保たんぞ、これ。」


長い沈黙に耐えられないといった雰囲気で、岩木3曹に話しかける。


「機関士、しっかり警戒して下さいよ…。」

「まぁまぁ、周囲には気を配ってるから良いじゃないの。」

「まったく…、まぁ、ゆとりといえば教育隊の新人ですかね。今は人手不足だから少しでも辞める人間減らそうとして、訓練が生温くなってるところもあるとか。仕方ない面もありますけど、何だか納得行かないですよね。」

「とても軍事教練とは思えないレベルだからなぁ…。」

「我々が訓練を受けてた頃は殴る蹴るが当たり前でしたからね。まぁ、自衛隊だからこんなもんだろうと特に気にしませんでしたが。」

「教育隊もそうだけど、最近は幹部候補生学校も酷いらしい。罰則の腕立て伏せをさせると親が怒鳴り込んてくるらしい。


『うちの子になんて酷いことをさせるんだ!』


と文句を言って来るってさ。更に酷いのが、候補生学校側が文句言われるのが嫌なのか、罰則での腕立て伏せをしなくなったらしい。あまり精神的に追い込むことも止めたそうだよ。その程度の鍛え方で部隊に行くと1年も保たないんじゃないかと心配になるよ。部隊には流石に親も助けに来れないだろうからなぁ。まぁ、俺等の上の世代は比較にならないほど酷かったそうだし…。先輩なんか航海中に上官への報告噛んだだけで海に投げ捨てられたらしいよ。今なら殺人未遂だな。」

「なんすかそれ、キ〇ガイじゃ無いですか…。」

「コンパスで手のひら刺されて風穴が開いた人もいたな。まぁ、それは裁判になったって聞いてるよ。」

「幹部って頭ヤバい人多いんですか?」

「今はそうでも無いけど、昔は結構いたらしい。部下から恨みを買い過ぎて、士官寝室のドアに防火オノが突き刺さってたなんてこともあったみたいだしなぁ。」

「今後は極力幹部に近付かないようにします。」

「まぁ、今は部下に手を出すと問題になるってんで、上司が部下を指導しなくなる傾向があるらしいけど…。」

「なんで指導しないんです?」

「だって、指導したとき余りに仕事ができなかったらムカつくじゃないか、そりゃ手の1つもでるわ。それなら最初から指導しない方が良いんじゃないかってね。中々賢明な判断じゃないかっ、ハハハハハハッ!」

「あらまっ…。」

「まぁ、流石に問題はあると思うが、上司にも部下にも言い分はあるのは理解できる。ただ、このままだと確実に組織に悪影響が出るだろうけどね。」

「ままなりませんね…。」

「そうだねぇ。まぁ、今は探索に集中しようじゃないか。」

「えぇぇ…、機関士が話振ってきたんじゃないですか…。」

「緊張がほぐれただろ?」

「……お気付きでしたか。」

「こんなんでも君達の上司だしね、部下の状態はなるべく注意を払うさ。少しは頼りになるだろう?」


ニヤリと笑いかけると、岩木3曹は苦笑で返してきた。それでも顔色は随分と良くなったようだ。背筋も伸びている。短時間ならまだしも、長時間の探索となると緊張しっぱなしでは身体が保たない。


 またスライムがいた。最初に鑑定してレベルが2である事を確認したので、いちいち毎回ダメージを鑑定せずに取り囲んで突く。

水雷長と岩木3曹が周辺警戒をしていが、船務士は…、お前無茶苦茶キラキラした目で眺めてんな。まぁ、2人が周辺警戒してるから良いけど、ちょっとは緊張感持てよ…。


「船務士、念押ししとくけど戦闘には参加するなよ、一応命令だからな。」


 恨めしそうな顔するなよ、船務士。お前の武器9mm拳銃だけだから。お前のステータスだとスライムと殴り合いしたら逆にぶっ殺されそうなんだよ。


 前回よりは少なかったが、10回弱突いたら溶けていった。やっぱり敵1体倒すのにこんなに手間がかかっているのはキツイ。どうにかならないものか…。

 全員のレベルを確認してみたが、水雷長と船務士のレベルが上がっていなかった。他のメンバーは全員上がっていたので、どうやらレベルアップが有効な人数は5人までらしい。船務士はブーブー文句を言っていたが、コレばっかりは仕方無いだろう。だって素手だし。あんまりブーブー言うから、


「スライムと素手でやり合ってみるか?」


と聞いてみたら、手が溶けたら嫌だからそれはしないとの事。えっ?溶けるの?と思ったが、ファンタジー的にはスライムは溶かして捕食するのか王道だから可能性はあるとのこと。最初に突撃してきたからド◯クエ的なスライムだと思い込んでいた。そういや目も口も無いわ。


「次のスライムを探すぞー。」

「「「「了解!」」」」

「えっ!?まだやんの?」

「アザーッス!流石機関士!マジ感謝!」


戦闘2回で帰るわけないじゃないですか、水雷長。そしてお前は何なんだ、船務士…。


「いたぞ!スライムだ!」


警戒していた隊員が叫びながら指差す方向に2匹のスライムがいた。そうだよな、複数いることもあるよな…。


直ぐに鑑定の射程に入ってステータスを確認する。


スライム

位階 :1

生命力:6

魔力量:1


スライム

位階 :1

生命力:7

魔力量:1


「レベルは共に1!今回は船務士も攻撃に加われ!周辺警戒は俺がやる!3人ずつで対処しろ!戦闘指揮は水雷長がお願いします!」

「俺がやんの…?まぁ、良いけど。」

「ヒャッハー!機関士アザス!ヤってやりますよ!」


だからお前は何なんだ、船務士…。


 レベルが低かったからか、特に何事もなくスライムを倒せたが、今回もドロップアイテム(?)は無かった。意外と落ちないのかね?


「なんでやねーーーーん!!!!!」


急に船務士が雄叫びを上げるもんだから思わずビクっとしてしまった。


「何だよ船務士!ビックリしたじゃねーか!」

「機関士!どーいう事なんですか!」

「だから何がだよ!」


コイツほんと異世界転移してからぶっ壊れ気味だよな…メンタルダウンか?


「上がってねーんですよ!」

「は?」

「だからレベルが上がってねーんですよ!」

「俺に言われても知らんわ!」


俺から借りた64式で戦闘に参加してスライム2匹倒したのに船務士のレベルが0のままだったらしい。岩木3曹はレベルアップしていた。もしかして、編成メンバーのレベルアップは完全にランダムか?だとしたら隠しステータスにLUKとかあるんじゃなかろうか。船務士は絶対に低いと思う…。

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