第8話 確定しちゃいました
目ん玉ひん剥いて凝視していたら、周りの人も異常に気付いたらしい。
「まさか…、出来たのか?」
「…はい、なんか出てます。」
取り敢えず士官室に常備してある自分のコップに意識を向けて唱えてみたのだが、
【マグカップ】
異世界の技術で作られたコップ。
と表示されている画面が出てきている。
ってか地球のこと異世界ってなっとるやんけ!異世界転移確定かよ!スライムだとかステータスとかでほぼ諦めていたけど、確定するとやっぱりガッカリだな…。
「ステンレス製のマグカップを鑑定しましたが、異世界の技術で作られたコップと出ています…。」
「やはり異世界か…、間違い無さそうだな…。まぁ、それは一旦置いておくとして、何故鑑定が発動したのかだな。レベルと関係があるのか?」
「それなら水雷長にもやってもらいましょう!」
「ええっ、俺も!?」
なんか鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしている。まぁ、鳩に豆鉄砲喰らわしたことないけど。
「なに恥ずかしがってんですか!検証ですよ、検証!大切な事です!」
「おい!機関士!てめぇ巫山戯んなよ!」
「巫山戯てなんかないッスよ!必要な検証ですよ!撮影は任せて下さいね!」
「……なんか機関士が生き生きしてる…。よっぽど道連れが出来てうれしかったらしいな。」
機関長が何か言ってるけど関係無い!CPOの皆が呆れた感じで見てる気がするけど、それも関係無い!無いったら無い!
「さぁさぁ水雷長!早く!早く!」
艦内に備えてある撮影機材を持出して構える。スマホと違って備品として登録された正規品の撮影機材だからな、永久保存版だ!日本に帰れたら上映会やったる!
「分かった!分かった!やるから!落ち着け!」
水雷長が“ステータス・ウィンドウ!”と唱えている。
あぁ…、他の人から見るとこんな感じなんだ。ちょっと勢いが足りないからかもしれないけど、結構間抜けな絵面だな…。更に言えば、ステータス画面が自分にしか見えてないから虚空をキョロキョロ眺めている様子がかなり痛々しい感じだ。
「艦長、私も位階が1でした。直接戦闘はしていないのですが。」
「もしかするとバックアップも含めて戦闘に参加した全ての人員が対象になるのかもな。まぁ、その検証は追々していこう。取り敢えず今は鑑定だな。」
「分かりました、“鑑定!”」
…………………?水雷長の反応が無いな?
「“鑑定!”」
あぁっ!これは何も起こらなかったな!水雷長渋ーい顔をした後に真っ赤になってぷるぷる震えてるし!(笑)
「機関士ー!なんも起こんねーじゃねーか!」
「ブフッ、す、水雷長っ!自分に言われてましても!(笑)」
ニヤニヤが止まらない!メッチャ嬉しい!
「バカ野郎っ!お前めっちゃ恥ずかしいじゃねーか!お前、本当に鑑定出来たんだろうな!?」
「出来ましたよ!ホントですって!」
そんな言い合いをしていたら船務士がボソッと
「機関士が自分鑑定してみたらどうなんですかね?」
って。
えっ?自分ってどうやって鑑定すんの?そもそもステータス見れるんじゃないの?って思ったものの、自分の手を見ながら“鑑定”って思い浮かべたら表示が出た。
つーか唱えんでもええんかいっ!
コウスケ・サカイ
種族 人族
位階 1
生命力 24
魔力量 20
力 11
素早さ 6
魔力練度 0
【アクティブスキル】
・鑑定Lv.1
・アイテムボックス
【パッシブスキル】
・睡眠耐性Lv.4
・病気耐性Lv.2
【称号】
・異世界転移者
【加護】
・なし
なんか色々新しい項目が出とる!!!
「艦長!鑑定だとステータス表示に比べて項目が増えてます!」
「なにっ!?どんな項目だ?」
「アクティブスキル、パッシブスキル、称号、加護です。
アクティブスキルに鑑定及びアイテムボックス、パッシブスキルに睡眠耐性及び病気耐性、称号に異世界転移者があります。加護は無しです。」
「とすると、アクティブスキルのアイテムボックスは全員持っていると考えるのが自然だな。それと称号の異世界転移者か。他のスキルについては機関士しか鑑定ができなかった事から個人に差があるのだろう。」
「機関士っ、機関士っ、自分にも鑑定かけて貰えませんか!?」
船務士、お前ライトノベル好きなのは知ってるけど興奮し過ぎだろ!凄くグイグイくる!
「分かった!分かったから落ち着け!」
船務士に向かって“鑑定”と念じてみると、船務士のステータスが表示される。
タカシ・オカザキ
種族 人族
位階 0
生命力 10
魔力量 5
力 3
素早さ 1
魔力練度 0
【アクティブスキル】
・格闘Lv.2
・アイテムボックス
【パッシブスキル】
・睡眠耐性Lv.2
【称号】
・異世界転移者
【加護】
・なし
あ…、そういえば船務士の名前って岡崎隆史だったな。名前で呼んだことないから忘れてたわ。
「船務士、空手やってたんだっけ?アクティブスキルに格闘Lv.2ってあるぞ。」
「えっ!?Lv.2ですか?自分これでも全国ベスト4になった事あるんですけど…。」
「Lv.2で間違いないぞ。他はパッシブスキルに睡眠耐性Lv.2だな。」
「うわー、って事はこの世界では空手の全国トップレベルでもLv.2って事じゃないですか…。」
その基準で考えるなら、睡眠耐性は日本でトップクラスに立てるな。俺なら世界クラスじゃん。
「俺の睡眠耐性がLv.4だから、少なくとも4が最高って事は無いだろ。そう考えると化物だらけかもしれないなぁ…。」
「艦長、取り敢えずステータスの検証は他の者に任せて直ぐに探索を再開しましょう。機関士の鑑定があれば危険を回避し易くなると考えます。」
えっ!?副長!またですか?せめて少し休憩してからじゃ駄目ですかね?
「そうだな、現状残された時間は多いとは言えない。機関士、よろしく頼む。」
ですよね!電池容量と真水の残量に不安がありますよね!わかります!
まぁ、自衛隊は命令に対しての返事は、
『はい』か『イエス』か『よろこんで』
以外は認められないからな。
昔上官にそう教わったときに、
「イエス!」
って答えたらフザケてんのか!って殴られたが…。普通ギャグかと思うじゃん…。何たる理不尽!
「了解しました。」
「艦長!自分も行かせて下さい!」
ええっ!?船務士、それはちょっとブッコミ過ぎじゃね?コイツ完全にファンタジー脳になってないか?
「スキルに格闘がありましたので、多少は役に立つかと考えます!」
いや、お前位階は0だからな?それならステータス的に位階1の人間の方が使えるはずだから。水雷長が探索に行きたく無さそうな顔してるから敢えて言わないけど…。
艦長、副長は一理あると思ったのか『うーん』と唸って決めかねているようだ。
そうだよな、映画なんかだと船務士みたいなキャラはフラグ立てるだけ立てて真っ先に死ぬし。(ヒドい)
「機関士、お前はどう思う?」
えっ?こっちに振ります?まぁ、決めて良いのであれば決めますが。
「船務士は確かに空手が得意ですし、こういうファンタジー系の知識もありますので連れて行っても良いかと。船務士ともう1人新たに加えた7名で探索したいと考えます。」
なんか船務長の後ろに立ってる水雷長が
『俺もまた行くのかよ!?行きたくないんだけど!』
って顔してる。フハハハッ!人選が俺に委ねられた時点で逃がす訳無いじゃないですか!
「レベルアップは何人まで有効なのかの検証も行いたいので。」
ええっ、戦闘もするの!?って面してますね、水雷長。勿論です。
「わかった。水雷長、十分注意するように。」
「はい…、了解しました。」
恨みがましい目で見ないで下さいよ、位階1は立派な戦力なんですから。