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聴雨譚  作者: 木逸昼寝
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雨打際

雨はまだ降っている。




 折り目正しい真っ白なA4紙の左上、ぽっかりと浮かんだその「雨はまだ降っている。」という一文は 一切の余韻もその後に続く物語もすべてバッサリと振り落としてしまったかのように唐突に浮かんでいる。今まさにかおりが置かれている状況が誰かの手によって目前でキーボードが打たれ、文字を起こし、このA4の紙にプリントアウトし、まざまざと突きつけられ、しかしそれはまるで意味のなさない奇妙なコアンシダンス。 

 残りの空白に思わず目が眩む。



 今一度封筒を見返してながら様々な記憶の端々にその名と記された住所に思いを馳せる。女性の名と思われるその名に思いを巡らせるが、名字が変わった友人や知人にもそういったものに覚えはない。タチの悪い悪戯か、しかしいたずらにしてもなんの意味もなさぬこのような一文に薄気味悪さを感じ、また苛立ちとともにひきちぎち捨ててしまいたくもなる。握り潰しこのまま忘れてしまおうか。


 書類を乱雑に重ねいれた引き出しの一番上に何も考えず、今のところは入れておく。


 そう、霧雨となりはしたものの、今まだ雨は降っている。

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