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聴雨譚  作者: 木逸昼寝
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重い雨粒

 雨はますます激しさを増し、大きな雨粒がばちばちと音を立ててベッド脇の小さなベランダにたたきつける。ふとその音で我に返るが身体に力がはいるでもなく、ぼんやりと変わらず世界が遠く感じている。何もかもが億劫だ。


 テレビのニュース番組はやがてワイドショーと変わっており、俳優の誰それの不倫問題などとどうでもいい話題を煽情的に報じ始める。司会者のわざとらしい口調と安っぽいセットの色合いがちらちらと画面に映し出され、馬鹿々々しく閉口するがテレビを消した後に襲う寂寥感に比べればとリモコンには手が伸びない。


 何か食べなくちゃ。仕事から離れて幾日もたたないうちに生活リズムも乱れ、あまり外出などしなくなったせいか食欲もわかず、朝はインスタントのコーヒーだけで済ませてしまった。


 乏しい冷蔵庫の中身に頭を巡らせ、ありあわせの具材でパスタでも作ろうか、と小さな二人掛けのソファから立ち上がるが、パスタは昨日切らせてしまったことを思い出す。冷凍のごはんを温めようと頭を切り替えるが、今日はやはり買い物には出なければならないか。雨中の外出と銀行によらなければほとんどポイントカードとレシートで分厚いばかりの財布の中身で一層気が重くなる。

 一人暮らしのOLの5年分の貯金などたかがしれ、失業保険が降りたといったって切り崩していかなければならず、先はとうに見えている。東京から2時間ほどかけて新幹線と在来線を乗り継ぎ、またその駅からバスで行かなければたどり着かない地方都市のさらに郊外で一人暮らす母には仕事を辞めてしまったことを伝えていない。

 もちろん心配をさせ、口うるさく言われるのは面倒くさい。地方公務員である夫を病気で亡くし、寡婦として年金を受け取りながらパートで細々と、しかし質素ながら地に着いた生活を一人もくもくと続ける母に娘のこんな気まぐれなど受け入れられるわけもないだろう、むしろ気を使った配慮であると自分に言い訳をしてみる。


 軽い昼食を済ませるころ、雨は少し和らいできたようで 空がふんわりと光をふくみ膨らみ始めたようだ。


 

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