雨絣
徐々に腹部の違和感が増す。安物のスプリングなど聞いていないソファにはこの身を沈めるほどの懐の深さもなく、すぐわきにあるベッドに身を横たえ、タオルケットにくるまってみる。マグカップの紅茶はすっかり冷めてしまった。小さなバルコニーをやすやすと突き抜け、雨粒が窓を無数の筋となって駆け抜けるのをレースのカーテン越しに目で追っていく。
生理前の気怠さをどうして神様は女性にだけ押し付けるのだろう。身体から血が流れ出る痛みはともかく、なぜこんなにも憂鬱な気分にさせられねばならないのだ。ナプキンは先ほどスーパーで買い足しておいたが鎮痛剤はまだ残っていただろうか、いや、そんなことよりもあの手紙だ。ぽっかりと浮かんだあの一文、なんのために送ってきたのだろう。警察に相談するような内容でもなし、消印なんかついていたっけ、そもそも。。。
「ねえ、うちの彰人の友達がさあ、誰かおんなのこ紹介してほしいって言ってるらしくってえ、かおりどう?」
居酒屋で店員をしている同い年の彰人と美緒は半年ほど前に出会い付き合いだした。あんなだらしない男の友人にろくなのがいるわけないじゃない、心の中で毒づきながらかおりは間延びしたような美緒の言葉に曖昧に返事をする。
「うーん、そうね そういえば彰人くんは元気にしてるの?」
彰人の爪は会うたびにいつも少し長く伸びている、あんな汚い爪の男に触られたら病気になりそうだ、などとは気の置けない女友達相手でも軽口は叩けるものではない。それに彰人の手は汗ばみ湿っている。いつだったか三人で美緒のアパートで酒を飲んでいる折、席をは外した美緒にみられぬタイミングを見計らったように彰人はかおりの手の甲にその汗ばんだ手を重ねた。
「なんかあ 店のてんちょーが変わったらしくって 本社から来てる人? そんでそいつが嫌なやつだから辞めたいとか言ってんのお。あ、でもなんか そっちじゃないほうの仕事がうまくいくかもしれなくって それがいけたら店はやめるかもって うける」




