露払い
国王以下貴族達との歓談が終わる頃、やや青い顔をした宰相が名乗り出た。
「陛下を始めとしてセントリーブス国を担う皆様、せっかくご歓談のところ申し訳ありませんが、是非とも問わねばならぬ事が御座います故どうかご容赦下さいまし」
宰相は遥とその一行に向き合うとしずかに語りかけた。
「このセントリーブス王国は南に海、西の平原を超えた先の砂漠を挟んで魔王国ブラキュア、北の山脈を越えるとそこは聖公国シャングリラ、東に獣王国サハリアに囲まれており今のところ程度の差はあれど全てと敵対しております」
「存じております、マクシミリアン・コーデル伯爵様より御教授いただいた上で僕たちは来ましたのでご安心下さい」
「されど皆様方は・・・」
「ああ、ここにいるのは僕たちしか居ませんからね。実力部隊は先ほどおっしゃっていた西の砂漠に居ます。ああ、そうだ報告が遅れました」
「報告・・・どのような」
「ここにくる前に進軍してきていた魔王国ブラキュアの軍隊を敗北に追いやっておいたんですが」
「・・・・・・・」
コイツはナニヲイッテイルんだ状態に集まっていた全てが固まった。
気にせず遥が小型無線機で本部に連絡をとる。
「映像を送ってくれるかな、それと多分明日には陛下と一緒にそっちに視察に行く事になるかも知れないので大型ヘリ何機か今日中に寄越してくれないか」
「了解です。そちらで視察人数が確認できましたら連絡を、その後3時間以内にそちらへ伺います。着陸ポイントの指示をおわすれなく」
「リョーカイ、後はよろしく」
遥が持っていたタブレット端末を王様の前に差し出し画面を操作し動画が始まる。
遥の持つ魔道具にも驚くとともに映し出された映像に声が上がる。
魔王国軍の兵士が砂漠に無数に横たわって居るのを延々と映している。
場面が切り替わり椅子に縛り付けられた男の顔を誰かが持ち上げ所属と名前を聞いている。
『我は魔王国軍東方辺境ギズモード・ロレンツ伯の軍を預かるバルカル・マーキュリー・・・将軍である』
信じられなかった。魔王国最強とうたわれるバルカル・マーキュリー率いる軍隊が知らぬ間に殲滅されるなど有り得ないことだと。
更に衝撃が走る言葉が遥によって告げられた。
謁見の間は紛糾の場と化した。