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仮説

本社に帰ってもマクシミリアンは悩む。


眼下に広がる街を見ながら砂粒のような人の動きを追う。


「伯爵様、少しお疲れでは御座いませんか。後は私めが処理をさせていただきます故」


そう言ったグレッグに『すまぬ』と言うと社長室を出て行く。


すかさずメイドのレナがマクシミリアンのカバンを持ち後ろを歩く。


護衛が数人マクシミリアンを取り囲む。


「皆の者、腹は空いていないか」


辛いときや悩んでいる時はよく従者を食事に誘うマクシミリアン。


『腹が減っては良い考えも浮かばぬ、旨いレストランを見つけたのだ』


お腹が空いていなくても付き合う従者。


コーヒーくらいは付き合えると言いながら


皆、マクシミリアンが悩んでいるのが分かっているのである。


マクシミリアンはよく従者に話しかけながら食事をする。


いつもみんなで笑いながらどうでもいいことを話す。


本当に大切なものはどうでもいいことの中から浮かび上がる。


今日はそんな日だ。


レストランに静かに心安らぐ曲が流れる。


「こういうときはこういう曲が気持ちが安らぎますね、伯爵様」


警護の騎士がレナを見て笑う。


「なによ、そんなの当たり前じゃない。私でも年がら年中メタル聴いてる訳じゃないのよ」


「えー、レナ嬢はこんな時メタルを聴きながら壁に蹴りを入れてるイメージなんですよね、もう」


「そういえば最近故郷の歌も聞かなくなったな」


「レナ嬢に洗脳されてしまいましたね、隊長www」


「あははは、そうかもな」


「隊長、この星に来ていつも楽しそうですよね」


「なにをいう、ワシだって故郷を想うと辛いときもある。さすがにそんなときはメタルは聴かんが」


「メタルを聴いてるんですか・・・」


「何を言っとるんじゃ、レナ嬢のアイアンメイドのファンはワシと同世代じゃぞ」


皆、納得する。


「そうであるな、辛いときは心いやされる曲が良いと我も思うぞ」


マクシミリアンは隊長に同意する。


「メタルだってメローな曲が御座います伯爵様」


レナがキッと目をつり上げる。根っからのメタラー、いやメタルの守護者である。


「しかしだなー」


呆れるマクシミリアン。


「故郷の連中はメタルは聴かんだろうな」


騎士隊長がポロッとつぶやく。


「エレキギターが無いせいじゃないんですかね」


「そうかしら、私はたとえフォークギターしかなくてもメタルを奏でてあげられるわ!」


なぜそこまでこだわるんだ!とみんなは思った。


流石に精神的に参っている時にメタルは聴かないよねとお互いに目で合図する。


口に出すとレナがうるさいからだ。


「そうであるな、故郷にメタルは根付かんであろう」


ええ!という顔でマクシミリアンを見つめるレナ。


「ここに比べてセントリーブス王国は生きていくのが大変であったろう。それでも他国に比べれば国王陛下の善政でまだましではあったと思うが。どう思う、そなたら」


「そうですね伯爵様、そしてレナ嬢、失礼を承知で言わせていただけるならセントリーブス王国、いやゴラン大陸にある全ての国がこの星より文明が遅れており生きていくだけで精一杯であるかと思います。

辛い生活で癒してくれるのはこういう優しい曲です。」


騎士隊長が部下の発言に頷く。


「そういえば、癒される曲が多かったよなセントリーブス王国はさ」


「というか、そういう曲しか知らないなー」


「ナニヨー、セントリーブス王国にメタルが産まれないって言うの!産ませてあげるわ、この私が!」


生きていくだけで精一杯、食べる為だけで人生が終わる。


マクシミリアンは気づいた。


ゴラン大陸にある全ての国は生きていくだけで精一杯の国民で溢れかえっていることを。


セントリーブス王国がその中でまだましであったことを。


セントリーブス王国を取り囲み魔王国、聖公国、獣王国が存在しさらにその周りに人が踏み込め無いほど凶暴な魔獣が無数に闊歩している事を。


銀翼の鷹のアシュリーも故郷のセントリーブス王国を含む4カ国から出られないかと苦労していたら、いつの間にか地球に来てしまったと笑いながら話していた。


果てることのない魔獣との防戦、外に広がれない以上領土は限られる。


故に強者、弱者の選別が行われ、弾き出された弱者はセントリーブス王国に縋る。


強者しか生き残れない国がセントリーブス王国の周りに広がるのは必然であろう。


侵略したくてしている者もいるだろうが、自分たちの生活が豊かに安全に楽しく生きることが出来るのならば、命を投げ出して戦いに身を投げ出す者がいるだろうか。


大陸の歴史がはじまり4カ国以外知らないマクシミリアン。


救いを求め続けたマクシミリアン。


どこからも誰からも救いをもたらされなかったゴラン大陸にある国々。


マクシミリアンは仮説を立てる。


ゴラン大陸の4カ国は魔の森によって孤立しているのかと。


であるならば森の外には国が無いのか、あるとすればどういう国か。


もし、4カ国より文明が進んでいれば森を切り開いて我々に接触してきているはずだ、アシュリーたちと地球の隅々まで回り驚くような地で人が住み、文明の利器であるスマートフォンを誰も彼も持っていた。


文明は人が居るところにあっという間に伝播していく歴史を地球で学んだ。


セントリーブス王国を含む4カ国に新たな文明がもたらされた歴史は無い。


セントリーブス王国が発祥の地であり人が生存可能な地に広がり各々がその地の特性にあった文化を生み出し独立していった歴史を文献で知っている。


愕然となるマクシミリアン。


故郷にはゴラン大陸に存在する4カ国しか人は居ないのではないだろうかと・・・。










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