最後の希望
ジョシュアは言った。
「兄マイケルを説得出来るか、ケン。もう魔石は儂の手元には無い、貴様に見せた魔法はもう使えんのだ」
ケンは悩んだ。
現実主義者の兄が話だけで異世界の事を信じるはずがないと。
それでもケンは兄の元へ帰る。
ケンの必死の説得もかなわない。
しつこく食い下がるケン。
マイケルは次第に怒りが湧いてきた。夢物語もいい加減にしろと。
「よし!そこまで言うならせめてこの兄を倒してみろ!一度も兄を倒せなかったお前がこの俺を倒せたなら、そこのジョシュアという者にこの体くれてやる!」
マイケルはどうせ死ぬなら弟のケンの拳で死にたかった。
そして破れた。
「お義兄さん」
沙友理の腕に抱かれて横たわるマイケル。
「せめてお前たちだけは幸せになってくれ、新しい地で幸せを掴んでくれ」
「兄さん!」
「沙友理さん、そしてケン、俺の愛する弟よ。今まですまなかった、死に場所を探し続けた挙げ句こんなところまで二人に付き合わせてしまった俺を許してくれ」
ケンが泣きながらマイケルに抱きつく。
「兄さんが俺たちを救ってくれた。なのに兄さんを救えなかった俺は・・・」
マイケルはケンの頭を優しく撫でる。
「子どもたちを、道場の子供達を頼む。最後の俺の我儘だ・・・」
マイケルの目蓋がゆっくりと閉じようとしたとき、ジョシュアがマイケルの胸に手を当てる。
「貴様の生き様しかと見せてもらったぞ。S級冒険者パーティー銀翼の鷹、最後に生き残ったメンバーのビショップであるこの儂ジョシュアが貴様に命をくれてやる。精々セントリーブスで子どもたちを守るんじゃな」
魔石にたよらない回復魔法の全てをマイケルに注ぎ込むジョシュア。
淡い光りに包まれるマイケル。
銀翼の鷹が旅でよく歌った歌が脳裏に浮かぶジョシュア。
狭いセントリーブスに 未練はないさ
未知の世界に 夢がある夢がある
広いゴランは 俺のもの俺のもの
はばたき行こう 空の果て
でっかい希望だ あこがれだ
俺らゴランの 俺らゴランの
俺らゴランの冒険者!
魔王国、聖公国、獣王国、そしてセントリーブス王国が存在する大陸をゴランという。
いつかその国々を越えて冒険に出たいと皆で語り合っていた。
その仲間もみんな死んでいった。
アシュリー、ザックス、クラウド、リアンの若かりし頃の顔が浮かぶ。
まさか世界を跨ぐ冒険とは思っても見なかった。
アシュリーの言葉がよぎる。
『俺たちが皆んなの希望なんだ!』




