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失踪した猫を探して早くも5年がすぎていた。


王国軍第一軍団特殊任務班X-1で働く合間にタッカー・ホンゴスは猫を探す。


タッカーは10年前、セントリーブス王国軍に入った。


軍人としては体力が無いが、頭も良く見た目も悪くなく性格が大人しいので情報部に配属される。


ある日潜入先の魔王国がセントリーブスに戦争を仕掛ける情報を入手、投入される軍の規模、武器を調べ上げた。


情報を持って魔王国を離れようと宿を出たとき、お腹の大きな猫がまとわりついてきた。


アジトの宿に居たときに知り合ったノラの猫だ。


情が移っていたタッカーは保護することにした。


猫と共に帰国。


猫は部隊で可愛がられそのまま飼うこととなった。


5年後、タッカーは軍部隊を任されるようになった。


情報工作専門と言うこともあり相変わらず体力は求められない。


それでも体を鍛えたが体質的に筋肉ムキムキとはならなかった。


実家は兄が正式に継いで自由の身である。


部隊の猫の出産と避妊は慎重に管理され既に2世代併せて12匹、それぞれ各部隊で2匹ずつ飼っている。


猫は兵士達の癒やしであり大切にされている。


その中で生まれて3ヶ月の猫が居なくなった。


可愛い盛りである。


ハアハア言いながら肩に登る仕草も爪のひっかき傷も愛おしい盛りである。


タッカーが名付け親になったアスカ(メス)である。


必死になって探すタッカー。


足取りはコーデル総合大学までつかんだがやっと会えるかと思えばコーデル伯爵家から既に魔王国に連れて行かれたと判明。


魔王国への旅を画策したが却下される。


この頃コーデル社と軍の協力体制構築、聖公国への潜入調査にプロパガンダ工作、獣王国への接触工作に工作組織構築と途切れることはなかったのだ。


この間3年。


軍の中堅幹部に昇進し益々忙しくなる。顔付きも変わり更にイケメンになっていた。


さらに2年が過ぎる。


やっとまとまった休暇が取れ魔王国へ向かったが実は既にコーデル伯爵家に引き渡されているという事がわかり即座に帰国。


コーデル伯爵家に行ってみれば伯爵婦人は猫を連れて出て行ったという。


そしてタッカーは今、コーデル大学第五学生寮の前に立つ。


長かった。


自分が保護した猫の子孫アスカ。


上官にいつも名付け親の役得を涙をのんで我慢し譲り、とうとう自分が名付けることができた猫。


アスカ。


手入れは行き届いているが古い建物はコーデル大学の歴史を考えると昔からある建物を買い取って寮にしたことが伺えた。


なぜか学生らしき者たちが大工道具を持ち寮の修理をしている。


庭の中央では女性がテーブルの上に料理を並べていた。


「ああ、パフィーちゃんそれはパフィーちゃんが食べるとお腹イタイタイになっちゃうからダメですよ」


女性が猫を抱き上げるのを垣根越しにみるタッカー。


だいぶ大きくなったがあの茶色と白の縞模様はアスカ、俺のアスカだ。


濃い茶色のしま模様のアスカは決して茶トラではない。


「アスカ!」


つい声を上げてしまうタッカー。


みんなの視線が集まる。


ここでは決して見ることのない鋭い雰囲気で細身の精悍な顔の男。


ちなみに相変わらず体力はない、筋肉自慢の軍人に比べればだが。


「どなたかしら」


「は!失礼します。驚かせて申し訳ありません。わたくし国王軍第一軍団所属タッカー・ホンゴスと言うものです。そ、その猫アスカの親であります!」


「・・・なにを仰っているのか理解出来ません。この子はパフィーちゃんといいます。いきなり親だなんて可笑しいことをいう方ですね。ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ、お帰りにならないと守衛を呼びます!」


「な、な、なにをいう!許可はこの通り取ってある。それより貴方こそ誰なんだ。その猫は伯爵婦人が今預かっていると聞いた。伯爵婦人をこの場にお連れしても良いのだぞ」


「・・・わたくしがマクシミリアン・コーデル伯爵の妻、マリアンヌで御座いますがどうかしましたか」


おかしい、前回会ったときと全然雰囲気が違う。化粧っけの一つもない女が伯爵婦人だと、なにをいっているんだこの女は!


騒ぎを聞きつけて守衛が飛んでくる。


「どうされました!マリアンヌ様!」


タッカーは昔猫を引き取りに行ったときに見たマリアンヌの顔を思い出す。


もっと悲しみに満ちていて青白い顔色で今にも倒れそうな女性だった。


今、目の前でマリアンヌと名乗った女の姿は学生たちに囲まれ溌剌とした健康美に溢れた美人。


アスカが見てきたものを見られれば見てみたいと思ったタッカーだった。






これ以降猫をめぐる新たな戦いが切って落とされた。


訂正しなければならない。


マリアンヌをめぐる、タッカーと学生たちとの戦いが始まったのである。





気がつけばギターを持ったタッカーがマリアンヌのもとへちょくちょく来ていた。


タッカーにお茶を出すマリアンヌ。


「いつもすいません」


「一人で飲むより楽しいんですよ、おきになさらないで」


講義から帰った学生たちは、猫を膝に載せたマリアンヌと仲良くお茶を啜るタッカーを見ると2人のところに慌てて向かう。


そして叫ぶ。


「管理人さんは僕らの管理人さんなんだ!貴様とこれで勝負だ!」


「貴様に管理人さんを取られてたまるか!貴様とこれで勝負だ!」


「管理人さんはぼくと結婚するんだ、渡さないよ!貴様とこれで勝負だ!」


ギターをつかんで立ち上がるタッカー。


ことごとく敗れる学生たち。


タッカーはギターを持つと急に勇気が湧き人間性が変わるのだ。


出来ればカウボーイハットがあると良いのだがと思うタッカー。




マリアンヌはそんなみんなを小さな男の子を見るように微笑んだ。













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