44/74
素通り
レナは踊っていた。
雨の中ひたすら踊っていた。
ここは新宿2丁目、靖国通り。
「レナちゃん、無理よ~こんな雨ですもんタクシーみんなお客さん乗っけてるじゃなーい」
美少年クラブのママ(男)が困ったように声を掛ける。
それでもレナは踊る。
夜中の12時過ぎまでマクシミリアン、ミランダ、マルコとカラオケではしゃぎ、その後ミランダと共に2丁目のバー美少年クラブで朝まで騒いでいた。
日頃、遥にあえない鬱憤をこれでもかと晴らそうとしたがヤッパリダメだった。
遥といつも仕事でいっしょのミランダはレナに絡まれる前に用事があると言ってそそくさと帰った。
独り取り残されたレナを止める者は居なかった。
踊るレナ。
まるで妖精が舞っているようである。
「ねえママ、おかしくない。こんな美人が手を上げてるのに一台もとまらなーい」
「ソリャアネー」
どこの誰が雨の中傘も差さずに踊る女を乗せようとするタクシードライバーが居るのか、いたら誰かヨンデコイヨ!と心で叫ぶママ(男)であった。




