別れ
ボクシング世界一決定戦で勝利したリックス。
世界一となったからといってプロボクサーとして生きていけるほど甘くはない。
プロスポーツというものがまったく存在していないのだ。
プロという世界が無いので、いつものようにリックスはB級冒険者として日々仕事に勤しんでいた。
ある日ボクサーとして、またトレーナーとしてきてほしいという誘いが魔王国国王からあった。
魔王国でもボクシングの人気が広まり人材の底上げが課題であったのだ。
冒険者は自由だ、だが誰かが自分を待ってくれている訳でもない。
家族を持つ時、みんな冒険者を引退する。
死んで家族を路頭に迷わせる訳にはいかないのだ。
ためた金で土地を開拓し農家になったり、技術を生かして商売を始める。
リックスは誰かが待っていてくれることを欲し始めていた。
「お嬢、俺は魔王国に行こうと思う」
「そう、仕方ないわね」
「すまない」
「あなたの力を認めてくれたんだから何で謝るの」
「・・・」
リックスはアリアにアタマを下げると静かにジムを出て行く。
魔王国まで馬に乗っても1月は掛かる。
冒険者らしく旅が好きなリックス。
セントリーブス王国王都から次第に離れる。
農業がもっとも盛んな国らしく見渡す限りの作物畑。
魔王国は昔は魔道具、今では工業立国に近い国になっていた。
もう、この景色もそうそう見ることもないだろうと少し小高い丘に向かう。
丘の上に豪華な馬車が止まっているのが見えた。
そこには待っていて欲しい人がリックスのほうを見て微笑んでいた。




