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再会

キャロルはグレッグと呼ばれる中年男性から手渡されたあやふやな地図をじっと見ていた。


「えーっとこの番地だよね、なんかアシュリーって記入されてるけど、まさかアシュリーさんのとこかなー。もしそうならあの人居るかなー、しょっちゅう旅行してるらしいからどーだろー」


キャロルはマクシミリアンと名乗る男が率いる一行を見渡し溜め息をつく。一番豪華な服を着た人を中心にまるで中世の騎士のような服を着た男が5人(そのうち2人は甲冑着てるし)、さらに荷車の回りに下男らしきラフな服装の男が5人、目の前の瀬の高いイケメン中年男性とそれに付き従う若い従者らしき人は3人、更に間違いなくメイドの格好をした美女が5人。


なんの冗談だっていうの、しかも話してる言葉は英語じゃないし。ちょっとラテン語っぽいけどとつらつら考えながら道路に置かれた姉の荷物を持ち上げた。警察に連絡したほうがと思ったが頭を横にふる。キャロルの男親は半端な不良で酒場で喧嘩したりしょっちゅう問題を起こしていた。ちなみに母親はとっくに家を出ていっていた。



地図に示されている建物のオーナーの名前をキャロルは知っていた。

この街では結構なというかアメリカでもちょっと名が知られる旅行エッセイストであり、かつ社会問題に取り組む活動家である。

あだ名は銀翼の鷹のアシュリー、自分でよく名乗ってたのをテレビで見たことがあるからだ。確かに昔は綺麗な銀髪をなびかせるイケメンだったらしい。今ではお爺ちゃんなのだが何冊も出版されている彼の著作本のカバーに印刷されている著者近影は一度たりとも変わることはなかった。


そんなことより目的地までは5マイルはある。この人数にこの荷物な上に甲冑着てる人までいるし歩くにはきつい距離だがタクシーに乗せようにも手を上げてもものの見事にスルーされる。


「まあ、そーよねー」


キャロルはマクシミリアン御一行に向き合うと身振り手振りでこの場所を離れないように伝える。


「何と申しておるものか分からぬ、グレッグはどう思う」


「はっ!多分ここに逗まって居てほしいものかと思われます。なにやらアシュリーを存じているようですがどうやらこの地より遠いらしく、この娘が色々手助けしてくれるものかと」


「なんと優しい娘ではないか!グレッグ、アシュリーのもとへ着いたのならば何か褒美を取らすようにな」


「かしこまりました。それにしてもあの娘、異世界で右も左も分からぬ我らに何という優しさでありましょう」


マクシミリアン一行は今にも涙が零れ落ちそうになっていた、それほどまでに彼らは難しい任務に耐えていたのだ。


キャロルは駐車場に停めてあった自分のピックアップトラックをとってくると荷車に載せたものを積み替えさせ車内にマクシミリアン、グレッグ、騎士3人を、荷台に下男らしき男を2人乗せてアシュリー家に向かった。

残された従者が不安がらないようにキャロルは自分の持っていた荷物を手渡し必ず戻ってくると身振り手振りで説得した。


キャロルが二組目を乗せてゆっくりアシュリー家の庭に車を乗り込ませるとマクシミリアンがアシュリーと泣きながら抱き合っていた。アシュリーの他にも知り合いと思われる年老いた男性たちがマクシミリアン一行とやっぱり涙を流しながら抱き合っていた。


よくよく見るとなぜかアシュリーさんも年老いた人たちもマクシミリアン一行と同じような服装だった。


「会えて嬉しいぞアシュリー、ザックス、クラウド、ジョシュア、エドガー。いや銀翼の鷹の者共よ!」


「お待ちしておりましたマクシミリアン伯爵。この時より40年前に転移し約束の時を違わず出会えたことは我が冒険者パーティーの誇りであります」


「うむ、何よりお前たちが息災であったことが何よりの喜びである」


「伯爵様もご無事で何よりでございます」


「何を言う、我らより40年も前の時空に転移しこの地で苦労をかけたであろうお前たちに比べれば我らの苦労など無いも同然であろうに。国のためとはいえ申し訳なく思うぞ」


「もったいなきお言葉、感謝に耐えません」


ようやく落ち着いてきたのか伯爵がグレッグを呼んだ。


「グレッグよ、あの娘キャロルと申したか。キャロル嬢の我らへの助力は感謝してもしきれぬ。何か良い褒美を授けるが良い」


「はっ!伯爵様のご好意、かの者につつがなく渡せますようアシュリーを使いますればよろしいでしょうか」


「うむ、この地の言葉は我も分からぬのでな、そうするがよいであろう。任せる」


「かしこまりました、アシュリー聞いておったな。彼の者への対応はお前がせよ。大きな借りがある何が褒美として良いか聞き出すように」


アシュリーがキャロルの前に立ち騎士のような仕草で礼をすると話を始めた。


「キャロル嬢、我々は元々この世界の住人ではありません。というかこの惑星とは違う世界から次元を超えて来た者たちであり、私はその惑星の中に存在するセントリーブス王の治める国の冒険者です。多分話したところで理解は追いつきますまい。

そしてあちらにおわすお方はコーデル伯爵家当主マクシミリアン卿でございます。この度はキャロル嬢には大変お世話になったと伯爵は痛く感激しており是非ともお礼がしたいと申しておられる。

この世界では礼を辞することもありますが、我らの世界ではそのようなことは大変失礼にあたりますゆえ是非とも伯爵様から賜われるお品をお受けくだされ。

ただ伯爵様もキャロル嬢に褒美として何が良いかこの世界に来たばかりなゆえ困っておられる、私の手持ちのものであればそれをお渡しさせていただきたい、そうだ1万ドル程でどうだろうか、多分伯爵様も金貨10枚換算程度でご納得いただけると思うのでな」


1万ドルと聞いてキャロルは驚く。たかが道案内しただけなのだ。正直なところ辞退したほうが後々のことを考えると良いと思うが断るのも失礼だと言われると断るに断れない。

ふと欲しかった新型パソコンの事を思い出した。32ビットパソコンが2500ドル、それに開発ソフト、車の残りのローンを合わせれば5000ドルくらいか。


「わかりました、ただしお礼は半分の5000ドルでいいでしょうか」


「いや、それでは伯爵様も納得できまい。もう金貨10枚数え始めているのでな」


マクシミリアンはニコニコしながら金貨の入った袋をグレッグに手渡している。


「実はお礼も嬉しいんですけど、是非とも伯爵様とお話させていただければと思っていたんです。残り半分はそういうことでお願いできますでしょうか」


「そうか、ただ我らについてはなかなか話すことも難しい事も多いのでな。伯爵様に相談の上で良いか」


「はい、またお手伝い出来ることもあればなんなりと言ってください。異世界とか凄く面白そうですし」


ああ、そっちに興味がでてきちゃったかーと少しばかり悩むアシュリー。


「まあ我らのことは軽々しく口にできません。ゆえにキャロル嬢もある程度ご身分を明かされることが条件となりますがよろしいですかな」


キャロルは正直に自分がMITの工学部の学生であり、いずれMITのコンピューター科学研究所に入りたいこと。問題の多い家族の事、ソフトウェア開発などのアルバイトを含めた経済状況、住んでいる場所を包み隠さず話した。


アシュりーはキャロルの優秀さに目をむいた。アメリカで一番の工学系の大学生とは思いも寄らなかったのである。まさか16歳に満たない背格好というか実際に16歳と学生証に記載してあった訳だが目の前の少女がという気持ちが抑えられなかった。これは何が何でもマクシミリアン伯爵の力になってもらわねばならないと決意した。







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