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本気

男と男が有らん限りの力と技で正々堂々の闘いを繰り広げる。


飛び散るあせが虹を描き拳が叩きつけられる音に皆震える。


間違い無く世界一を賭けた勝負である。


たとえその発端が猫の取り合いだとしても世界一決定戦にはかわりがない。


しかも自分の人生までも掛かっていた。


レイアは母の隣でじっとリングの反対側を見る。


デューク王子が視線に気づき手を振る。


こわばった笑顔を返すレイア。


どちらも勝って欲しいという矛盾にくるしむ。


ふと気づく、張本人の二人の内、片割れの魔王国国王の姿が見えない。


歓声が上がり魔王国側のボクサーが倒れているのに気がそがれる。


『彼が負ければデューク王子とはもう・・・』




「立て!立つんだジャック!聞こえるかジャーーーック!」


『あれ、オレは倒れているのか。親父っさん、なに言ってんのか聞こえねーよ』


カウント10ギリギリにジャックはフラフラと立ち上がった。


7ラウンド終了のゴングが鳴る。


コーナーポストの椅子に座り口を濯ぐ。


「親父っさんオレ確かにアイツのアゴにストレートぶち込んだよな」


「ああそうだ、だがな野郎はおまえのストレートに伸ばした腕に被せるようにしてパンチを打ち込んできた。ありゃ話に聞いてたクロスカウンターっちゅうもんだろう」


ジャックの吹き出す汗を拭いマッサージする男。


自分自身の顔の汗を乱暴に拭ったとき眼帯が外れる。

その顔をぼんやりと見たジャック。


『あれ、国王様・・・まさか』


そのまさかだった。


様々なスポーツ、文化的催しを自国でも採り入れたいと何度かセントリーブス王国を訪問した際にボクシングと出会ってしまった。


さすがに魔王国では受け入れられないだろうとおもった。


魔王国は魔力の価値で全てが支配されていたのだ。


肉弾戦など無能の極みと見下していた。


だがスポーツとして見ればこれほど面白いものはないかもしれないと思い始めた。


ボクシングのルールを覚え、技を知ると益々興味が沸いてきた。


セントリーブス王国で伝説のボクシングトレーナーの涼子にも会い指導を受ける。


気がつけばデューク王子の婚約者の姉とも知り合いになっていた。


練習試合が終われば皆で反省会と称した飲み会。


楽しくてたまらなかった。


とうとう身分を隠し変装をし、街に繰り出し見こみの有りそうな者を探し歩き始める。


そして初めて見つけたのがジャックだった。


ジャックを中心にボクシングの輪がひろがる。


だが魔王国ではボクシングを知るものはごくわずか、試合さえなかなか組めない。


いつしかセントリーブス王国でという気持ちが湧き上がる。


セントリーブス王国でチャンピオンを勝ち取れば魔王国にもボクシングが広まるかもしれない。


そのチャンスが今なのだ。


ジャックには何が何でも勝って欲しい国王はおのれの姿を隠すことを忘れていた。



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