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強者

美人は3日で飽きると言うがマクシミリアン邸のメイドは例外であった。


街に出ればアッという間に寄ってくる男たち。


資産家をアピールする者、見た目が良い者、ワイルドなアウトローを気取る者が次々現れる。


マクシミリアンや一緒に転移して来た男性従者を知っている彼女たちにすればどうでもいい連中だ。


いい寄ってくる男どもを軽くあしらえるスキルを身に着けた彼女達にほぼすべての者が両手を上げた。中には銃を突きつけられた者も居る。


マルコ達の進言によりマクシミリアンはメイド達に私設軍事組織、銀翼の鷹の軍事教練を全員に受けさせ相当の実力者に仕上がり、護衛する側になれると教官から保証されるほどである。


この街程度の男達に負けることはないであろうし、自信もあった。


それでも街に行くときは最低二人一組で出かけるようにマクシミリアンから指示が出ている。


「ミランダ様、それは何でございましょう」


「最新ゲーム機よ、伯爵様に頼まれたの」


「伯爵様のお歳は既に30をお越えになっていると思いましたが」


「レナ、私達が口にしてはいけないわ、不敬ですよ」


「申し訳ありませんミランダ様」


「ああ、レナごめんなさい、強く言い過ぎましたね。許してくださいねレナ」


「とんでもございません、私こそ伯爵様への配慮が行き届いていませんでした」


この頃のレナにとって伯爵という称号はまだ恐れ多いものだった。



どんな身分でも男でも女でも何歳になろうともやるべきことをやっていれば、法や倫理に従う限り好きなことをしても構わないと地球に来てから特にミランダは思うようになっていた。


ミランダもマクシミリアンと趣向は違うが同じゲーマーであった。


マクシミリアンは主に旅を主題とするゲームが好きでミランダはアクションRPGやパニックホラーゲームが大好きだった。


私設軍事組織、銀翼の鷹から軍事教練を受けたメイドの中で最も成績が良かったのがミランダである。


このときもスカートの中にゴツい自動拳銃を忍ばせてあった。


銃はミランダにとって最高の相棒である。

か弱い女性でも大男を引き金を引くだけで倒せる。

剣や魔法などの個人の能力で差が出るものと違い、銃はある程度射撃の腕に差が出るだけで威力自体は変わることはない。


弱い自分を支えてくれる銃に見合う精神を鍛える為に日々射撃練習は欠かせなかった。

必要な時に引き金を引くことに躊躇わない自分になるために。


優しいだけでは弱い自分は生きていけない、強くても傲慢な者は生きている資格がないという言葉がつい口に出るミランダだった。

別に彼女はハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーが書いた小説に出てくる探偵フィリップ・マーロウを知っていたわけではない。

転移してきた理由を考えた末に達した心境なのだった。


射撃練習場でよく会う顔見知りも多く、軽口をたたきあえる仲間が増えたミランダはこの街ですっかりミランダ姉さんもしくはミランダの姉御と呼ばれるようになっていた。



二人はショッピングモールを帰りの時間を合わせて各々単独で散策することにした。


ミランダは行きつけの銃砲店に、レナは本屋に向かった。


しばらく前から英語が理解できるようになったレナは本に没頭するようになっていた。


大きな本屋で楽しみにしているファッション雑誌や旅行雑誌、料理本を手に取る。


欲しい本をレジに持っていこうとした時、日本漫画フェアという一角に興味本位で立ち寄る。


単行本が所狭しと並んでいるのを眺めているとその中に大好きなミュシャに似ている絵で表紙が描かれているものがあったので手にとった。


流麗な作画に見惚れてページが進む。


衝撃が走る。


そこには美少年の耽美な物語が描かれていた。


目を何度も擦るレナ。


これは・・・。


今まで何となくいけないとボヤケた妄想をかき消してきたモノがそこにはハッキリと描かれていた。


これは・・・良いのでしょうか・・・こんなものがあって良いのでしょうか。


悩んだ、自分自身の妄想を否定してきたレナ。


今、それがペンとインクで紙に描かれ目の前にある。


これは・・・・・・良いものだ!


倫理と法律に従えば好きなことをしていいのだと誰に諭されることもなく発見した女がまた一人生まれた瞬間であった。


ある日、マルコに『俺の菜々子さんの悪口を腐ったお前にだけはいわれたくないな!』と言われ『腐・・・二次元女にしか興味が湧かないロリコンに言われたくないわ!』と言い返す強いメイドが生まれたのだった。





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