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将軍の愛

遥は親から言われたことは素直に守る良い子だ。

平日のゲームは夕食前の1時間、休日は昼間の2時間と決められていた。


マクシミリアンも善良な人間だったが指図する親はここには居ない。

大規模魔法陣開発を理由に空いた時間全てをゲームに費やしていた。


遥が冬休みに入る頃には二人の旅は順調に進むようになった。


遥とマックの知らないアバターが『マックの兄貴』と言いつつ気軽に話しかけてくる事も増えた。

フレンド登録がドンドン増えていた。


ミランダのお陰である。


ミランダは頭も人当たりも良く真面目で仲間思いである。

魔物に襲われて困っている者が居れば駆けつけ救い、レベル上げの困難さに投げやりになっている者がいれば励まし、どこへ行けばいいか迷っている者がいれば導いてあげた。


遥と魔法陣開発に熱中するマクシミリアンとは対照的であった。


もちろんそのあたりの摺合せは事前になされており問題は発生していない。


問題はミランダ自身にあった。


「ミランダ仕事に差し支える故、無理につき合わんでも構わぬ」


「お気遣い痛み入ります」


深夜も回る頃メイドのミランダは社長室に居た。マクシミリアン、レナが椅子に座り並んでモニターに向かう後ろで一人腕を組ながらゲームの様子を伺う。


「伯爵様、そろそろパーティー仲間が集まるようですのです移動された方がよろしいかと」


「伯爵様、そこはハル君に任せて魔法発動の準備を始めるべきかと」


「伯爵様そのダンジョンはさらに階層が隠れております、探索を」


「伯爵様、魔王城はその山脈の先の湖の脇の入り口から地底に」


「伯爵様・・・」


指示が適格な上に他のパーティーから次々にメッセージが入る。


ミランダがマクシミリアンを通して必要事項を通達。


司令塔である、コマンダーそのものである。


マクシミリアンはようやく気づいた、人選の誤りに。


ミランダは凝り性な上に世話焼きなメイドである。


日頃の行動に思いが及んでいればミランダを代役に指名する事は無かっただろう。


メイドのレナが日本料理に凝り始め鍋をみんなでつつけば、野菜がどうのこうの、肉は平等に、締めのおじやのタイミングまで全てを仕切るミランダ。


バーベキューの肉の焼き加減から切り分け、焼きそばにかけるソースのこだわりから青海苔の量まで決めるミランダ。


ミランダの元々の本質は日本で言えば鍋将軍、アメリカで言えばバーベキューピットマスターだったのだ。


ノホホンと遥と魔法陣開発をしながら故郷を模したマップで作り上げたマジェスティックワールドを旅したかったマクシミリアン。

正直、サービス開始から短期間にこのゲームが人気になるとは思っていなかった。今では世界中でプレイされておりユーザー数は軽く2億を超えている。

これだけユーザーがいると勝手に魔法陣開発が進められ、マクシミリアンの魔法陣開発能力を超えたユーザーも出てきていた。


後は賞品につられて応募される魔法陣の中で大規模転移魔法に使える魔法陣を手にするだけだった。


「もう、我の役割は終わったも同然であろうな」


自分の魔法陣開発能力を軽く超えるゲーム参加者の一覧を見て、若干寂しそうに呟くマクシミリアン。


「では、そろそろ私のお役目も終わるので御座いますね」


レナが感情を込めずにマクシミリアンに囁く。


「そうだな、ハル君に我がこのゲームから離れる事を告げなければなるまい」


通訳をしているメイドのレナはやっと夜勤から開放される事が出来てホッとした。


「だがハル君の発想やプログラミング能力、我の要望を忠実に叶えるオブジェクト作成のデザインセンスは捨てがたいものである」


レナが頷く。


「そう思うか、我はどうすればいいものか」


画面を睨みながらレナと後ろに控えるミランダに尋ねる。


しばらく間をおいてミランダが答える。


「ハル君に連絡を取り社員になってもらえばいいのではないでしょうか」


マクシミリアンは思わずミランダの顔を見上げる。

優しく美しいミランダ。

悲しいときや苦しい時、いつも励ましてくれたミランダ。

マクシミリアンは立ち上がるとミランダを抱きしめる。

ミランダはマクシミリアンの頭を子供の頃の様に撫でながら微笑んだ。


色々理由を付けてもマクシミリアンは遥と別れることが悲しかったのだ。

マジェスティックワールドで誰にもパーティーに入れてもらえず一人寂しく旅を始めた。

たまたまフレンド募集をしていた遥に声をかけた。

遥はワールドクラス20位以内の実力を持つユーザーらしくフレンド登録をしてもパーティーは組んでくれないと諦めていた。

だが意外にもパーティーメンバー登録がされ、足を引っ張る事になっても見捨てられることはなかった。

マクシミリアンにとっては地球に転移してから初めて心を開いて話せる友が遥だったのだ。


そんなマクシミリアンの気持ちをミランダが推し量れないわけがない。

ずっと前からミランダはマクシミリアンを愛していたからだ。


ぴょんぴょん飛び跳ねる可愛い子犬を愛するように。












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