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大人である訳

メイドのミランダはマクシミリアン一行のメイド達の中で、最も優秀でソツがなく人当たりのいいエルフのメイドだ。

美しい金髪に少々垂れたブルーの瞳を持つ目。理想的なプロポーションに透明感のある肌。

好奇心旺盛で勉強家、どんな事があっても優しい微笑みを絶やさない。


マクシミリアンはミランダに限らず全てのメイドに申し訳ない気持ちを感じでいた。


男女とも皆、美しく優しく控えめで思慮深いエルフやハーフエルフ。だからが故に住んでいた国を追われセントリーブス王国に逃げるようにやって来て王の庇護下に入った。


安住の地に落ち着いたと思えばそれでも戦争からは逃れられない。

彼らが逃げ出してきた聖公国から攻められた時、逃げてきた自分達が居るからなのではと責任を感じ戦場の前線に行こうとした。

セントリーブス国王始め全ての貴族がそれを押し留めた。エルフやハーフエルフは力もなく魔力もあまり持っていない。合理的な判断である。

そして王の庇護下に入るというのは何が何でも国民を国が守る約束をしたという事である。

セントリーブス王国はその約束を違えることは一度もなかった。


セントリーブス王国は志願兵しか存在しない。だが士気は高くとも知恵が回ろうとも他国に比べ個々人の持つ体力が圧倒的に足りなかった。戦争はいつもぎりぎりの防戦一方であった。


それでも王の庇護下に入った人々は国を出ることはしなかった。

安住の地は大陸の中でセントリーブス王国しかないと考えていたからだ。


そんな安住の地が脅かされ何とかそれを排除する為とはいえ、片道切符の異世界転移に突き合わせてしまった上にこれから言うことに少し後ろめたい感情がよぎるマクシミリアン。


ミランダの優しい微笑み。


「すまんな今日来てもらった事なんだが」


「レナから申し送られております伯爵様」


「ミランダ、昼の3時間を我にくれ。無論それなりの手当ははずもう」


ミランダがさらに優しく微笑む。


『あの顔は怒っているな間違いなく、さんざん我々には時間が無いと我自身が普段いっておるしなー』


マクシミリアンがミランダにお坊ちゃんと呼ばれていた遠い昔、友達に囃し立てられて年上のメイドのスカートめくりや胸を触ったりお尻を触ったりしたことがあった。

その時は子供のすることだからとミランダや他のメイドも笑って許してくれた。

ある日たまたまメイド達の会話を聞いてしまったマクシミリアン。


『ミランダっておばさんだったんだね』


みんなの前で微笑みながらお尻を十回叩かれた。


他のメイドや従者、たまたま通りかかった公爵夫人も誰もミランダを止めない。


後で父や母に訴えたがお前が悪いと一蹴された。


納得できないマクシミリアン。


『なんで本当のことを言ってはいけないの』


と、ミランダに聞いた。


微笑みに満ちた笑顔で手を引かれ倉庫に連れて行かれた。


トイレと食事が運ばれる時以外、誰も来ない日の光も差さない真っ暗な倉庫に三日三晩閉じ込められた。


泣いても助けは来ない。その内瞑想状態になったマクシミリアン。


3日目に、人には言っていいことと悪いことがあるという天啓を遂に受けた気がした。


更に他人を傷つける事はたとえ事実であっても口にしてはいけないと気づく。


ミランダにそれを告げ謝ると微笑みを浮かべながら優しく抱きしめられ部屋から出ることが出来た。


マクシミリアンが明るく思い遣りに溢れ空気を読めるようになったのはミランダの教育の賜物である。


『あの微笑みは心底呆れている微笑みであるな。あとひと押しで我は折檻されるであろう、言葉に気をつけねば・・・』


ビクビクしながらもマクシミリアンは引こうとは思わなかった。

遥との会話でヒントが見つかったのだ。

その答えを得るには遥に匹敵する力を付けマジェスティックワールドの旅をする必要がある。


「ミランダよ、我がこの世界にいる理由は魔法陣改良の為だ。

そのためにコンピューターによる魔法陣解析が行われている。

そしてその最新の方法として我はネットゲームを取り入れた。

遊びではないのだ。

ゲームの中で改良した魔法陣がどの程度の力を示すのかシミュレーションするのだ。

魔法陣を改良したからといって持参した魔石を実際に使って実験する訳にもいくまい。

魔法陣のコンピューター上での改良。

今の我はそこに至るための力がない。

そのためにミランダ、貴様に助力を乞うておる。

我に力を貸す事ができると思うといい。

魔法陣改良の末の大規模転移魔法完成に関わる栄誉に浴する事ができるだろう!」


はっとするミランダ。


そうかそう言うことだったのか、寝る間も惜しんでネットゲームをしていたこととはこういう訳だったのかと理解してしまった。


人間、自己保身の言い訳をする時ほど口数が多くなるという典型的な実例を示したマクシミリアン。


ここにマクシミリアンの行状を良く知ったお陰で大人の階段を登ってしまったメイドのレナがいれば『それがゲームである必要があるのでしょうか伯爵様』と突っ込まれていただろう。


ミランダは口の固いメイドである。マクシミリアンの方便をレナや他の者に言うことはないだろうと踏んだマクシミリアン。


大人の汚いところである。


しかも30歳台半ばのナイスミドル、三児の父である。


それでも自身がこのザマになったのもコンピューターゲームの存在しない世界から来たから仕方ないと自分で自分に言い訳していたのであった。


大人には色々理由が必要なのである。












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