愛
マクシミリアンの熱意で買収したゲームソフト会社のゲームがマジェスティックワールドと名前を変えてネットに移植された。
「ゴメンナサイ、ハル君見捨てないでくれー!」
深夜の社長室で画面に向かって叫ぶマクシミリアン。
「だから言ったじゃないですか、いきなりワールドクラス20位と組んでも足手まといになるって」
隣でポテチを頬張りながら別の画面でゲームをするキャロル。
「まさか我もコンソールゲームの能力値を誰も移植してくれなんだとは思わなかった」
「当たり前です。管理者権限でそんな卑怯な事考えてるのは伯爵様だけだと思いますよー」
「くそ、我も開発チームに加われたならこんな惨めな思いをすることは無かったであろうに」
全くキャロルの話を聞いていないマクシミリアン。
「忙しすぎるのがいかんのではないか。
せっかくゲームを移植出来たというのに当の本人はゲームをする暇もなくみんなに置いてけぼりと言うのはオカシイとは思わんか」
「だからといってチートは許されませんよ」
遥から「またね」というメッセージが入る。
「次回こそ頑張ろう」
マクシミリアンが返答してその日は終わった。
遥とマックことマクシミリアンがパーティーを組んで1週間がすぎる頃、遥からプライベートメッセージが送られてくるようになった。
日本語通訳といえばレナだったが今は深夜、業務時間外である。
とうとう来たかとマクシミリアンはうなだれた。
レナを社長室に呼び出す。
ソファーに座らせるとその前に正座をするマクシミリアン。
見事な土下座を披露。
呆れるだけのレナも肝の太いメイドである。
翻訳者ということも吟味し夜勤ベースの給料の5割り増し分をマクシミリアンのポケットマネーから支払うことを条件に引き受ける事にした。もちろん増えた分に関しては無税である。
何度かやり取りしているうちに魔法陣の話題になった。
なぜ魔法陣を勝手に書き換えられないのかと。
《仕様だからナンジャネ。》
「このナンジャネというのが違和感があるのだが」
「日本では“じゃないのかな”と言うのをこういう風に言うのが今の若者です」
「スラングみたいなものか」
「隠語とはちょっと違います、若者言葉というものです」
「では我の年齢に相応しいと言うことなのだな」
「ゲーム上ではそういう事になります伯爵様」
「我自身これでも若く見られるのだがな、服を買いに行くと女性スタッフによく『26、7歳と思っておりました!』と言われるのだが」
「リップサービスで御座います、私も公爵様などには気を使いそう言っておりました伯爵様」
「・・・」
「なにか」
「いや何でもない、今後とも若者らしい言葉で返答せよレナ」
「畏まりました」
マクシミリアンは30歳後半に差し掛かっているがゲームでは18歳に設定している。さすがに実年齢ではフレンド登録をしてくれないのではないのかと年齢を偽る事にした。
遥の姉の由美子にガッカリされたのはもう少し後の話である。
由美子は現実を現実と受け止められる強い女性である。
遥《じゃあ、仕様っていうのを変えてもらえれば良いのにね》
マ《・・・》
遥《でもこのままじゃいつまでたってもパーフェクトエンドにたどり着けないと思う》
マ《ゴメンね、足手まといになっちゃって》
遥《大丈夫、お姉ちゃんからまだ4ヶ月あるから頑張れっていわれた》
マ《お姉ちゃん・・・》
遥《お姉ちゃんに高校受験が終わるまで代わりにこれやっとくようにって言われて僕が今やってんの》
何故気付かなかったとマクシミリアンはポンと膝を打った。
自分が出来なければ他の者にやらせればいいじゃないか!
マクシミリアンは身内の顔を思い浮かべる。
夜勤に変更させたレナは自分とこうやって遥と旅をする為に必要な通訳である。
しかもゲームに全く興味を示さない。
こうしている時以外は残務整理をさせ、やることがなければ好きなようにさせていた。
遥と旅をする時間は遥の起きている昼間の2時間、それ以外は今マクシミリアンもゲームを禁止されている。
遥と関係ないならば誰に代わりにやってもらっても構わない、レベル上げの方が重要だ。
「レナ、メイドでこういうものに興味を持っている者を知っているか」
「ミランダがファイナルツアーなるゲームをしております」
「わかった、朝の引継でミランダにここに来るように伝えよ」
「畏まりました」
それにしても気になる遥の要望・・・。
ネットゲームによる大規模転移魔法陣開発が始まる切っ掛けであり、遥とマクシミリアンの大冒険が始まった記念すべき会話だった。
と、同時にネットゲーム中毒になったエルフのメイドのミランダとマクシミリアンの愛の話が始まる。




