故郷
「すまぬな、許せレナ」
目頭を抑えつつ顔を天井に向ける何様状態のマクシミリアン。伯爵様なのでこれでも精一杯の謝罪であった。
投げ捨てられたゲーム機とそれに刺さっているROMの事が気になる伯爵。
ゲーム機は子供が使う事もあり頑丈だったがROMは丁寧に扱う必要があった。
『息を吹き返してくれるとよいのだがな。あれはマイナーなゲーム故手に入れるのもそうそうかなわんかもしれぬしな。』
社長室は銀翼社建物の一階なのでもしかしたら無事かもしれんなと考えつつレナの顔色を伺う。
レナはグレッグの胸に顔をうずめて時折伯爵を睨む。
気まずい空気が支配する社長室。
マクシミリアンはアメリカ人っぽく肩をすくめ立ち上がる。
この前レナが言っていた土下座をしている自分の姿が脳裏に思い浮かぶ。
あれだけは出来ない。伯爵たるものたとえレナと二人きりになってもやってはいけない。
レナがまるでそれを期待するような潤んだ目で伯爵を伺う。
キャロルの肩にわざとらしく腕を掛けて伯爵は裏返った声で話し掛ける。
必死だ。
「あー、ところでキャロル嬢ちょっと思い付いた事が有るので話を聞いてくれるか」
「残業になりますが」
キャロルは冷たく言い放った。
「ああ、もうそんな時間であったな。話は明日の朝一番でよいか」
「畏まりました」
希望は砕かれた。
困ったマクシミリアンは人類共通で最後の切り札に打って出た。
「グレッグ、レナ、我は腹がすいた。
貴様等もそうであう。
よし!食堂も混んでおるだろうから一緒にレストランに行こうではないか。
席が用意出来るか我が確かめよう。
我の行きつけの店でなこの所評判が上がって繁盛しているようで、こういう手間が掛かるようになったのも困りものだ。
気にするな今日のわびに勘定は我が持とう。
腹が減っては大志も抱けんだろう。
キャロル嬢も良ければ・・・デートの約束とな、なんとキャロル嬢にも春が来たのだな目出度い事だ」
部下の機嫌を取りつつ思わずキャロルを抱きしめるマクシミリアン。
デートか・・・脳裏に遺してきた娘の顔が浮かぶ。
時折ゲームに熱中してまわりに迷惑を掛けるマクシミリアンであったが、祖国を救う使命感は消える事はなかった。
尊敬する国王、愛する家族、友人、守るべきか弱くも優しい多くの国民を一時たりとも忘れる事は無かった。
マクシミリアンの熱中しているゲームは故郷を思い起こさせるものであったのだ。
ゲームに熱が入れば入るほど力と言うものに魅入られつつもこれが現実であればなんと無慈悲な所業なのかと考え込んでしまう。
送り出そうとしているこちらの軍隊の力を娘が見たらと不安になるマクシミリアン。
何かを感じたキャロルがマクシミリアンを抱きしめ返す。
「気をつけて楽しんでくるが良い」
キャロルから頬に口付けされるマクシミリアン。
「心配してくれてありがと、伯爵様」
護衛といいかけたが流石に無粋と思い止まる。
キャロルを送り出すとグレッグが騎士の一人に護衛の指示を出す。無粋と言われようがマクシミリアンと同じ様にグレッグにとってもキャロルは出会った頃に助けてくれた小さな少女のままの守るべき存在であった。
グレッグが伯爵の前で跪く。
「余計なこととは思いますが、何卒ご容赦くださいまし」
「うむ、気にするでない」




