棚上げ
人間やらなければならない事が有れば有る程余計な事をし始めるものである。
ここは銀翼社、マクシミリアン一行と銀翼の鷹メンバーが立ち上げた会社の社長室。
「呆れた・・・」
キャロルがマクシミリアンを見つめ溜め息をつく。
「そうであろう、呆れるにも程があるとは思わんかキャロル嬢。いくら何でもここまできてセーブポイントを設けておらんとは開発スタッフは何を考えておるのか。テストスタッフを変えた方が良いのではないのか」
コントローラーを握り締めテレビ画面を睨む伯爵。
「呆れたのはアナタニデスヨ、伯爵様。今何時だと思っているんですか」
綺麗な夕陽が差し込み絵画に描かれたようなマクシミリアンの顔を照らし出す。
「うむ、そろそろ始業時間もとっくに過ぎた頃か、昨日から帰らず頑張ってるのだがなかなかクリアできん。つい徹夜してしまったようである。いやいや夢中になると時間が過ぎるのも早いものであるな」
「そうですね」
マクシミリアンは夕陽を眺める。
「綺麗な朝日であるな、マリアンヌにも見せてあげたいものだ」
「恐れ多くも御忠告させて頂きます伯爵様。朝の太陽はあっち」
キャロルが日の射す反対の窓を指で指し示す。
ナニイッテンノカネこの娘っ子はと思いつつ腕時計を眺める。
「レナ!レナ!レナをこれへ」
マクシミリアンの大声が銀翼社に響き渡る。メイドのレナが落ち着いた足取りで社長室に入って来る。
「なにようで御座いましょう伯爵様」
「なにようも何も何故我に注意を促さぬ。昨日の夕方から今日のこの時まで我はゲームをしていたようだが、我もやらなければならない事が山のようにある。
我に会いに来た者も居たはずである。そう言うときはゲームを中断させるのもお前の役割であろう」
「しました」
「したのか」
「はい、何度もお声を掛けさせて頂きました。ご納得頂けるよう今からグレッグ様をこちらにお連れしますが宜しいですか」
「うむ、構わん」
しばらくしてグレッグが疲れた顔で社長室に来た。
「本日、パーソナルコンピューターのOS開発会社の社長、運送会社の専務、取引先銀行員、投資会社のディーラーが伯爵様と打ち合わせする予定でしたので来訪の度にレナをこちらに使いに出したのですが、建て込んでいるとのことで代わりに私めが対応させて頂きました」
「うむ構わぬ、貴様は副社長ゆえ当然のことをしたまで、気にするな」
「もったいのう御座います、が・・・」
「・・・が」
「流石に昼食時もお姿を目にすることなかったゆえ、私めも心配になりましてレナを伴ってコチラに伺ったのですが・・・旅の途中に声を掛けるでない!とお叱りをうけて・・・」
「旅・・・我はここに居るではないか何を申すグレッグよ」
レナはつかつかとマクシミリアンに近づくとむんずとコントローラーを奪い取りゲーム機ごと窓から投げ捨てた。
「何をする!レナ、無礼であろう!」
レナの目は涙に塗れていた。
「みんな仕事してるんですよ。これまで何度も注意してきましたよね伯爵様!ゲームは1日1時間のお約束をお忘れとは今更仰らないでしょうね!」




