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蔑み

王城騎士団訓練所の広場に大型輸送ヘリが2機、護衛用の戦闘ヘリが8機たたずんでいる。


戦場視察を希望する貴族、近衛騎士、軍幹部を全て収容したのを確認して出発。


「とんでもない者共を寄越したものだ、マクシミリアンは向こうでは余を超えたのかも知れぬな」


「兄上・・・」


寝不足のせいで真っ赤になった目で空に浮かぶあがるヘリを見送りながら妹のマリアンヌの肩をそっと抱えるセントリーブス国王。


国王が視察に行くことは貴族の反対で叶わなかった。その代わりリアルタイムで様子を中継する事となった。王の手にはタブレットが握り締められている。



昨日、魔王国との戦闘報告後、広間に運び込まれた巨大なモニターに映し出された映像に集まっていた重鎮はその技術に驚くと共に映し出された世界に目を見開いた。


天を突き破るかのようなビルが果てしなく広がる世界。

巨大な飛行機や船舶、自動車がせわしなく走り、人混みでごった返す街を色とりどりの服で着飾る人々が行き交う。

巨大なデパートやスーパーマーケット、煌びやかなホテル、熱気あふれるサッカー場や野球場、見たこともないような食べ物を提供するレストラン、花の咲き乱れる公園、聞いたこともない音楽が演奏されるコンサートホール。


一通り案内を終えた女性レポーターから巨大なビルに映像が切り替わりその前に立つ男性レポーターにバトンタッチされマクシミリアン伯爵が指揮する巨大コングロマリットを構成する各企業が設立順に紹介される。


情報通信、軍事、医療、土木、建築、保険、福祉、食品、物流、エネルギーを始めとする有りとあらゆる企業に研究所、果ては宇宙事業の様子をアメリカンジョークを絡めて陽気に語られていく。


遥の感じた限り皆んなにアメリカンジョークはあまり通じてないようだった。


『この映像を見ている皆さん、私の後ろに建っている120階建て高さ800メートルのビルが今まで話してきた企業を統括するコーデル社の本社社屋となっております。

これからコーデル社代表取締役社長マクシミリアン・コーデル氏、皆様にとってはマクシミリアン伯爵のオフィスへご案内となります。このビルの最上階ですので冒険者になったつもりで行ってみましょう、さあ行きますよ!』


重武装した警備員、受け付けの美女に陽気に挨拶。迎えにきた秘書と共に来客用の外が見えるエレベーターに乗り込む。カメラは次第に小さくなっていく街や人混みを写し出す。


接客用の待合室が来客用エレベーターの終点、更に受付を通し社長室へ向かうエレベーターに乗り換える。

社長室のある最上階で受付嬢にご挨拶、受付嬢が連絡を入れると別の秘書が現れ社長室へと案内される。

ちなみにここまで女性は受付のみ。本当はかなり美形の女性秘書が何人も居るのだが妻のマリアンヌや三人の娘が目にする事もあるからとマクシミリアン社長の助言で出演は遠慮してもらっていた。


というのは建て前で、絵図等を華やかにしようとディレクターが数多くの美人社員を出演者リストに揚げていたのだが、日本に来た時銀座のクラブでママさんに会社自慢しがてら台本を見たマクシミリアンが急に震えながら【マリアンヌが】とつぶやきながら本社出張の際見たことのある何人もの超絶美人秘書の名前に横線を入れていたのを知っている遥であった。


社長室のドアが重々しく開かれる。ガラス張りの広い部屋の中で広大に広がる街をバックに大きめだがシンプルなデザインの机の向こうにたたずむマクシミリアンを写し出す。


マクシミリアンはスッと立ち上がりカメラの前まで近づくと国王の前でするように伯爵に相応しく仰々しくも儀に倣い跪いた。


『国王陛下そして公職に携わる皆々様、救国の準備が整った事をここにご報告させて頂くこととなりました』


マクシミリアンの送り出す軍隊が資料映像の形で紹介されていく。


兵器から兵站、物資調達、医療、土木建築、農業、食品加工、医薬品、製鉄、石油、電機、資源の現地調達をも可能とするスタートアップの為の資源及び数万人の軍事関係者、科学者、各方面の技術者、医師と医療関係者、工事関係者、教育者等々も含まれるものだった。


金額に換算すると日本円で12兆円が注ぎ込まれていた。コーデル社のほとんど全ての資金が注ぎ込まれていたと言っても過言ではない。


「まるで一国の王、いや帝王ではないか」


ボソッと国王陛下が遥かに向かってつぶやく。


そういう風に見えるのかと思ったが、この世界に来たばかりの遥にとっては陽気な社長であり、出会う前はマジェスティックワールドというネットゲームの創設者で、かつゲーム内においては多くの魔法陣開発を競い合ってきたライバルだったので国王のもの言いにちょっと違和感があった。


確かに銀座ではホステスさん達に伯爵様、六本木だと夜の帝王、新宿だと宵闇のドラキュラさま♡、秋葉原だと神、錦糸町だと兄弟とかオジキと言われていたのを知っている遥であった。


ニューヨークとかだとなんて言われているのか気になって本社技術開発部主席担当者でありマクシミリアンに並ぶ大株主のキャロルに聞いたことがあったが、日本と違ってアメリカは社員の夜のお付き合いは無いので知らないと蔑んだ目で言われた。


自分の子供だったらキツく叱っていただろう。

実際に遥とキャロルは親子のような間柄であった。

《後で社長に問いたださないといけないわね、子どもの教育が成ってない》


キャロルにとっては遥はいつまでたっても可愛いハル君のままだったのだ。


『だって仕方ないじゃん、日本支社に来ると何でか僕とか賢治君とか連れ回すんだよ。君らにはいつか必要になるものなんだから身に付けなきゃいけないとか言うんだよ!。


おかげで僕ら開発メンバーは夜の執事とか言われるし、社長のボディーガードなんて漆黒騎士団とか言われてるよ。


え、何でついて行くかって。しょうがないじゃん大株主の本社社長だよ、拒否出来ないよ。

楽しみにしてるんじゃないかってイワレテモネー、まあ、賢治君とかは反論出来ないっぽいかなー。


そんなに日本に行ってるように見えないって言うけどさ、結構きてるんだよ自家用ジェット旅客機で!しかも僕らの終業間際にさ。時差をうまく使ってるっていうか飛行機の中で寝てるよね。良いよね。』


コーデル社は関連会社含めて一切の残業は認めていない。就業時間内で仕事をこなせるようにスケジュールを組むことも管理者の能力として査定されるからである。


『え、遊びに時間が取られて残業出来ないからって自宅で仕事してるんじゃないかって、進捗管理記録データに齟齬が見つかったら上司の河田部長が管理不行き届きで降格か解雇されるよ。


それにあれだけのゲームになると会社の専用端末がないとね。

こっそり仕様書の見直しとかで書類を持ち帰ったところで自宅だと物理的なセキュリティーのこともあるし。


だって僕の家は木造築30年だしさー。父さんも母さんも姉さんも居るから情報も何のキッカケで流出するか分かんないし。


その年で親と一緒に住んでるのかって・・・母さんと姉さんの料理旨いし洗濯とかしてくれるし、ちゃんと家に月給の3割15万円にボーナス半分位入れてるよ。


マザコン、シスコン・・・あのねえ僕は自分でいうのも何だけど結構モテモテなんだよ日本じゃ。女性の知り合いは両手じゃ収まらないよ。

姉さんが煩いから付き合ったこと無いけど・・・。


・・・子供部屋オジサンって、くだらないこと知ってるよねキャロルさんってさ。

でもさ独身の姉さんも家にいるし僕はオジサンじゃないからね、残念でしたーwww。


って言うかキャロルさんこそ会社のビルに住んでる究極の職住一致じゃないか、よく言うよまったく。


え、仕事してるのかって!してるよ無茶苦茶してるよ頭の中は24時間営業中だよ!。ホステスさんとの会話だってNPCの対話データ作りに役立ててるくらいさ。


それにさ、うるさい古参から始まってご新規さんの訳わからないユーザーの要望やら、背景やオブジェクトに現実感が感じられるような工夫をもっとしろとか魔法陣の開発環境をもっとユーザーライクにしろとか、ありとあらゆる要求が伯爵様とかグレッグさんとかアシュリーさんとかメイドのレナさんとかからしょっちゅう来るんだよ、寝てる間にメールで!。


レナさんなんて週一回アメリカから飛行機に乗って日本にくるんだよ。

メールのやり取りじゃ伝わらない部分を社長から幹部まで全員の要望書持ってきてそれを下敷きに直に打ち合わせするんだ。


なんか仲間に会うついでにって言ってたけど。


飛行機はファーストクラスなんだってさ、凄いよね。


羽田空港からハイヤーに乗って帝国ホテルに寄ってから秋葉原のこのビルに来るんだよ仲間に会いに来る為だけにだよ。メイド姿で・・・。


レナさん来る日なんかみんな嬉しいやら緊張するやらでなにがなんだかワカンナクナッチャッテルヨ。

お揃いのハッピきてお迎えするんだ仕事中に。

たしかにレナさんは上司だから問題ないとは思うんだけどさ。

ウチってビルに入居してるテナントの一つってだけだから管理会社からイヤミイワレテルンダヨネー。

いつもぼくがみんなのために謝ってるってオカシイヨネ。


皆んなとか仲間って誰かって・・・みんなは社員に決まってるじゃん《みんなー元気にしてるー!レナみんなに会えてうれしいよー》って言ってくれてるし』


ちなみにメイドのレナはこの時47歳。ハーフエルフなので人間の年齢換算で22歳位に見えているだけである。

ちなみにこの事実は本社主要幹部しか知られていない重要機密事項である。


22歳でそれってどうよ。キャロルがアタマを振る。


『仲間は女の人だけで12、3人くらいいるんだってさ池袋でよく集まって遊んでるって言ってた。

どんな仲間かまでは知らないな~。うちに入社してくんないかなー。


それにつけても普通の会社の幹部はメイドさんのカッコしないと思うんだ。気が散らないのかなー、みんな美人だしさー。


何で幹部なのにメイドルックで本部社長室にそれも5人もいるのかなー。羨ましいよね。


技術部長クラスくらいじゃメイドさん付けるって無理だよね~。


でもさ会社のみんなは、こんなオタク野郎しかいない会社レナさんが来てくれるくらいしか楽しみが無いじゃんとか言うんだよね。

この前の飲み会でメイドさん居なきゃ辞めてやるとか言われちゃうし。


ちょっと荒んでると思わないキャロルさ・・・いや、僕は仕事自体が楽しいから・・・皆んながそう言うだけだから』


その後マクシミリアンはキャロルに本社社屋の裏に呼び出され、キツくお叱りを受けているのをメイドのレミイヤに覗き見され妙な噂が広がった挙げ句、日本への出張の際は警護の他に生活指導係が追加されることになった。


ちなみにキャロルの目がこれ以上無いくらい細くなったのが脳裏から離れられなくなった遥は、コレでもコーデル社日本支社の技術開発統括本部部長22歳。

超エリートである。



そのキャロルが輸送ヘリの中で遥の右横に座っている。

この状況で公爵様は遥の左隣に座る姉をナンパしてるわけだが、キャロルに夜の社交は伯爵様の名誉に関わるから姉には内緒にしてくれと昨日頼んでおいて良かったと胸をなで下ろす遥であった。


間違いなくシスコンだろうとキャロルは睨んだ。メイドのレナがそこはかとなく遥の姉に似ているのを転移前の顔合わせで見たときハッキリ気づいたのだ。

ハッピを持ってるのは間違いなさそうだ。


それでも容姿は申し分なく責任感があり仕事も出来るが、シスコンで女性関係だとちょと見栄っ張りで小賢しい所のある遥を横目で見る。


キャロルは何かと言うと遥の母や姉に遥の将来を案じる風を装った報告を随時行っていた。

既にマクシミリアンや遥の行状は、隣りにいる姉に報告済だったのだ。


遥にとっては姉の存在は絶対であった。

逆らってはいけない、否!逆らうという発想さえ浮かばない存在に生まれたときから洗脳されていのだ。

そうキャロルに遥とその家族の情報がコーデル社入社半年前には採用情報として詳細に上がっていた。


姉に期待をかけるキャロル。


全ては遥にひとめぼれした娘を思う母心である。


















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