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このリアルの中で  作者: 悠々
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見知らぬ世界へ

「あなたはだぁれ?」

 そんなのんびりとした声が聞こえて気が付く。いや、気が付けているのだろうか。

 何も見えず、身体も動かせている気がしない。そもそも身体がなく意識だけのような状態なのだ。

 夢の中か?

「ふふ。違いますよ~。」

(思考を読まれた!?)

 声はおっとりとしているのに状況はそれを許さない。夢の中でもないというのだ。

「ごめんなさいね、急に尋ねちゃって。でも身体もない不思議な人がいるんですもの。」

(えぇ!?オレ身体もないの!?どういう状況だよ・・・オレどうしたんだっけ。)

 驚愕の事実を更に告げられる。しかし、ここまでの理不尽さだと人間は逆に冷静さを取り戻すらしい。

 自分がどういう状況か振り返ってみると、思い出せなかった。自分が何者であるか、名前すらも。

 なにやら色々と知っているということから思い出に関する記憶がないようなのだ。

(これはあれか。オレは死んだってことなんですかね?)

 誰かもわからぬ声の持ち主に思考で問いかけてみる。

「え?死んだって何ですか?死の概念は知ってはいるんですがまだわかっていませんでして。」

(何を言っているんだ?死の概念って。世間ずれしているというか、神様って感じでもなさそうだし。」

 そんなことを考えていると

「あっ!ごめんなさい!私もうここを離れないといけません。」

 その声は何かハッとしたように急にそんなことを言い出した。

(え!?そんなこと言われても!こんな状況に一人残されても困るし怖いんだけど!どこ行くんです!?)

「ごめんなさい。それは言えません。でもあなたもしばらくしたら目が覚めると思いますよ~。」

(そんなこと言われても。一体どういうことなんですか?)

「あなたの旅路に幸あらんことを!もしまた会えるようでしたら嬉しいですね。そうですね、また会いたい

ですね。では~!」

 驚きと戸惑いの中、一方的に別れを告げられた。こちらも待ってもらうようあれこれと思考をするが途中から纏まらず、眠りへ落ちていくような感覚に陥った。




(あれ・・・オレどうなったんだっけ・・・。なんか眩しい・・・。眩しい!?)

 瞼を閉じた上から注ぐ太陽の眩しさに気が付き目を覚ます。

 どうやら地面に仰向けに倒れていたようでゆっくりと上体を起こした。

(身体があるって素晴らしい!)

 などと謎の体験をした身としては一人感動していた。どうやら身体は成人はしているであろう程の身長があった。身体を少しずつ動かしていき動作の確認を行う。問題が無いことを確認すると意識を外側へ向けた。


「一体どうなっているんだ!」

「知らねぇよ!」

「なによここ!誰か教えてよ!」

「夢だろ・・・夢・・・ははは。」

「あれ・・・オレさっきまで・・・。」

 周囲にはこの状況がわからず激怒している者や諦観している者、さっきまでの自分と同じように横たわっている者、端に座ってじっと観察している者達が見てとれた。どうやらドームのような場所に居るようであるが出入り口が見られない。上は開いているのだが壁を昇って出るという訳にもいかないようだった。

(さて、どうなってるのかね。)

 青年はこのわからぬ状況の中、冷静に思考の海に沈む。

(まず自分は誰なのか・・・やはり思い出せない。

 ここはどこなのか・・・わからない。周囲の人達で知っていそうな者もいない。ドームの中とだけ。

 何故ここにいるのか・・・周囲の人達から察するに自分達の意思で来た訳でもない。拉致の可能性有り。

 ここにいる人の共通点・・・性別は関係なし。年齢もばらばら。外国人もいるようで人種も関係なし。何故やら皆日本語を話している?どうやらここに来る前の記憶がないようだ?)

 観察、思考を重ねているとどうやら眠っていた最後の少年たちが目を覚ましたようだ。


 その時を待っていたかのように急に空に人が現れる。

「やあ!人間の諸君!皆目が覚めたかね!」

 明るい声でその声の持ち主は青年たちその場にいる者たちに語り掛ける。しかし、青年たちは静寂に包まれた。その現れた者は人型ではあるが決して人間ではなかったのだ。 背中には翼が生え、頭には角があり、顔は山羊という人間が想像するであろう悪魔の姿がそこにはあったのだ。

「ようこそ、ナオスへ。」

 悪魔は笑う。青年たちを歓迎するように。御馳走が目の前に現れたかのように。


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