2.ビーチ到着
海水浴場は多くの人たちで賑わっていた。
ギラギラと照りつく太陽の元、長く広がる海岸沿いには所狭しとパラソルが立っており、右も左も海の中も人で溢れていた。近場だからとこの海岸を選んだが、こんなに混むのなら遠くの穴場を探すべきだったかもしれない。
まあそんなことを今更言っても仕方ないので、気を取り直してパラソルを設置することにしよう。
「先輩、手伝いますよ」
前髪をかき上げながらやってきた佐倉は上下がセパレートしたオレンジ色の水着を着ていた。彼女の引き締まった身体も相まって、その姿はビーチバレーの選手のように見える。
「あれ、黒木さんは一緒じゃないのか?」
俺がその言葉を発した途端、急に佐倉の表情が険しくなった。
「あの女なら着替えるのが遅いので更衣室に置いてきました」
「えっ、駄目だろ。あの人方向音痴なんだぞ」
するとさらに険しい顔で俺を見る佐倉。
「先輩、本当にあの女のことばっかりですね。どうせ私のことが邪魔だと思ってるんでしょ」
うん。だってそもそもお前は呼んでないし、と言ったらパラソルで刺されかねないので言わないでおく。
「星くーん、お待たせしましたぁ」
向こうから黒木さんの声が聞こえてきたことで俺はホッとした。
「心配しましたよ、黒木さ……」
言いかけた俺の目は点に、口は開いたまま塞がらなくなった。砂浜を走ってくる黒木さんは眩しい笑顔を浮かべている。それはいい。だが顔から下が圧倒的におかしかった。
着用している黒ビキニの布面積が狭すぎる。薄目を開けてみれば全裸に見えそうなほどだ。どう考えてもあの布切れで黒木さんの爆乳を隠しきるのは不可能だ。俺はそのはち切れんばかりに揺れる胸を見ながら、ふと黒木さんが俺との海水浴旅行を断っていた言葉を思い出していた。
『私はシスター、神職者です。そのような場所に行って肌を露出させる事は相応しくありません』
嘘つけ、ノリノリで露出させてんじゃねえか!
「先輩、アレやばくないですか? 周りの人たちから変な目で見られてますよ」
佐倉が俺の肩を叩きながら言った。いや確実にやばい。すれ違う人は男も女も黒木さんの身体をガン見している。俺は急いで自分のリュックを背負った。
「黒木さん! ちょっとお話がっ!」
俺はパラソルまでたどり着いた黒木さんの手を取り、とりあえず人気のない場所を目指して走った。
続きは明日の朝6時の予定です。