異世界ラーメン号
俺はラーメン好きが高じて、脱サラしてラーメンの屋台をやっている。
お、客が来たぞ!
「らっしゃい!」
景気よく挨拶する。
「味噌バターコーン1つ」
「俺は、チャーシュー麺1つ」
「へい! 毎度あり!
一杯、大銅貨1枚だよっ」
大銅貨1枚なんて、支払い通貨が可笑しいかい?
そんな事はないさ。
何せ、ここは異世界なんだ。日本円も、米ドルも、ユーロだって、通じないんだ。
大銅貨1枚と、銅貨10枚…確かに受け取って、ラーメンを作る。
こいつは帝国産の小麦でね、香りが良くって、コシのある麺に仕上がるんだ。
特別な錬成陣を刻んだボールに、小麦を入れる。
『ラーメン錬成』
粉にしたり、他の材料なしで、あっという間に生麺の完成だ!
俺の自慢のスキルさ。
ラーメンを茹でる。
温めておいたどんぶりに、特製たれ。
スペシャルスープを入れる。
あ、スープが気になるか?
俺の秘伝レシピだ…
ま、ベースは豚骨だが、海鮮系もミックスしてるな~。
野菜や香草も入った、こってりしてるのに、全スープがあっさり飲める…
そんなんがベースだな。
まぁ、複数の麺、複数のスープをそれぞれの味に合わせてるからな~。
どの一杯も特製なんだぜ。
是非とも、全メニューを堪能してくれよ!?
しっかり湯切りして、スープに入れて、軽くスープと馴染ませる。
チャーシュー麺にも、茹でもやしをたっぷり中央に盛る。チャーシューは8枚を花弁みたいに並べて、刻みネギを中心に載せ、完成だ!
味噌バターコーンは、茹でもやしと、茹でキャベツをたっぷり。
ガバッとコーンを豪快に入れて、刻みネギにバターを載せて完成だ!
「へい、おまちっ!」
スプーンとフォークが一体化した専用カトラリーを添えて渡す。
某○ガキヤのに似てるって!?
仕方ないだろ!?
異世界人に箸とレンゲで食べろったって、無理だろ…
俺っちも、三河の出身でな~。
あ゛?
三河を知らないって?
お前ら、日本人だよな…。
三河ってのはな、愛知県の東側だよ!
徳川家康の出身な岡崎とか、世界の○ヨタ自動車がある豊田とか、日本一の輸出港がある豊橋とか、有名だろ~。
(まぁ、俺はもうちょっと小さな市出身だがな…)
愛知県は名古屋だけじゃないんだぞ!?
家康が連れてって江戸文化が花開いたんだ。
三河はなぁ、日本文化のベースなんだ!
だいたいは、日本の真ん中だしな!
(まぁ、三河人が心の奥深くでは、そう思ってたり、思ってなかったり…)
カトラリーは、リスペクトって奴だな。
日本や地球じゃ勝手出来ないが、異世界だからな…
大丈夫だろう。
ラーメン旨いだろ?
俺は、一般人だけどな、自分のチートには感謝してるんだ。
この軽トラを改装した屋台。
魔力&魔石のハイブリッド車なんだぜ。
スキル『錬成』は麺と調味料の作成に特化してるんだぜ。
スゲーだろ?
本当はな、パスタや、そうめんや、ビーフンも出来るんだせぜ。
まあ、俺はラーメン一筋だがな…。
え、カレーも食いたいって?
カレーうどんなら、作れるけどよ…
…泣くなよ。
俺が勇者様を虐めてるみたいじゃねぇか!
っ、仕方ない。
俺の弟を紹介してやるよ!?
妹ならともかく、弟なんか紹介されても…って?
俺の弟はな、カレーの移動販売やってんだよ。
そんでな、同じ野外イベント会場で、異世界召喚された時に仕事してたんだ。
おいおい! スライディング土下座するなよ!!
ちゃんと紹介してやるよ!
後な、他にも日本の味は来てるぞ。
何せな、80台の屋台が異世界召喚されたんだよ。
俺達は10台づつでキャラバン組んでな、各地で露天やってんだよ。
車のスキルに、マップとチャット機能が有ってな、連絡つくんだよ。