いよいよ文化祭が始まる
結局文化祭での僕の役割は希望通りスタンプ係と裏方作業になった。
文化祭準備は順調に進み、僕自身は安定を取り戻して準備に取りかかれていたはず。
あまり話す機会がない人との作業では少し怯えられた感じもしたが、最終的には上手く出来ていた気がする。
もちろんモテないように色々と対策はしていたし、今のところ新たに誰かを完全に惚れさせてはいないと思う。
文化祭は金曜日と土曜日の2日間開催され、1日目は生徒だけの文化祭で2日目が一般公開日となる。
ステージ発表は1日目に行われクラス以外にも部活のステージ発表などがある。
もちろんサッカー部はそんなステージに出るわけがない。
弱小部だし何よりあの顧問の先生がやる気なさすぎる。
クラスの模擬店などの出し物は両日行われる予定で生徒は時間で仕事が交代される仕組みになっている。
しかし、岬先生が言うには去年は全然守っていなかったクラスもあったらしい。
っていうか岬先生だから僕らのクラスも自由な感じになりそうなんだけど。
僕としてはモテないように気をつけながら初めての文化祭を楽しみたいと思っている。
岬「いよいよ明日が文化祭でーす。みんな一生懸命準備したと思うので明日は精一杯楽しみましょー!それではさよならー。」
「さよならー」
鳴「あなた今日部活は?」
冷「休みらしいです。」
木曜日なのに文化祭前ということで週2の練習が休みになるサッカー部。
別に文句はないけど。
鳴「じゃあハルと一緒に帰るわよ。」
冷「あ、はい。」
星乃さんも今日部活無いのか。
ショウタ「冷、俺実行委員会議あるからまた明日ね!」
冷「ショウタバイバイ。」
ショウタはほんと忙しそうだ。
良かった、文化祭実行委員なんかにならなくて。
重労働で登校拒否になりそう。
ハル「冷君は文化祭誰と回るの?」
冷「おそらくショウタだと思います。」
ハル「へ〜そうなんだ…!あたしは鳴と回るんだ〜」
冷「そうですか。」
ったくハルったら…
仕方ないわね。
鳴「あなた、私たちと回りなさい。」
ハル「えっ鳴、別にいいって〜、冷君はショウタと回るって言ってるんだし〜」
鳴「良いのよ。それに4人で回れば良いじゃない。」
冷「いや、その…」
あれ?
今日は前みたいな積極的な宮本さんだな。
まさか積極モードに戻ったのか?
鳴「いいから4人で回るわよ。」
こうなった宮本さんは止められない。
どうせ断ったところでまた言ってくるだろうし、おそらくこれは星乃さんのためにやっているのだろう。
宮本さんは星乃さんが僕のことを好きである以上僕に近づこうとはしない。
これは確定で良いだろう。
となると明日と明後日の文化祭は星乃さんだけを警戒すればいい。
これ以上惚れさせないように。これ以上距離を縮めないように。僕が間違って惚れないように。
冷「分かりました。良いですよ。」
ハル「え?冷君良いの!?」
冷「はい。」
ハル「ありがとう!やったー!」
ショウタはきっと喜ぶだろうな。
如月駅からは星乃さんと電車で二人きり。
モテない男子からしたら羨ましすぎるシチュエーションではあるが僕にそれを利用する権利はない。
ハル「冷君、良かったの?あたし達と回ることになって。」
冷「別に良いですよ。今まで4人でいることが多かったですし断る理由は特にありませんから。」
ハル「そっか。ありがとう冷君!明日思いっきり楽しもうね!」
冷「はい。」
ハル「って冷君に言ってもあまり意味ないか。冷君がはしゃいでるところなんて想像出来ないし。」
冷「そうですね。大人しいのは自分でも分かってます。」
ハル「でも実はあたし冷君の笑ってる顔見たことあるよ!」
冷「そうなんですか。」
あれ?星乃さんの前で笑ったことあったっけ?
笑顔を見せると距離が近づくような感じがするからいつも気をつけているんだけど。
ハル「冷君が部活してるところたまに見るんだ〜。も…もちろんわざとじゃないよ。たまたま通りかかった時に見えるっていうかさ。それで冷君凄く楽しそうだった!サッカー好きなんだな〜って伝わってきた!」
冷「そうですか。確かに僕はサッカー好きです。」
知らないところで勝手にサッカー好きアピールされていたみたい。
まあ別にサッカーは楽しいし笑っている部分もあったんだろう。
ハル「そうだ!明日どこ回りたい?あたしは…」
と、まあ星乃さんのトークが始まり色々と付いて行くのに大変だった。
文化祭のパンフレットにじっくりメモしながら頻繁に明日と明後日のプラン作成。
果たしてそのプラン通りに行くのかどうか。
僕としてはとりあえずトラブルとか無いまま文化祭を終えたい。
それなりに楽しめれば良いし、警戒することを忘れなければ大丈夫だろう。
思い出作りまで行かないが、まあそれなりに…