マイエンジェルが見えて…
朝は自分で目覚ましをかけて起きる。妹や母親に起こされるということは基本的にない。
朝食や弁当はいつも母親が用意してくれる。
よく漫画やアニメで「兄が妹の朝食やお弁当を作る」みたいな設定があるけど僕にそんな余裕はないし普通に家に両親がいる。
ちなみに僕と母親は血が繋がってない。だが、僕を本当の息子のように接してくれて、何も問題なく暮らしている。
両親共に朝から仕事があり、父親は僕と同じ時間ぐらいに家を出る。二人とも帰ってくる時間は毎日ランダムで、中学の頃に女の子を家に呼んだ時は両親がもう帰ってくるんじゃないかといつも不安でいた。母親には何回か見つかってしまったことはあるが、なぜかいつも女の子を歓迎していた。ちなみに、母親は僕が家に連れてきた女の子を全員その時の彼女だと思っているらしく、母親の中では「連れてきた女の子の人数=僕が今まで付き合った人数」になっている。実際は片っ端から可愛い女の子を家に呼んでただけだ。
それでは、ここで僕の通学方法を説明しよう。
僕の家から最寄りの久木駅まで歩いて10分。
久木駅から高校の最寄駅如月まで1時間。
如月駅から高校までは歩いて15分。
合計1時間25分。
わざわざ遠くの学校に通ってるのでこれぐらいの通学時間は仕方ない。
だが、このまま普通に通学すれば途中で星乃さんや前の席のあいつに会ってしまう可能性がある。
特に星乃さんと一緒に通学するようなことがあると、また昨日みたいに相談に乗ってしまい二人の仲が縮まってしまう。
それと同中の安藤渚も要注意だ。同中ということは当然彼女も僕と同じ久木駅から電車に乗る。何も対策を立てずに行くと必ず会ってしまう。
これらを防ぐために昨日の夜対策を考えた。
通学に使う電車の路線には「普通列車」と「快速列車」がある。
「普通列車」は各駅停車で、「快速列車」は主要の駅しか止まらない電車である。
僕と安藤渚が使う「久木駅」、星乃さんが使う「時和駅」、あいつが乗り換えに使う「市平駅」そして高校の最寄駅「如月駅」は全て快速が止まる主要駅だ。
昨日三人で帰った時も乗っていたのは快速列車だ。
さっき説明した乗車時間1時間は快速列車に乗った場合で、普通列車に乗ると1時間20分かかってしまう。
主要駅から主要駅に行くのに「普通列車」に乗るメリットはどこにもない。
だから今回、僕はあえて「普通列車」を利用する。
家を出る時間が早くなってしまうがそんなことはどうでもいい。
重要なのは同じ高校の女子に会わないことだ。
これがMy通学スケジュール【女子遭遇対策用】
6:35 家を出る
6:45 久木駅到着
6:50 普通列車に乗る
8:10 如月駅到着
8:25 高校到着
まあ、仮に今日上手く行かなかったとしても、帰ってからまた対策を考えればいい。
では出発。
何事もなく普通列車に乗れた。
電車内はサラリーマンや違う学校の生徒で結構混んでいる。
朝早いのにご苦労様です皆さん。
運よく、同中と同じ高校の人はこの電車には乗っていないようだ。
だが流石に朝早いから眠い。
このままだと授業中に寝てしまう。
授業中に寝ると寝ぼけて何かやらかす恐れがあるから危険だ。
仕方ない。
ここでちょっとだけ寝るか。「30分後に起きよう」と寝る前に決めたら、ちゃんと30分後に起きれるというちょっとした特殊能力をなぜか僕は身につけている。だから今回もそれを使おう。ちなみに僕はこれを「体内アラーム」と呼んでいる。と言うわけで今から寝る。寝ていれば女の子に話しかけられるというシチュエーションも無いからな。駅に着く10分前に起きようと心に決めて眠りについた。
「え〜と、あなた。」
「…zzz」
「あの〜、あなた大丈夫?」
冷「…ん?」
「気持ちいいのはわかるけど、もうすぐ着くよ。」
冷「え…もう着くって…?」
まだ体内アラーム鳴ってないからこれはきっと夢だ。
「女子高生の肩で寝るのは初めて?」
冷「じょ…女子高生…?肩…?」
本当にこれは夢か?ちょっとリアルな気もするけど
とりあえず目を開けて…
あ、可愛い天使が見える。やっぱり夢か…
冷「夢に天使が…かわい…い…」
「天使?何訳のわからないこと言ってるの、あなた。」
車内アナウンス「まもなく、如月に停まります。」
如月…?
そっか、もう…起きないと…
でも体内アラームはまだ鳴ってないし…
「ほら、もう着くよ」
え?
は!?
あ!?!?
うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!
完全に寝ちまったあああああああああああああ!!!!!
「ほら、行くよ」
痛い痛い痛い!
なんか腕を引っ張られてる。
ってこの子誰だ!?
何で僕を引っ張ってる!?
あ、夢に出てきた天使じゃん
天使?
は?
夢じゃない?
女子高生?
肩で寝る?
ちょっと待ってこの子マジ誰…だ…?
何が起きてる?
あ…
待て…
この子って…
「ちょっとあなた大丈夫?」
冷「は…はい。」
「私の名前は宮本鳴。あなたの斜め後ろの席よ。」
そうだ…
昨日あいつが後ろの子可愛いって言ってた子だぁぁ。
天使みたいとか思った。うん。今も天使に見えるけど。
うん。やっぱり超可愛い。
おはようマイエンジェルなんちゃって。
ってか天使が見えたのは夢じゃなかった?
じゃあ女子高生とか肩とかあれはなんだ?
ちょっと待て全く状況が理解できない。
そもそも、僕のあの特殊能力的なあれはどうした?
まさかベッドの上だけ有効とか?
ってかこの子はなんで僕の隣に?
朝から頭がおかしくなりそう。
鳴「あなた本当に大丈夫?」
冷「いや、ちょっとまだ状況が理解出来なくて…マイエンジェルが見えて…可愛くて…」
鳴「は?まだ寝ぼけてんの?ってかあなた名前は?」
冷「三上冷…です…」
鳴「三上君よろしくね。」
冷「あ、はい…」
鳴「ところで私の肩に寄りかかって寝た感想は?」
え、
は?
はあああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?